セクハラ、パワハラより職場に感染する「新人いじり」の対象者とは? 転職、休職、自殺を招く実態

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『上司の「いじり」が許せない』(中野円佳/講談社)

新入社員をはじめ社内の異動など、生活が大きく変化する時期。新たな生活に慣れるために一生懸命仕事をこなしているだけなのに、いつの間にか職場で“いじられキャラ”になっていた、という人もいるのではないだろうか。しかも、上司にいじられるのが心の底から苦痛……と、感じているケースも多いはず。

 

先日発売された『上司の「いじり」が許せない』(中野円佳/講談社)は、タイトルにもあるように、職場で起こる「いじり」について論じている。第二章の「いじりの効用 なぜいじるのか」では、いじる側の心理について扱っている。同書には、この時期にターゲットになりやすい“新人いじり”の被害者も登場する。

 

元商社マンのダイスケさんは「どちらかというとコミュ力(コミュニケーション力)が高そうで、だけどイケイケではないみたいな中途半端なキャラがいじられキャラになりやすい」と、いじられる側の特徴を話す。

 


「(新入りの)通過儀礼ですよ。新卒の中の誰か一人をいじることで、新卒全体との垣根を取っ払う。そうやって仲間に入れる。でも先輩後輩関係はずっと続くからその組織にいる限り、いじられる関係は持ち越されるし、場合によっては『この人いじっていいんだ』って認識されて後輩にもいじられるようになっちゃう。まぁ新たなターゲットがでてくればそっちに関心は移っていきますけどね」
 

著者の中野円佳氏によれば「私が取材したほとんどの事例で、いじりは新入社員、あるいは転職直後などの新入り時代。それも最初の歓迎会などかなり初期に始まっている。そして加害者側は、むしろ『仲間に入れてあげる』行動として、場合によっては『良かれと思って』していることもある」とのこと。それだけ新人いじりは、職場では“よくあること”なのだ。

 

何より問題なのは「良かれと思って」いる上司のケースだろう。いじられる側にとってはお節介にほかならないが、早く周囲に溶け込めるように“してあげている”という意識が加害者側にあることも。新人いじりの問題点はそれだけではない、と中野氏は指摘している。

 


「厄介なのは、『いじり』が一対一の関係の中で起こりやすいセクハラやパワハラに比べて、より“感染”しやすい点だ。ほとんどすべての取材事例で、加害者は一人ではない。

『直属の先輩にいじられているうちはよかったけれど、なぜか隣の部署の人にまでひどいことを言われた』『徐々に上司から年の近い先輩にいじりが広がり、結託して仲間だったはずの同期まで貶めてくる』といったエピソードには事欠かず、いじる側が複数に広がっていじりが加速・増大する様子が観察される」
 

いわゆる“悪ノリ”が、職場全体に感染していく構図が浮かぶ。いじられキャラの社員は、上司に不快な気持ちを伝えることができず愛想笑いをすると「喜んでいる」と錯覚されてしまう可能性すらある。同書には、職場でのいじりに耐えきれず休職や転職をした人、いじりから解放されたいという思いから自殺未遂をした人も登場する。なんともやるせない話だ。

 

ほかにも、女性管理職が“いじり”の対象になりやすい理由や、いじりがもたらす精神的苦痛、加害者・被害者へのアドバイスも同書に綴られている。「よかれと思って」部下をいじっている人、いじられるのが苦痛な人、双方の処方箋になる一冊となっている。

 

文=粟田ヒエ(清談社)

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