驚愕の新型車両が続々登場! なぜ西武鉄道は生まれ変わったのか?

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野田隆

建築家・妹島和世氏が手掛けた大胆なデザインの新型特急導入が発表された

 

最近、西武鉄道が極めて意欲的だ。レストラン電車、夜行列車、ビールトレイン、新型通勤型車両、そして奇抜なスタイルの最新型特急電車の製造発表と矢継ぎ早に話題を振りまいてくれる。少し前までは、競合路線もないのでスピードも遅く、のんびり走っているというイメージ。急行といっても先の区間では各駅停車になってしまうので、まどろっこしくて乗っていられないというちょっと敬遠したくなるような電車だった。地味でそれほど魅力的とは言えない鉄道という風評もあった。それが、どうだろう。この変わりようだ。いったい何があったのだろうか?

 

首都圏の大手私鉄で華やかなのは、箱根へ向かうロマンスカーを走らせている小田急、国際的観光地日光への路線があり「スペーシア」など指定席特急を走らせてきた東武、沿線に高級住宅地を数多く抱える東急、郊外の住宅街や高尾山への足京王などが名を馳せてきた。

 

それに引き換え、西武も観光特急レッドアローを走らせてはいるけれど、目的地の秩父は、箱根や日光に比べると、人気の面では大きく水をあけられていた。西武の開発した西武園あたりのレジャー施設も近年人気が降下し、元気がなく、西武ライオンズ頼みのところがあった。沿線の住宅地も、他の私鉄沿線、たとえば東急や小田急に比べると、お洒落なイメージとは遠く、やはり人気がなかった。それに引きずられるように、車両も実用本位のところがあり、際立った魅力に欠けていた。

 

新生西武を象徴するモデル。30000系スマイルトレイン

 

そんな中、21世紀に入って会社経営に関する大スキャンダルが起き、経営陣が刷新された。長らく続いてきた同族会社とは決別、新たな経営陣が従来の西武のイメージを大きく変えるべく取り組みを開始した。それまでの西武のような、不動産やレジャー産業主体の会社で鉄道はおまけみたいな体制ではなく、本業の鉄道を重視し、車両も実に魅力的なものへと大変身を図った。その第1弾が「スマイルトレイン」と呼ばれる30000系電車である。

 

初代レッドアローのカラーリングを再現した、レッドアロークラシック

 

イメージが変わった西武鉄道は、持ち駒を最大限生かすべくアイデアで勝負を始めた。特急車両を利用したビール列車、夜行列車などのイベント列車、塗装を変更したレッドアロークラシックなどである。

 

4000系車両を改造したレストラン列車が間もなく走り出す

 

こうしたアイデアがうまく行ったところで、セミクロスシート車両4000系を改造したレストラン電車の登場である。飯能から西武秩父までの閑散区間はアメリカの投資会社から廃止まで提案された路線。それを何とか活性化すべく打ちだしたのが観光列車なのだ。時流に乗ったといえばそれまでだが、目的地の人気がイマイチなら、車両に魅力を持たせようとの考え。乗ることが目的の列車というのは、今やローカル路線活性化の定番でもある。車両のデザイナーを新国立競技場の設計で話題の隈研吾氏に任せる。その意気込みと熱意が伝わってくる。

 

さらに、新型通勤型車両40000系を2017年春に導入。クロスシートとロングシートの変換可能なシート、車椅子やベビーカーなどの場所を大きく確保したスペースなど趣向を凝らしたインテリアが早くも話題を呼んでいる。

 

そして、新型特急電車の導入も発表。他に例を見ないユニークな外観がすぐさま話題になっている。それにしても、あまりにも矢継ぎ早の新型車両リリースにめまいがするほどのインパクトを与えたことは間違いない。数年後に西武を利用すれば、今までのことを知っている世代にとっては衝撃であり、どこか別の鉄道路線に迷い込んでしまったような錯覚を起こすであろう。とても従来の西武のイメージではないのである。とにかく乗って楽しそうな電車ばかり。沿線に用がなくても乗りに行きそうだ。今、西武から目が離せない状態だ。

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野田隆

野田隆

1952年名古屋生まれ。長年、高校で語学を教える傍らヨーロッパと日本の鉄道紀行を執筆。2010年、早期退職後、旅行作家として活動中。著書に「定年からの鉄道ひとり旅」「出張ついでのローカル線」「テツはこう乗る」...

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