難病の少年に学ぶ、“変えられない現実”の変換法──『ワンダー 君は太陽』

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アメリカで社会現象ともなった児童書『WONDER』が映画化され、2018年6月15日に日本で公開される。この映画が子どもにも大人にも共感されるわけは?

 

 

R.J.パラシオが処女作『WONDER』を執筆したのは、息子たちと出かけたアイスクリーム屋での出来事がきっかけだった。


「アイスクリーム屋のベンチに頭部の骨格に障害を持つ女の子が座っていました。その子を見て3歳の息子が泣き出したので、とっさに遠ざけようとしたベビーカーが上の息子にぶつかって、ミルクシェイクがひっくり返ってしまった。その一部始終を見ていたベンチに座る女の子の母親が穏やかな声で言ったのです。「私たちそろそろ行かなくちゃね」、と」


その日1日、パラシオは自分の行動を反芻した。傷つけまいとして立ち去ろうとしたことが、結局彼らを傷つけたのではないか? あのとき息子たちにどのような態度を示すべきだったのか?


この経験をもとに主人公、オギー・プルマンは生まれた。トリーチャー・コリンズ症候群という疾患を持つ10歳の男の子。遺伝子の突然変異により顔面の骨格が先天的に不形成。生まれてから現在まで27回の手術を受けた。昨年の2017年、日本でも同様の疾患を持つ人たちへのインタビューをまとめた書籍が出版され話題になったから、ご存知の人もいるだろう。


物語はオギーがはじめて学校へ通うことからはじまる。彼はどんな少年かと聞かれると、オギーを演じたジェイコブ・トレンブレイはこう答える。


「僕たちには共通点がたくさんある。スターウォーズが好き、家族が大好き。うちで飼っている犬の名前は、スターウォーズのキャラクターからヒントを得たんだ。オギーはまるで僕に当て書きしてくれたような、近しい存在だよ」


つまりジェイコブ同様、明るく聡明。ユーモアのセンスもあってスターウォーズに夢中。と、そこまではいい。しかし、オギーと家族にとって最大の問題がある。家の外に出ると好奇の視線を浴びることだ。

 

 

 

“教室”という社会の縮図
 

フィルムの中で子どもたちはオギーを遠巻きにして、つついたり後ろ指を差したりする。見ている方はハラハラするが、ついにオギーに友だちができたときは万歳と叫びたくなるし、オギーがその親友に裏切られたときは一緒に奈落に突き落とされたような気持ちになる。いっぽうで、オギーを受け入れられないクラスメイトの気持ちも理解できるし、お母さんを独占されて寂しいオギーの姉の気持ちもよくわかる。そんな自分の弱い部分、触れられたくない部分、醜い部分、悲しい思い出……これまで経験したことのあるデリケートな感情が次々と蘇ってくる。


チョボスキー監督は「すべての人にはストーリーがある。人生はまさにそうだけれど、この物語は自然な形で、誰もが持っている先入観を超えたその人自身を見せてくれます」と言う。この作品を見た大人たちは多くが大量の涙を流すという。


チョボスキー監督といえば『ウォールフラワー』(2012、原作・脚本・監督)でハイスクールのはみ出し者たちを、『美女と野獣』(2017、脚本)ではヒロインのベルを「本好きの変わり者」として描いた。いわゆる“みんなと一緒”でない若者たちを深いシンパシーを持って描き出す稀有なストーリーテラーである。


「彼らのようなキャラクターを描くことが意義深いのは、僕自身もアウトサイダーだという気持ちがどこかにあるから。ただ僕はアスリートでもあったから学校で友だちも多かった。だから今でも輪の内側にいる人と外側にいる人とをつなぐことが自分の役割だという気がしています」

 

 

父ネートとオギー 『ワンダー 君は太陽』

特殊メイクの奥で
 

作品の中でクラスメイトたちは次第にオギーのユーモアや頭の良さに気づきはじめる。観客もオギーの顔に慣れ、表情から彼の気持ちを汲み取れるようになっていく。ジェイコブに聞くと特殊なメーキャップはごく薄く作られており、細やかな表情の動きを反映するという。


「メイクのおかげでより想像力が働いてオギーになることができたよ」


アカデミー賞にノミネートされた『ルーム』(2015年)で今世紀最高の子役という評価を得たジェイコブ。彼からもたらされたものは大きいと監督は振り返る。


「僕のお気に入りは、一家が飼っていた犬が死んでしまって父親役のオーウェン(・ウィルソン)が泣いているシーン。セリフはまったくなくて、ジェイコブが部屋に入ってパパの肩をたたき、ただ座る。実はオーウェンの最後の撮影日に急に撮ることにしたんだけど、はじめてそのシーンを見たときとても驚いたし、感動した。この映画の中で大好きな瞬間さ」

 

 

オギーを演じたジェイコブ・トレンブレイとスティーヴン・チョボスキー監督

 

チューバッカとの共演

最後にもうひとり。劇中でオギーの想像場面に登場するあるキャラクターがいる。


「チューバッカのことも忘れちゃいけない(笑)。スターウォーズのプロデューサーのキャスリーン・ケネディに原作と脚本を送って、本当に特別な作品なのでとお願いしたら『いいわよ』って」と、うれしそうに話すチョボスキー監督。また、ジェイコブはチューバッカとの共演は最高だったという。「スターウォーズに出演するのは僕の夢のひとつでもあるから、それに一番近づけた瞬間だったな」


そんなお楽しみもありつつ原作同様、年齢を問わず琴線に触れる作品に仕上がっている。仕事が忙しく家での会話が少ないと悩む諸氏なら、久しぶりに家族を誘ってみるのもいいかもしれない。

 

『ワンダー 君は太陽』 
2018年6月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
原題:『Wonder』 原作:R・J・パラシオ『ワンダー』ほるぷ出版刊
監督・脚本:スティーヴン・チョボスキー
出演: ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、ジェイコブ・トレンブレイ
配給:キノフィルムズ
© Motion Picture Artwork © 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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