2018年ホンダF1始動。今年こそ勝算はあるのか?

車・交通

 

トロロッソ・ホンダとして新たなスタートを切るホンダの2018年シーズンが始まった。舞台はオーストラリア・メルボルンのアルバートパークだ。公園内に設けられた、常設サーキットに比べてバンピーなコース(1周5.303km)を走る。決勝レースが行われるのは、3月25日だ。


入念に準備した甲斐があり、シーズン前のテストはほぼ順調に予定どおりのプログラムを消化した。新たにHonda F1テクニカルディレクターに就任した田辺豊治は次のように振り返る。

 

テクニカルディレクターの田辺豊治氏。昨年まではインディカー・プロジェクトのエンジン開発も担当していた


「テストではここ(開幕戦メルボルン)に向けてPU(パワーユニット)および車体、ドライバーやタイヤの基本的なパラメーターを振ってテストしました。PUに関して言うと、できるかぎり信頼性を確認しました。(テストから開幕戦までは)不具合が出たところに関しては不適切なところを見つけ、ダイナモ(台上試験機)でテストし、確認。それに伴う対応データを入れて今回は臨んでいます」


田辺テクニカルディレクターは昨年まで、インディカー・プロジェクトのエンジン開発を受け持っていた(佐藤琢磨のインディ500優勝を陰で支えたひとりでもある)。もっとさかのぼると、ホンダの第3期F1参戦時代(2000年~2008年)はジェンソン・バトンの担当エンジニアやレース・テストマネジャーなどを務め、第2期参戦時代の1990年~92年はゲルハルト・ベルガー(マクラーレン・ホンダ)の担当エンジニアを務めた。


ベテラン中のベテランである。サーキットの現場にはヨーロッパ駐在組と日本の開発拠点であるHRD Sakura(栃木県さくら市)からの応援組を合わせ10数名のエンジニアが働いているが、田辺エンジニアは「絶対壊すな」と部下に厳命しているのだそう。田辺エンジニアからそう言われると、「これは相当に気を引き締めてやらないとマズイ」というムードになるのだそう。我々メディアへの対応では、厳格というより、実直な人柄が伝わってくる。


だから、リップサービスはしない。


「テストの結果はテストの結果でしかありません。(中団グループのどの位置にいるかは)走ってからいろんな状況が見えてくると思います。(はっきりするのは予選がある)土曜日ですね。Sakuraのメンバーと、いまできることはすべてやり、持ってきたつもりでいます。ふたを開けてみて、ですね」


2018年シーズンに投入するホンダRA618Hは、新しい燃焼コンセプトを取り入れた2017年のRA617Hをベースにした進化版だ。


「基本コンセプトは継続しています。壊れたものとか、性能が上がるものに関して、改良品を入れた形です。コンセプトに関わらないレベルの大小さまざまなパーツを見直しています。確実にレースを走りきることが、目標の第一歩だと思っています」


競合と同じ条件で走っていないので、自分たちがどのポジションにいるのか判断することはできない。だから、順位的な予想はとても立てられないというわけだ。

 

ピエール・ガスリーは「いつかチャンピオンになりたい」と語るが、楽観視はしていない


ドライバーも同じスタンスである。まずはピエール・ガスリーから。昨シーズンはスーパーフォーミュラに参戦していたが、シーズン終盤にトロロッソのレギュラードライバーに昇格。今シーズン初めてフルシーズンで参戦する。


「個人的な目標は、いつかチャンピオンになることだ。レッドブルの育成ドライバーとして言うと、いつかレッドブルに乗りたい。でも、まだその話をするのは早すぎる。なにしろ、フルシーズンでドライブするのは初めてだからね。目下の目標は、今シーズン順調なスタートを切ることだ。テストでは、クルマからいいフィーリングを得ることが重要だと思っていた。その意味では、とても満足している。(ホンダのパワーユニットは)低速ではとてもスムーズだし、ドライバビリティがいいことに驚いたよ」


楽観視していないのは、田辺テクニカルディレクターと同様である。


「順位争いはスーパータイトだ。0.3~0.4秒のラップタイムの違いで、順位が3つ4つ変わると思う。おそらく、マクラーレンやルノー、ウイリアムズ、フォース・インディアと争うことになると思う。予選で(出走20台中の上位10台が進出できる)Q3に進出できれば上出来だ」

 

ニュージーランド出身のブレンドン・ハートレー。メルボルンのサーキットを走るのは初めてだ


ガスリーと同様、昨シーズン終盤にレギュラードライバーに昇格したブレンドン・ハートレーも、トロロッソ・ホンダでフルシーズンデビューを迎える。隣国ニュージーランド出身だが、オーストラリアを訪れるのは3度目、メルボルンは初めてだという。当然、初めて走るサーキットだ。

 

「テストでのトロロッソ・ホンダのパフォーマンスは、僕を元気づけてくれた。この週末に、F1で最初の(10位以内のドライバーに与えられる)ポイントを獲得することが目標だ。中団グループの争いはとてもタイトだけどね」

 

2017年の年間チーム順位が7位だったことを考えると、予選で10番手以内に入ることはなかなか高いハードルである。そのハードルを、トロロッソ・ホンダは越えることができるだろうか。

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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