“ハードコア弁当”でインスタ萎え? 一周回って「プア充」アピールの時代が到来

ライフスタイル

 

簡素な日の丸弁当や、タッパーに敷き詰めた白ご飯の上に出来合いのおかず一品だけドーン!の「ハードコア弁当」がSNSで流行っているようで……。

 

 

■そっか、うちの母が作るお弁当はハードコア弁当だったんだ…(共感)

 

どうやら、ことの始まりはお笑い芸人さんのTwitter投稿。「あまり食に興味がない」と言いつつも、ご飯に確実に合う塩っ気のおかずが選ばれているところに、センスを感じます。私などは酒飲みなので、自分のお弁当(特に仕事中のお昼ごはん)ならこれでいいと思っちゃうレベル……。

 

そういえば私の本にもエッセイ「絶望弁当」として収録されていますが、私の母も料理に興味のない人で、彼女が作ってくれる絶望的に簡素なお弁当は「白ごはんの上に白いロウのような冷え切った餃子がドーン」「ゆで卵が丸のままドーン」「お肉一枚、切らずにドーン」「なぜか炒めた油揚げがてんこ盛り」。そして噛んでも飲み込めない。決して貧しかったわけではないと思われるのですが、料理下手の母が繰り出す彩りも栄養バランスも忘れたかのような究極のシンプル弁当は、花柄フリルやおリボンに憧れる幼い少女心には修行状態、厳しい日々を送っておりました。

 

それが今や「ハードコア弁当」としてSNSで共感を集め、「プア充」アピールが楽しまれ、関連書籍まで現れているとは、隔世の感あり。ああ、そんな余裕とユーモアが少女時代の私にも欲しかったよ!

 

 

■その昔、「恥メシ」というのがあってだな

 

この「プア充」なるもの、ただのプアではなく、SNSで小粋さや面白さをアピールするためのプア。リア充の対極ながら根っこは同じ承認欲求というわけで、そのちょっとこじらせ気味なプア充というありようは、実名から匿名、ドヤ顔から謙虚ドMの極みまで、SNS的表現を一通りやってきた現代人ならでは。

 

そこで思い出したのが、2010年頃にテレビ番組をきっかけとして一部でヒットした「恥メシ」というジャンル。人様にはとても言えないけれど、ひとり自宅でごはんを食べる時のお気に入り貧乏メシのことを指していました。「焼き鳥のタレのみで白ごはん」「岩のりの残った空き瓶にマヨネーズと白ごはん」「カップラーメンの残り汁に白飯投入」などは序の口で、えび天のしっぽだけを集めた天丼(?)などのドン引きメニューも。でも個人的にキングオブ恥メシは、ミュージシャンのスガシカオさんが売れない時代にやってみたという「風邪薬on白飯」です。

 

スガシカオさんはTwitterの「かけ過ぎ部」部長としての活動も有名で、外食でとかくなんでもトッピングをかけ過ぎてはツイート。刻みネギonラーメン、粉チーズonパスタなど、下のメニューが何であるか一切見せないほどかけ過ぎるのが粋(イキ)とされています。

 

 

■インスタ萎えというユーモラスな屈折

 

スガさんの生き方にも表れていますが、色々やって経験して、酸いも甘いも嚙み分けてきたオトナだからこそ到達できる、「プアを面白く表現して楽しめる」境地というものがあるのかもしれません。

 

インスタ映えなんて追求して盛っているうちは、まだまだ青い。あれもこれもやって一周回ってみろ!ってなもんで、インスタ萎えでドヤれる自分を目指して、ワタシも原稿執筆の友であるいつもの定番恥メシ(納豆丼とか卵かけご飯とか)のさらなるシンプル化を図ろうと思う、この春です。

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コラムニスト

河崎 環

河崎環(かわさきたまき)/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭学園中高から転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Web...

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