新幹線にセキュリティ検査は必要か、無人運転車はどうなる?【岩貞るみこの人道車医】

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《写真 Getty Images》東海道新幹線の車内で発生した殺傷事件を受けて浮かび上がったセキュリティ問題を考える(写真はイメージ)

 

【公共交通機関のセキュリティ】先日、東海道新幹線の車内で発生した殺傷事件。亡くなられた方のご冥福をお祈りすると同時に、心理的なものを含めて怪我を負われた方の回復を願うばかりである。


「逃げるところがなかった」


報道の第一報では、乗り合わせた乗客たちのこうした声を伝えていた。走り続ける新幹線は袋小路状態で逃げ場所がない。乗客の恐怖と絶望感を思うと、息が苦しくなるほどつらくなる。

 

 

◆利便性とセキュリティのバランス


同じ密室状態でも空を飛ぶ航空機の場合は、墜落の危険があるため厳重なセキュリティ検査が行われている。爆発物の疑いがあるものは、バックルの大きなベルトも再検査の対象になるほどだ。もちろん刃物も、機内食のカトラリーですらプラスチック製のナイフを用いるところもあるほどの徹底ぶりである。


一方の新幹線。セキュリティ検査はほとんどない。車両の最後部席のうしろ、背もたれの裏側にあるスペースに荷物を置いた場合、所有者の確認をうながすメッセージが書かれているけれど、実際のところ、ここ5年ほどは確認作業にはお目にかかったことがない。


欧州の国々を通過しながら走るユーロスターは、航空機のようなセキュリティ検査があり、日本の新幹線でも導入すべきだという声もある。ただ、イタリアの新幹線的高速鉄道であるペンドリーノなどは、セキュリティ検査は設けられていない。理由は、本数や乗客数が多すぎて現実的に不可能だからだ。


日本の新幹線も、利便性を考えるとセキュリティ検査は不可能に近い。それに新幹線をやるなら、ほかの特急はどうするのだという話も出てくる。さらに在来線はいいのかという話にもなりかねない。山手線のように、1~2分でとなり駅に到着するならともかく、少し地方都市に行けば次の駅まで10分以上走る在来線はいくらだってあり、セキュリティ問題を問いたくなる状態だ。さらに言えばバスはどうする。タクシー強盗を考えれば、タクシーの運転手だって乗客が刃物を持っていないかどうか確認したいところだろう。利便性とセキュリティをどうバランスさせるかは、むずかしい問題だといえる。


では、今後、活用が期待されている公共交通機関の自動運転はどう考えればいいのだろうか。

 

 

◆遠隔自動運転システムの「セキュリティ」

 

《撮影 岩貞るみこ》道の駅を基点に実証実験を行ったDeNAのロボットシャトル。


自動運転の実証実験について警察庁は、届け出なしに実験ができるガイドラインを作ったし、遠隔型自動運転システムだって外部に遠隔監視・操作者がいれば道路使用許可を出す体制を整えた。国交省も「保安基準に基づく関係告示の改正」で、車両にハンドルやアクセル・ブレーキペダルがなくても、速度やルート、緊急停止ボタンなどを備えることで公道実証実験を可能にしている。


世界に先駆けて超高齢者時代を迎える日本は、自動運転に対する期待も高く、それゆえ実証実験を行う環境は世界トップレベルなのだ(日本は公道での実験がしにくいとボヤく技術者をたまにみかけるが、それはつまり、実証実験ができない程度の技術力しかないということ)。


こうして日本は、現実的な導入に向けて突き進んでいるわけだが、冒頭の「セキュリティ」についても、そろそろ本気で考え始めなければならないと感じる。今回の東海道新幹線でも、最終的に最前線で犯人に対峙したのは車掌である(乗客の安全を守るのは彼の使命だとはいえ、改めて彼の勇気に頭を下げたい)。このように、人がいれば助けてもらえる。車内にだれかがいることで抑止力にもつながるだろう。けれど、遠隔型の無人運転になったら車内に助けてくれる人はいないのだ。

 

 

◆駆けつけたときに「もう遅い」では済まない


夜、ひとりで無人運転のバスに乗ったとき、自分よりも力の強そうな人と二人きりになるのは怖くないだろうか。強盗に財布を狙われたとき、財布と自分自身を守れるのだろうか。無人の自動運転バスを、便利だからと若い女性に勧められるだろうか。いや、性犯罪は女性だけが標的になるわけではなく、男性だって被害者になる可能性があるのだ。


「この周辺は田舎で、顔見知りばかりですから平和なんですよ」


実証実験を行っているエリアでは、そんな声も聞こえる。でも、本気で犯罪をやろうとする人は、わざわざ遠くからでも来るのだ。防犯カメラがついていると言われても、ヘルメットをかぶって乗り込まれ、バットでカメラをたたき割られたらどうするのか。異常を察知した遠隔監視者がかけつけたときには、もう遅いということになりかねないのではないか?


技術がいかに進歩しようと、最終的に使うのは市民である。使えるシステムにするためには早い段階でリスクを洗い出し、完璧は無理でも、やるべき対応を考えていかないといけないと思っている。

 


岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。 


文=岩貞るみこ

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