【今週の大人センテンス】W杯会場でコロンビアサポーターが日本サポーターを祝福

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巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第101回 これこそスポーツが持つ力!

 

「おめでとう」「Good game!」「日本凄かった。いい試合だった」「これがサッカーだ、君たちは素晴らしい」「ありがとう」……byコロンビアサポーター

 

【センテンスの生い立ち】

開催中の「2018FIFAワールドカップ ロシア」。日本代表チームは6月19日21時(日本時間)からコロンビア戦に挑み、見事2-1で勝利を飾った。国際サッカー連盟(FIFA)のランキングでは、日本が61位でコロンビアは16位。コロンビアチームやサポーターにとっては極めて残念な結果だった。しかし、twitterへの書き込みによると、試合後はたくさんのコロンビアサポーターが日本サポーターに、祝福や称賛の言葉をかけてくれたという。

 

【3つの大人ポイント】

  • 負けた悔しさを抑えて勝った相手を称えている
  • 言葉に出すことで「気持ち」を伝えてくれている
  • スポーツならではの美しい光景を見せてくれた

 

間違いなく「大金星」です。正直、希望的観測を抜きにしたら、日本がコロンビアに勝てると思っていた人はほとんどいなかったのではないでしょうか。ネットもテレビも大盛り上がり。翌日の新聞には「サランスクの奇跡!」という文字が踊っています。このあとの日本代表の1次リーグの試合は、セネガル戦が25日0時から(日本時間)、ポーランド戦が28日23時から(同)。応援する楽しみがますます膨らみました。

 

いっぽう、コロンビアの勝利を心から信じていたコロンビアサポーターたちのショックは、どんなに大きかったことか。サッカーに対しては並外れて熱いお国柄で、この試合の会場も青いユニホームの日本サポーターより、黄色いユニホームを着たコロンビアサポーターのほうが圧倒的に多かったとか。世界地図を見ると、コロンビアの首都ボゴタからロシアの首都モスクワまでは、東京からモスクワまでよりもさらに遠く離れています。

 

日本チームが大金星を挙げたことも感動的でしたが、試合後、現地で応援していた日本サポーターたちがtwitterに書き込んだ数々のエピソードにも、深く感動させられました。会場のあちこちで、勝った日本サポーターにコロンビアサポーターから、たくさんの祝福や称賛の言葉が贈られたとのこと。

 

twitterで「コロンビアサポーター」と入れて検索すると、たくさんの「こんな言葉をかけてくれた」というtweetとともに、いっしょにゴミを拾ったり、並んで記念撮影をしたり、鉢巻きをあげてハグしたりといった写真もアップされています。いくつかご紹介しましょう。

 

〈試合が終わったあと、good game! とたくさんの人が声をかけてくれて、一緒に写真撮影しよう!と。これは試合だ、これがサッカーだ、君たちは素晴らしい、と何度も、何人ものコロンビアサポーターと握手を交わした〉

 

〈会場の通路で数え切れないコロンビアサポーターに握手を求められる。泣いている人もいるが、「Good game!」「Good luck!」と殆どが陽気に語りかけてくる。なんて素晴らしい人たちなんだ〉

 

〈日本 やりました! コロンビアサポーターがハイタッチで「おめでとう!」「日本よかったよ」と祝福してくれました〉

 

〈コロンビアサポーターが素晴らしかった。何人もからコングラチュレーション言われた。僕らの青袋取って、ゴミも一緒に拾ってくれた。逆の結果で、僕らはできるだろうか? サッカーの奥は深いね〉

 

人間は弱い生き物なので、自分を甘やかせる口実さえあれば、平気でみっともないことをしてしまいがち。「応援していたチームが負けた。しかも格下に」というのは、絶好の口実です。口汚い言葉を吐いたり乱暴な振る舞いをしたりという誘惑にもかられるでしょう。もしかしたらそういう人もいたかもしれませんけど(どんなときも困った人は出てきますが、わざわざそこをクローズアップする必要はありません)、大半のコロンビアサポーターは、スポーツの素晴らしさを感じさせてくれる美しい態度を見せてくれました。

 

もちろん、さぞ悔しかったでしょう。だからこそ、相手を祝福し、強さを称え、いいゲームだったと肩を叩き合うことで、悔しさというマイナスの感情をもっとあたたかくて満ち足りたプラスの感情に変えることができます。「おめでとう」という言葉は、100%本心ではないかもしれません。しかし、その言葉に込めた「おめでとうと祝福することで、こうやってお互いに遠い国でいっしょに応援できた幸せを共有したい」「サッカーを愛する者同士、わかり合える気持ちを大切にしたい」という思いは、100%本心です。

 

嬉しい大金星に加えて、いいものを見せてもらいました。スポーツならではの美しい光景です。いや、スポーツ以外でもこうありたいものですが、それこそ人間は弱くて、自分を甘やかすのが得意な生き物なので、なかなかそうはいかないのが残念なところ。差し当たっては、紹介したコメントのいちばん下にあるように「逆の結果で、僕らはできるだろうか?」と、いろんな場面で自分に問い続けましょう。勝ったときは勝ったときで、負けた側に対する美しい振る舞い方があるはずです。

 

蛇足ですが、今回の「心あたたまる流れ」に見事に水を差してくれたのが、コロンビアサポーターの振る舞いを伝えるtweetを引き合いに出しながら、「どこかの隣国とは大違い」といったtweetをしている人たち。残念で悲しい光景です。自分のそういうtweetが、コロンビアサポーターの振る舞いに比べて、いかに情けなくて恥ずかしいかという自覚はないのでしょうか。日本のサッカーファンの大半は、きっと今回のコロンビアサポーターと同じような振る舞いをするはず。でも、そういう人たちにはできると思えません。

 

どこの国のサポーターにも、もちろん日本のサポーターにも、ごく一部に困った人はいるでしょう。自分の小さくて歪んだプライドをくすぐってくれる心地いい情報だけを見て、同じようなお仲間同士で「その国の悪口は言ってもOK」という「口実」に甘え切って、そのセリフの醜さに気付かずに己のみっともない了見をさらしてしまう――。「同じ日本人として恥ずかしい」というセリフは、きっとこういう時に使えばいいんですね。凶悪な犯罪が起きると何の根拠もなく「日本人じゃないんじゃないか」と言ったり、嫌いな国で呆れた事件が起きると「だからあの国は」と鬼の首を取ったように嘲笑する人たちも、同類です。

 

海外の人に「日本人って、よその国を平気で差別する人たちですよね。だって、ネットでこういうこと言っている人がたくさんいるじゃないですか」と言われたら、頭を垂れて「すいません」と恐縮するしかありません。ホント、いい迷惑です。そういう人は常々自分がいかに国を愛しているかを自慢なさいますけど、だったらどうかこれ以上、日本や日本人を貶めないでください。いろいろ辛いことがあるのはお察しいたしますけど。

 

 

【今週の大人の教訓】

「蛇足」の部分、誰よりも自分が「いい話」に水を差してしまいました。すいません。

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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