できる子も問題児も…! 親が持つ「前提」で作り出される子どもの姿

人間関係

清水なほみ

 

4月からの進級や進学を控えて、「うちの子は引っ込み思案だから新しいお友達ができるかしら」とか「学校の勉強にちゃんとついて行けるかしら」なんて「しなくていい心配」をしてしまう親御さんもいらっしゃることと思います。あえて「しなくていい」と冠をつけましたが、実はこの「親が子どものことをどう思っているか」が子どもの実際にとる行動や発揮する実力に影響を与えてしまうのです。

 

人は自分が持っている「前提」が正しいことを証明するように行動します。例えば、私は「勉強なんて簡単。誰だってコツをつかめばすぐにできるようになるもの」という前提を持っていますから、学ぶことは全然苦になりませんし学んだことを素早く吸収できます。でも妹はよくこう言っていました。「頑張っても頑張っても勉強ができない人だっているのよ!」と。そもそも「頑張っても頑張っても」と言えるほど努力している姿を見たことがないんだけど…という突込みは母親に譲るとして、妹がどういう「前提」を持っているのかお分かりですよね? そして、その「前提」を証明するために「勉強ができない自分」であり続けていたということが理解できると思います。

 

親が子どものことを「どう思っているか」は、裏を返せば「どういう子でいてほしいと思っているか」です。そして、「どういう子でいてほしいか」の背景にあるのは、そういう子でいてくれると「私が活躍できる」「いつまでも子どもの世話を焼ける」「自分の存在意義が高まる」といった、親にとってのメリットです。一見、子どもが手のかかる状態で、親にとっては「大変だ」と思える状況であっても、それは親が望んで作り出した子どもの姿である可能性が高いと言えます。

 

例えば、「うちの子は赤ちゃんの頃から病弱で、喘息もアトピーもあって本当に世話が焼けるんです」と言いながら、娘さんの診察にいそいそと同席なさったお母さんがいらっしゃいました。娘さんは「場面寡黙症」と診断されていて、私の質問に自分では答えようとしません。全部お母さんが代わりに答えてしまいます。このケースの場合、お母さんが「この子は私がいないとダメなの」という前提を持っています。自分がついていてあげないとダメというポジションに娘を置いておくことで、「手のかかる子をかいがいしく世話する母親」を演じることができるのです。そして、そうすることで母親自身が「必要とされない不安」から逃れて存在意義を見出すことができます。

 

このように、親のメリットのために子どもに対して何らかの「前提」を持ってしまうケースは多々あります。ただ、この「前提」は普段の生活の中ではなかなか気づきにくかったり、「この子が問題ばかり起こすから『うちの子は問題児』というレッテルを貼りたくなるんだわ」と、原因が子どもにあるように勘違いしてしまいがちです。自分が子どもに対してどういう「前提」を持っているのかに気付く簡単な方法があります。「うちの子っていつもこうなの」「あなたっていつも○○なのね」といったセリフが自分の口から出てきたら要チェックです。そこに、親が持っている「前提」が隠れています。

 

「前提」を持つことは、必ずしも悪いこととは限りません。例えば、「この子は運動が得意そう」とか「記憶力がすごい」とか「独特の感性がある」といった前提を親が持っている場合、「実際の本人の能力がどうなのか」は関係なく、親が「やっぱりそうだわ」と確信を重ねていくようなことが起きていきます。それが繰り返されると、親が持っていた前提が、子ども本人にとっても「自分はこういう人」という前提になり、特定の能力を飛躍的に伸ばすことにつながるのです。せっかく「前提」を持つなら、子どもの将来につながる「前提」を持ってみてはいかがでしょうか。

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清水なほみ

女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性...

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