ブラックスーツ&ブラックタイは実はNG!?「謝罪スーツ」のルールとは?

ライフハック

 

■謝罪には謝罪のためのスーツがあります。

 

誰でも結婚式やお葬式用のスーツはお持ちのことと思います。しかし謝罪用のスーツをお持ちでしょうか。自分には公式に謝罪する場所も必要性もないと思っているかもしれませんが、今の時代は何があるかわかりません。クロゼットに一着、冠婚葬祭用スーツと別に、謝罪用スーツを用意しておくのも、大人の嗜みかもしれません。

 

とはいえ謝罪用スーツが万能というわけではないのは、断っておかなくては成りません。体裁や仕組みやルールを気にしていては、「謝る」ことの意味が薄れてしまいますので、それをスーツに託すのは無茶というもの。服装はもちろん体面を気にして取り繕っても、相手に誠意は伝わりませんし、いつまでたっても相手の怒りは収まりません。席を設けることに手順を気にして時間がかかれば、さらに相手の不安と怒りは増すばかりです。

 

・「グループだから」・「大学だから」・「会社だから」・「国だから」・「知らなかった」・「言葉の行き違いがあった」・「管理が行き届かなかった」・「書面でやりとりするものと思っていた」

 

このような前提を謝罪に設けること自体、誠意を削ぐことは明らかです。謝罪用スーツが揃わなかったなんていうのも言い訳にならないので、事前に準備しておくことが大切なのです。それに謝罪の意思と事実をつまびらかにすることは、分けて考えなければなりません。できるだけ早い内に、まずは謝罪し、それから事実を解明し、説明責任を果たすという順序だけが、謝罪から贖罪へ向かいます。にも関わらず前述したような忖度を働かせたり、効率を考えようとするから、相手に気持ちが伝わらないし、マスコミは騒ぐし、関係のない国民も納得しません。

 

挙げ句の果てには政治や国会といった、関係者なのか部外者なのかよくわからないところにまで飛び火して、ネットでも大炎上。この「部外者が騒ぐ」というのも考えもので、本来当事者間で互いに納得しなくてはならないはずなのに、世間が許さないと本当の意味で許されないことになってしまいます。スポンサーも番組も、本来は部外者なのに、消費者や視聴者が騒ぐからやむを得ず、契約を解除したり番組を編集し直したり、マスコミが騒ぐから仕方なく会見を開けば、部外者のはずの司会者が勝手にブチ切れて、さらに余計なスピンアウトも出てきます。結果、本筋がなんだったのか、よくわからなくなってしまうのは、一連の謝罪コンテンツとしていかがなものかと。

 

体裁が整わなくても、謝罪用スーツが間に合わなくても、まずは早急に謝罪することで、多少の齟齬が許されるのは、ブラックスーツにブラックタイで謝罪会見したアイドルグループの例からも明らかです。GWのど真ん中、世間が休暇中で寛いでいても、事件発覚後大急ぎで会見を開きました。メンバー全員、同じブラックスーツにブラックタイ、白シャツまで急ごしらえだったのでしょう、フィットしている人、していない人いましたけれども、目を真っ赤に腫らして30年来の友人の罪を真摯に謝罪する姿には、誠意を感じたという人は多いのではないでしょうか。

 

 

■謝罪の正装はグレーのスーツ×白無地シャツ×紺無地タイ

 

謝罪時の服装は、日本の文化に即したものが不文律としてである程度規定されています。それぞれに理由がきちんとあるので、ひとつずつ解説しておきましょう。

 

・スーツはミディアム〜チャコールのグレー

 

グローバルな視点からいえば謝罪時は、上下共地のスーツ、色はグレーの無地が適しています。もちろんストライプなどの柄は不要です。グレーは礼節、安息、信頼、中庸、追悼、禁欲など、心の平穏を表す色として使われますので、喜びや悲しみに心を動かされるシーンでも、平穏無事に出席することで式典の進行を妨げず、また当事者に対する礼の心を表します。グレースーツとひとことで言っても明るいグレーから濃いグレーまで様々ありますが、慶事には明るいライトグレー、弔事にはミディアムグレーからチャコールグレーまでを選ぶことが多いようです。

 

日本の冠婚葬祭は黒いスーツが一般的ですが、欧米で黒はクラシック(服装としての最高位の意)の範疇になく、慶事の最高グレードに限定される衣装の色なので、叙勲式の礼装、演奏会の指揮者など、一部の礼装に限られます。

 

・ネクタイは安静のネイビーを

 

ネクタイの色はスーツに合わせてグレーでも結構ですが、落ち着いた発色のネイビー=紺色というのも有効です。ネイビーは後退色・収縮色と言われ、後ろに一歩下がった意識を表すので、謝罪の席に適しているのです。さらにネイビーには落ち着きや信頼、知性を表すとともに、見る人に平穏をもたらす効果があるとも言われます。つまり興奮している相手をなだめ、そのうえで礼を持って謝罪するのに、グレーとネイビーが巧く働くというわけです。ただしネイビーでも光沢あるサテン地は慶事のイメージですので避けるほうがいいでしょう。コットン、リネンなどはカジュアル用の素材ですので同様です。

 

・シャツは白無地に限ります

 

フォーマルのシャツは、ドビーやオックスフォードではなく、ブロード地の白無地に限ります。織柄やストライプなども避けましょう。衿型はレギュラーもしくはセミワイド。慶事ならばワイドカラーという選びもありますが、あくまでネクタイをするのでノットの収まりが良いものがいいのです。ボタンダウンカラーはスポーツシャツ、カジュアルシャツのカテゴリーですので着てはだめですね。ダブルカフスやタブカラーなど、装飾性のあるものも謝罪には一切NGです。

 

・靴、ベルトは黒カーフ

 

革小物は基本的に黒のカーフで統一します。スエードや型押し、クロコはNO。プレーントゥ、もしくはストレートチップの紐靴という、フォーマルの原則に基づいたものを選びます。穴飾りの入ったものは“飾り”ですので相応しくありません。もちろんゴム底ではなく革底を。マッケイかグッドイヤーかは、どちらでもいいと思いますが、慶事に履くエナメルではなく、あくまでカーフの表革を選びます。雨が降ったからと言って、ゴム底やレインシューズでいくのも避けましょう。目的はどんな悪天候でも、謝罪に行かねばならないという誠意を表すためですので。

 

・小物は結婚指輪以外は外します

 

ダブルカフスのシャツはNGですのでカフリンクスは用いないとして、ポケットチーフ、たとえ見えなくてもネックレス、ブレスレットなどアクセサリーの類いはすべて外します。結婚指輪は装飾ではないとされるので、弔事でも許されるため謝罪にも転用してかまわないでしょう。ご注意いただきたいのは時間を気にしていること示すことから、腕時計を外さなくてはならないということです。1時間半たったところで、あと質問は2、3で終わりにしてくださいなどといって大炎上するからではなく、これはもう絶対的に時計をしないのは弔時の全世界的な約束事です。人の怒りや悲しみを、時間がきたのでハイさようならで済むわけありませんので。

 

 

■謝罪の正装を知ったうえで振り返ってみると…

 

というわけでブラックスーツ&ブラックタイは弔事の礼装ですので、本来、謝罪の席には用いません。少々「縁起でもない」感も拭えません。それでも黒=正装という気持ちが伝わり、できるだけ早く皆さんの前に正直な気持ちで登場したいという本心が評価されれば、気持ちは伝わります。先日の国民的人気アイドルの一件は、ある意味、弔事かもしれません。残念ながら当人は強い希望で脱退されましたが、残ったメンバーの未来を応援したい気持ちは誰もが同じではないでしょうか。これは服装はともかく謝罪の成功例といっていいと思います。

 

対して「書面でのやりとりで解決するものと思っていた」「会見に誘われなかった」など、体裁とシステムに気を取られて、なかなか表に出てこなかった某スポーツチーム監督とコーチは袋叩きにあっています。せっかくグレーのスーツを着たのに相手に謝罪の足を運んだ際、いくらスクールカラーとはいえピンクのネクタイをしていったことは失敗でした。この場合は時期を逸したこととはもちろん、団体としての体裁を保ったこと、すべてを後手に回したことが大きく、服装はなんのフォローにもなっていません。その後の会見でも地味なグレースーツに同系色のタイをして臨んだにも関わらず、誰も許してくれない雰囲気はいまも充満しています。またピンクのネクタイをして、余計なツッコミを免れたことは幸いですが。

 

謝罪スーツはあくまで謝罪の二次的要素であって、早急、誠意、正直こそが謝罪の一次的な要素であることにはかわりありません。お通夜の際は「急いで弔問に来た」ことを表すために、平服でもよしとされるように、謝罪は服装など体裁より、少しでも早く誠実差が伝わるよう時間無制限で行うこと。国内唯一の危機管理学部でも、きっとこのように教えていると思います。

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ファッションエディター・ライター

池田保行

神奈川県横浜市出身。ファッションエディター・ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリー。 2004年よりファッション エディター & ライター ユニット ZEROYON 04(ゼロヨン)を主催。 毎年1月と6月にイタリ...

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