F1フランスGPに現れた「謎のシマシマ」の正体

車・交通

 

6月24日に開催されたF1第8戦フランスGPを見て、「あのシマシマ模様は何?」と疑問に思った人も多いことだろう。アスファルトで舗装されたコースの脇に青いラインや赤いラインが描かれている。ナスカではないが、地上絵か何かだろうか。


答えに移る前にフランスGP開催サーキットの歴史を振り返っておこう。そもそも、F1フランスGPの開催は、2008年以来10年ぶりである。2008年まではフランス中部にあるマニクール・サーキットで行われていた。今回の開催はフランス南部マルセイユ近郊のポール・リカールである。


ポール・リカール・サーキットが誕生したのは1970年のことだ。F1はここで71年から90年まで断続的に14回開催され、91年からマニクールに移った。だから、ポール・リカールには「戻った」ことになる。

 

ポール・リカール・サーキットでのF1開催は28年ぶり。28年前に“シマシマ”はなかった


ちなみに、ポール・リカール(Paul Ricard)の名称は、ペルノ・リカール社を創立したポール・リカール氏にちなむ。サーキットの建設費を負担したのが、リカールだった。ペルノ・リカール社の「リカール」は薬草・香草系リキュールだが、会社自体は有力な酒造メーカーとして成長を遂げ、現在ではリキュールにとどまらず、ウォッカやジン、シャンパンにウイスキーなど、多くのメーカーを傘下に抱えている。ちょっと調べてみると、「あ、それ知っている」と思わず言いたくなるブランドに出くわすはずだ。

 

 

■グラベルの代わりにシマシマが登場

 

ポール・リカール・サーキットはこのシマシマを「ブルーライン・コンセプト」と呼んでいる


話を戻そう。28年ぶりにF1に戻ってきたのだから懐かしさを感じていいはずだが、そんな感じはしないし、むしろ青や赤のシマシマ模様が目について仕方ない。それもそのはずで、新しいオーナーのもとで大改修工事が行われ、生まれ変わったからだ。工事が完了したのが2002年のことなので、もう16年も前の話だが。


大改修を終えて生まれ変わったポール・リカール・サーキットは、自らをDAIGO ばりにHTTTと称していた。ハイテク・テスト・トラック(High Tech Test Track)の略である。グランプリ開催サーキットではなくテスト専用サーキットとして生まれ変わったのだった(当初は)。コースサイドのシマシマ模様は、テスト専用サーキットに生まれ変わったことと関連がある。テストを円滑に進行するための工夫なのだ。


コースサイドの脇はグラベルと呼ぶ砂利敷(土の割合が多い場合もある)にするケースが多い。砂利や土で衝撃をやわらげてスピードを落とし、奥にあるバリアにぶつかってダメージが大きくなるのを防ぐためだ。


グラベルは速度を効果的に落とすには都合がいいが、その後が面倒である。タイヤが砂利や土に埋まって自力では脱出できなくなることが多い。そうなると、重機の助けを借りなければならないし、救出に時間がかかる。テスト専用サーキットとして生計を立てていくことを考えた場合、コースアウトした車両の救出は迅速に済ませたい。時は金なりだからだ。

 

 

■シマシマを走るとタイヤがボロボロに…

 

赤いラインは青いラインよりも摩擦係数が高く、効果的にスピードが落ちる


そこで、シマシマ模様が考案された。コースサイドはグラベルではなくアスファルト敷とする。これなら、車両がコースアウトしても、グラベルのようにタイヤが埋まってしまうことはない。しかし、コースと同じアスファルト敷のままだと、効果的に速度を落とすことはできない。


そこで、摩擦係数の高い塗装を施すことにした。それが、青いラインである。縞模様にしたのは、視認性と芸術性を高めるためで、ポール・リカール・サーキットはこれを「ブルーライン・コンセプト」と呼んでいる。場所によっては青いラインの奥に赤いラインが引いてある。赤は青よりも摩擦係数が高く、青いエリアよりももっと急激に速度を落としたい場所に施されている(白いラインは単なる模様)。色の区別を付けることで、ドライバーは摩擦係数の変化に対して身構えることができる。


摩擦係数の高い舗装とは、言ってみればサンドペーパーのような状態だ。コースから外に飛び出してもタイヤが砂利や土に埋まることはなく、すぐにコースに復帰することはできる。だが、その利便性と引き換えに、タイヤはやすりで削られたようにボロボロになる。セッションを中断させて周囲に迷惑をかけることはないが、飛び出した本人は痛い目を見るというわけだ(砂利や土が車両の開口部から侵入するよりはマシか)。


コースレイアウトを数十通りに変更できるのもポール・リカールの特徴だ。近年はWEC(FIA世界耐久選手権)がシーズン開幕前の合同テストの場として使用している。このときは1.8kmにおよぶ裏のミストラル・ストレートをオリジナルのまま使用。ル・マンの長いストレートを再現するためだ。


一方、F1フランスGPの際は、追い越し機会をつくるためミストラル・ストレートの中間地点にシケインを設けた。確かにその効果はあり、レース中何度も追い越しシーンは見られた。だがドライバーには不評で、2019年の開催に向けてシケインの撤廃案が持ち上がっている。
 

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

世良耕太のプロフィール&記事一覧
ページトップ