「長時間テレビを見ると、死亡リスクが高くなる」のはなぜ?

ヘルス・ビューティー

今村甲彦

 

長時間テレビを見ると死亡リスクが高くなるという驚くべきデータが報告されました。

 

テレビの視聴時間が長い人は死亡リスクが高いことが、米国で行われた平均14年間の追跡調査で分かった。

 

調査は慢性疾患のない50~71歳の男女22万人以上を対象に実施。テレビ視聴時間が1日1~2時間と答えた人が全体の3割、3~4時間が4割強だった。

 

統計的に調整すると、テレビ視聴時間が1日1時間未満の人に比べ、1~2時間の人の死亡リスクは2%高く、3~4時間では8%、5~6時間で15%、7時間以上では33%高かった。

 

(略)

 

また週4時間以上運動をしている人でも、視聴時間が長いほど、死亡リスクは高かった。

参照:『長時間テレビを見ると、死亡リスクが高くなる』-日経ウーマンオンライン(日経ヘルス)

 

医学的な知見も踏まえながら、なぜ長時間テレビを見ると死亡リスクが高くなるかについて考えてみたいと思います。

 

 

■「テレビからの電磁波が影響している」はウソ!?

 

「テレビからは電磁波が出ている。それが人体に有害であり、死亡リスクを上げているに違いない」。そう考えている人がいるかもしれませんが、それは早計です。

 

テレビから出る電磁波は微々たるものであり、健康に問題はありません。また電磁波は電化製品やパソコンなど日常的に使う電化製品からも出ていますが、 WHO(世界保健機関)も問題のないレベルとの見解を出しています。総務省も、私たちが日常受けている電磁波は人体に有害ではないと示しており(「電波の人体に対する影響」)、テレビからの電磁波が死亡リスクを上げているということはなさそうです。

 

となるとテレビと死亡リスクは関係ない? いえいえ、そうとも言い切れません。読書やパソコンで調べるという行動は自分で積極的に動いているのに対して、長時間テレビを見るというのは、流れてくる映像をただ漠然と受け入れている受動的なものに過ぎません。

 

受動的に生活しているということは、自分で物事を計画・実行する機会が少なくなるとも言えます。つまり、自分で計画して 規則正しく生活をしていないということは、食事も不規則でバランスが悪くなる、定期的に運動をせずに運動不足になる、積極的に健康診断をしない、異常を指摘されても病院を受診しない、といったように、健康に悪い影響をもたらす可能性が高くなるわけです。

 

じつは、「積極的に計画・実行する人は“がん死亡率が低い”」というデータがあるのです。これを発表したのは国立がん研 究センターなどのグループ。日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する人は、そうでない人に比べて、がんで死亡するリスクが15%低くなるとされています。

 

では、受動的とはいえないスマホの場合はどうでしょう? じつはスマホのヘビーユーザーも死亡リスクが高いと考えられるのです。その意外な要因を解説しましょう。

 

 

■スマホのヘビーユーザーの死亡リスクを上げる意外な要因とは?

 

最近テレビを見る時間は減った分、スマホを使う時間が長くなっている人も多いでしょう。スマホによる健康被害としては、一般的に歩きスマホや運転中のスマホ操作による事故や、スマホ画面から出るブルーライトの影響による睡眠障害、長時間同じ姿勢で使い続けることによる肩こりや頭痛などがあります。

 

では、スマホが死亡リスクを上げる意外な要因というと、これは長時間テレビを見ることにも当てはまるのですが、「座りすぎ」なのです。スマホに熱中して数時間座りっぱなしだったということはよくあることだと思いますが、たかが「座りすぎ」と侮るなかれ、「座りすぎ」で起こる健康被害は世界的にも問題視されているのです。

 

 

■「座りすぎ」が死亡リスクを上げる

 

日本ではあまり問題視されていないのですが、世界的には長時間座るリスクが大きく注目されています。ではなぜ「座りすぎ」が健康に悪いのでしょうか?

 

立ったり歩いたりしている際は足の筋肉がよく働いています。この時に筋肉の細胞内では、血液中から糖や中性脂肪が取り込まれる代謝という活動が行われています。ところが座っていると、足の筋肉での代謝が行われません。下半身の筋肉は全身の筋肉の70%を占めると言われており、座ることで多くの筋肉の代謝が行われなくなります。そうなると、最終的に全身を巡る血流が悪化し、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などのリスクが高くなるとされているのです。

 

座位行動研究の第一人者、ネヴィル・オーウェン博士はこう話します。

 

「長時間座り続けると、脚にある大きな筋肉が働くのをやめてしまいます。体にあるいくつもの重要なスイッチがオフになってしまうのです」

参照:『“座りすぎ”が病を生む!?』-クローズアップ現代(NHK ONLINE)

 

興味深いことに、運動を行っている人でも、座る時間が長い人ほど死亡リスクが高いと報告している研究結果があります。

 

2010年、サウスカロライナ大学運動科学部のスティーブン・ブレア教授らは、驚くべき研究成果を発表しました。

 

8000人の健康な男性を、21年間にわたって調査したところ、テレビの視聴時間や車での通勤時間が長い、つまり座っている時間が長い男性ほど、心臓病による死亡リスクが高いということがわかりました。

 

座りっぱなしがよくないなら、その分運動をして補えばいいと思うかもしれませんが、この研究結果の怖いところは、たとえ運動をしている人でも、1日のうちで座っている時間が長ければリスクが高くなるということです。同様の調査はほかにもあります。

 

※『疲れない脳をつくる生活習慣 働く人のためのマインドフルネス講座』(石川善樹著・プレジデント社)より

 

オーウェン博士の言う「体にあるいくつもの重要なスイッチがオフになってしまう」ことが関係しているのかもしれません。

 

アメリカ・シリコンバレーなどのITベンチャーでは、多くの人たちが立ちながらパソコンで仕事をし、北欧などでは、新しくオフィスに導入する机はスタンディングデスク等の、立って仕事ができるものに変わってきているそうです。

 

テレビを長時間見るのを止めるだけでなく、仕事などでも立つ時間を増やし、日常的な座りすぎを防止することが健康に良いと言えます。

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今村甲彦

医師。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。久留米大学病院高度救命救急センターを経て、現在は地域の中核病院で内科診療および内視鏡検査に励む。「患者さんの声に常に耳を傾...

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