ヤモリやクモ、ヘビも!? 嫌な生き物を縁起が良いとする理由

ライフハック

三浦康子

 

■朝蜘蛛は神の使い、夜蜘蛛は地獄の使い

 

日本人は縁起を担ぐことが多いですね。茶柱が立てば吉兆だと喜び、鏡が割れれば不吉なことが起きるのではないかと心配したりします。では、朝、蜘蛛(クモ)がスーッとおりてきたら、どう思いますか? とにかく駆除しようと思う人がいる一方、歓迎する人もいるはず。なぜなら、「朝蜘蛛は縁起が良い」と言われているからです。

 

蜘蛛は糸を分泌して膜を張り、獲物をからめとってしまいます。毒蜘蛛も多く、そのグロテスクな外見から蜘蛛が嫌いな人も多いでしょう。古来、こうした特性から蜘蛛を妖怪や化け物ととらえる向きがありました。また一方で、蜘蛛は人力の及ばない神通力や洞察力を持っていて、前兆を知らせてくれるものだと考えられていました。

 

『古今和歌集』に衣通姫が詠んだこんな歌があります。

「わが背子が来べき宵なり ささがにの蜘蛛のふるまいかねてしるしも」

(今宵は愛しい夫が来てくれるはずだわ。蜘蛛のふるまいがそれを教えてくれている)

 

とりわけ、朝、上から下りてくる蜘蛛は神の使いであり、待ち人や福がやって来る良い知らせだと歓迎されるようになりました。幼いころから、「蜘蛛を殺したらバチが当たるよ」と言われて育った人も多いでしょう。

 

しかし、朝と夜では違います。夜になるとその妖怪性が増して不気味なため、夜の蜘蛛は地獄の使いとされました。そこで、「朝蜘蛛は待ち人来る兆し、夜蜘蛛は親の仇」、「朝蜘蛛は福が来る、夜蜘蛛は盗人が来る」などと言われ、「朝の蜘蛛は殺すな、夜の蜘蛛は殺せ」と言われるようになったのです。

 

 

■ヤモリは「家守」である

 

蜘蛛と似たような例にヤモリがいます。ヤモリは人には悪さをせず様々な害虫を食べてくれるため、ヤモリのいる家には悪いことが起きないと信じられてきました。だから家を守ってくれるとされ、「家守」と書きます。

 

また、ヤモリは光に集まる虫を好みます。昔は夜に灯りがつけられる家はお金持ちだったので、お金持ちの家にはヤモリも集まりました。そこで、ヤモリのいる家は繁栄すると言われるようになり、益々大事にされるようになったのです。

 

 

■蛇だって家に居たほうがいい!?

 

ヤモリや蜘蛛以外にも、一般的には嫌われる生き物を縁起の良いものとする例は幾つもあります。嫌いな生きものランキングでいつもトップの蛇でさえ、昔から神の化身として崇められ、家に住みついていると繁栄すると喜ばれてきました。さすがに家に住みつくのは嫌だと言う方でも、蛇が脱皮した皮を財布に入れて金運上昇を願ったり、お守りとして蛇皮の小物を持ったりしている方が少なくありません。

 

その背景には、自然への畏怖や、生き物と共生しようという考えがあります。だから、朝蜘蛛やヤモリを大切にする風習が今でも息づいているのでしょう。

 

ちなみに、冒頭の茶柱が立つと縁起が良い理由は、茶柱が立つのは稀であり、家の柱や床柱が立つことに通じるから。鏡が割れると縁起が悪いのは、鏡を御神体とする神社があるように、鏡は神聖なものとされているからです。

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三浦康子

和文化研究家、ライフコーディネーター/古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、連載多数。All About 「暮らしの歳時記」、キッズgoo 「こども歳...

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