「あまり変わらない」新幹線N700系。目指すはポルシェ911のような存在か?

車・交通

 

新幹線と言うと、今はどうしても6月9日の東海道新幹線車内での殺傷事件を思い出してしまう人が多いだろうが、明るいニュースもある。同じ東海道新幹線と山陽新幹線で2020年から営業運転を始めることになっているJR東海の新型車両N700Sが先日、東京駅で公開されたのだ。

 

東海道・山陽新幹線の最近の車両の系譜を見ると、700系からN700系に進化したあとはN700A、今回のN700Sと、自動車で言えばフルモデルチェンジを行わず、マイナーチェンジを重ねているように思える。

 

筆者は実車を見ていないので写真だけでの判断になるけれど、外観は新幹線初採用のLEDを用いたヘッドライトが大きくなり、先頭部にブルーのラインがひとつ増えたことが目立つ。鼻先の形状も、空気抵抗やトンネル突入時の騒音低減を図るべく手直ししたとのことだ。サイドではロゴのデザインが一新している。

 

車内では要望の多かった普通車への全座席コンセント設置が実現したほか、リクライニングは背もたれだけでなく座面も連動して傾く方式に変わり、客室扉の上にあるディスプレイはフルカラーになってサイズも拡大した。照明は間接式になり、空調吹き出し口も内蔵式になって、窓から上は全般的にすっきりした。面白いのは停車駅に近づくと荷棚まわりが明るくなること。荷棚に載せてある荷物の取り忘れ防止のための仕掛けだという。いかにも日本らしい配慮だ。

 

 

■東北・上越・北陸新幹線と比べると物足りない?

 

メカニズムでは機器の小型軽量化を図っている。この結果、高速鉄道では初めてのリチウムイオン電池バッテリー搭載による緊急時自走システムを搭載した。すでに京王電鉄5000系などに積んでいるシステムと基本的に同じで、停電した時でもトンネルや鉄橋から低速で移動ができる。

 

さらにこの小型軽量化によって、16両編成の4両を1ユニットにすることができたという。山陽新幹線では各駅停車の「こだま」が8両編成になっているけれど、こうした編成が楽に作れるようになるそうだ。リニア中央新幹線が開通すれば、東海道新幹線は大幅な運行内容の変更が必須となり、全車16両では都合が悪くなる可能性もある。その時に備えて先手を打ったのかもしれない。

 

地震の時などに使う緊急ブレーキの性能もアップ。架線から電気を取るパンタグラフは摺板が一新され、架線から離れることを防ぎ、ロングライフに寄与している。そして安全性能では、機器が故障する前段階での異常を地上にいち早く連絡できるようになったほか、車内の防犯カメラの画像も常時送信可能となったそうだ。後者は先日のような事件の際に役立つだろう。

 

でも色については白い車体に青い帯という外観も、普通車は青でグリーン車は茶系というシートも従来どおりだし 改良したという鼻先の形状はN700Aを横に並べて見なければ分かりそうにない。JR東日本が走らせる東北・上越・北陸新幹線は、最近登場したE5・E6・E7系のすべてで形も色も違うことを考えると、物足りないと思う人がいるかもしれない。

 

ただクルマの世界では、日本車はモデルチェンジしても変化が少ないと「代わり映えしない」と否定的な意見を述べる人が多いのに対し、ポルシェのスポーツカー911はむしろ変わらないことを評価する人が多数派であるなど、この国の人たちは日本のモノと外国のモノで進化の基準が変わることが少なくないと感じているのも事実。

 

これは筆者の勝手な想像だが、JR東海はN700系を911のような、高速鉄道における普遍的存在に仕立てようとしているのではないだろうか。それならむしろ、変わらないことに納得したくなる。リニア中央新幹線の開業でスピードを追求する役目は終えると思うので、セキュリティ対策を含めた今日的な課題に対処しつつ、誰が見ても新幹線と分かる姿を継承していくのもアリだと思う。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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