最近の曲がヒットしない原因は「歌詞の文字数」!? 往年のポップスと比較してみると…

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2017年は大ヒット曲が生まれなかった。子供からお年寄りまで知ってるような国民的ヒット曲は1990年代後半から急速に減少し、2000年代以降は1年に1曲あるかないかくらいの頻度になってしまっている。今ヒットチャート1位の曲を誰も知らない。おかしな時代だ。

 

 

■往年のヒットソングの歌詞は概して短い

 

この現象について音楽業界人たちは「昔にくらべ嗜好が細分化しているから」と言うことが多いが、僕はレゲエやヒップホップ、エレクトロ、ビジュアル系などのコアな音楽ジャンルがポップスのパイを奪うほど多くの人に支持されているとは思えない。

 

昨年末にオリコンが発表した『好きなアーティストランキング2017』に目を通すと、トップ10は上から順にMr.Children、宇多田ヒカル、嵐、B’z、いきものがかり、buck number、ゆず、スピッツ、星野源、SMAPと言った具合。それぞれ音楽的背景は違うがこの程度の差異は昔からあったし、基本的に歌ものポップスであることに違いない。現代も大半の人はごく一般的なポップスを嗜好しているということだ。

 

なのに大ヒット曲が生まれない理由……それは単に楽曲に魅力が無いからではないだろうか。僕は現代のポップスにある違和感を抱いている──それは歌詞の文字数。現代のポップスは歌詞の文字数が多すぎて何度か聴いたくらいでは内容を把握することが出来ない……歌詞がダメなのだ。

 

かつてヒット曲はお年寄りから子供までみんなが口ずさめるものだった。1970年代から1980年代にかけての主なヒット曲と歌詞文字数をいくつか挙げてみよう。

 

『瀬戸の花嫁』(小柳ルミ子 1972年)191字
『神田川』(かぐや姫 1973年)266字
『ファンキー・モンキー・ベイビー』(キャロル 1973年)247字
『勝手にしやがれ』(沢田研二 1977年)350字
『UFO』(ピンク・レディー 1978年)344字

『ルビーの指環』(寺尾聡 1980年)326字
『ワインレッドの心』(安全地帯 1983年)291字
『Romanticが止まらない』(C-C-B 1985年)300字
『セーラー服を脱がさないで』(おニャン子クラブ 1985年)320字
『パラダイス銀河』(光GENJI 1988年)368字
 

ソロシンガーからシンガーソングライター、ロックバンド、アイドルまで幅広く挙げてみたが、歌詞の文字数はいずれも200字から350字程度。風景が頭の中に浮かんできやすいし、ファンでなくとも一番くらいならソラで歌えるという人が多いのではないだろうか。文字数が500字前後までなるようなヒット曲もあったがそれらは

 

『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』(ダウン・タウン・ブギウギ・バンド 1975年)486字
『勝手にシンドバッド』(サザンオールスターズ 1978年)509字
『関白宣言』(さだまさし 1979年)503字

 

など語りがメインになっていたり、早口でまくし立てる歌唱法であったり、コンセプトの特殊な楽曲だ。

 

 

■最近の曲は歌詞が長い!

 

それが近年のヒット曲は

 

『RPG』(SEKAI NO OWARI 2013年)513字
『私以外私じゃないの』(ゲスの極み乙女。 2015年)488字
『トリセツ』(西野カナ 2015年)は600字
『EXCITE』(三浦大知 2017年)793字
『インフルエンサー』(乃木坂46 2017年)805字

 

と500字から600字程度の楽曲が多く、800字を超えるものも珍しくないインフレぶり。曲名やサビのフレーズくらいはわかるかもしれないが、具体的にどんな内容なのかまでは把握していない人がほとんどだと思う。つまり歌詞が500字にも600字にもなるような曲はたとえヒットしても大衆の心に深く浸透させることが難しいのだ。140字のTwitterが全盛の時代にダラダラと日記みたいな歌詞を書くのは時代遅れだとも言えるだろう。
 

この風潮は日本の音楽人が“日本語のポップスがどうあるべきか”という定見を持たずいたずらに洋楽のリズム感を追い続けたことや、職業作詞家がすたれ、その水準にはるかにおよばない低レベルなシンガーソングライターが増えすぎてしまったことが主な要因だと考えている。このような状況がさらに続けば、やがて音楽ファンから“歌詞を理解する”という習慣が失われてしまいかねない。実際に「歌詞の内容はあまり気にしてない」と言う人に出会い愕然とした経験が1度や2度ならずある。
 

現代のポップスから、上質な歌詞がまったく失われているわけではない。たとえば

 

『風』(コブクロ 2002年)334字
『粉雪』(レミオロメン 2006年)369字
『また君に恋してる』(坂本冬美 2010年)224字
『レット・イット・ゴー~ありのままで~』(松たか子 2014年)318字
『恋』(星野源 2016年)423字

などの楽曲は歌詞の文字数も適切で、歌詞の世界観やメッセージがしっかり伝わってくる。その証拠に、幅広い年代を巻き込んで近年まれに見る“国民的ヒット曲”になっているではないか。

 

けして歌詞の文字数のみで楽曲の良し悪しが決まるわけではない。しかし、現代のポップスはあまりに作り手が道を踏み外し、本来誰も望んでいない形になってしまっていると思わざるを得ない。この記事がみなさんが音楽を聴く上で、作る上でひとつのヒントになればと願うばかりだ。

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シンガーソングライター/音楽評論家

中将タカノリ

シンガーソングライター、音楽評論家。2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。深い文学性と、歌謡曲、アメリカンポップスをフィーチャーした音楽性で独自の世界観を構築している...

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