「中食」の次は「ミールセット」へ…「コンビニグルメ」はさらなる進化を遂げている!

ライフスタイル

 

コンビニに限らず、スーパーやドラッグストアが「中食商品」に力を入れている。その背景にある、生活者の「構造的な変化」を説明したい。

 

 

■消えていく「一家団欒」の時間

 

一つは、「単独化」の進展。2015年の国勢調査によると、一般世帯に占める単独世帯の割合は34.5%で、二人世帯(27.9%)と合わせると62.4%にもなる。単独化によって個食化が進み、食材を買って家で調理する人は減った。食材を使い切れず無駄にすることも多い。また、子供のいる家庭の中でも個食化は進んでいる。子供は塾や部活、父親は遅くまで仕事で、家族で食卓を囲むことが少なくなった。

 

二つ目は、女性の社会参加だ。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査によると、17年には共稼ぎ世帯数(1188万世帯)が専業主婦世帯数(641万世帯)の約1.8倍にのぼった。もちろん主婦も、子どもの世話に、掃除に洗濯に、食事の支度にと忙しい。ロボット掃除機や全自動洗濯機など「時短家電」の流行から、「家事の時間を短くしたい」という現代人の欲求がうかがえる。

 

 

■コンビニが支える中食市場

 

こうした社会の動きは、1990年代中頃のアメリカで広まった「ミール・ソリューション」「ホームミールリプレイスメント」といった動きを彷彿とさせる。

 

ミール・ソリューションは「食材の提供から食事の提供」をコンセプトにアメリカのスーパーで広がった。背景には、”タイムコンシャス”、つまり時間意識の高まりがあった。当時は子持を持つ母親の約70%が働き、そのうち70%はフルタイム勤務といわれ、食事の簡便化、外部化が求められていた。これに呼応するかのように、レストラン業界でも「家庭の食事に取って代わる」という趣旨のホームミールリプレイスメントが広がった。

 

いつの時代も働く女性は「美味しい料理を楽しみたいが、食材を購入して一から作るには時間も無いし疲れすぎている」と思っている。

 

10兆円規模にまで成長した中食市場。その中で今、弁当やFF(ファストフード・フィンガーフード)といったコンビニの商品が存在感を示している。中食市場はコンビニに支えられているのだ。

 

コンビニは “お客様の便利”を追求し、生活者の直面する問題を解決してきた。生活者の変化に敏感なコンビニが、中食商品に注力するのは当然のことだ。

 

 

■中食はコンビニの「キラーコンテンツ」

 

コンビニが取り扱う商品数はスーパーの3割ほどにあたる3000~4000品。「あったら便利」をコンセプトに商品の選択と集中を進めている。しかし、「あったら便利」な商品は滅多に買わない商品でもある。たとえば、コンビニでよく見かける電球やボタン電池、家電小物、靴のクリーナーなどは“緊急商品”で購入頻度は低い。だからこそ、「きっと無いだろうな…」と思っていた商品があると、「コンビニならきっとある」という信頼感が生まれる。

 

一方、弁当やペットボトル飲料などは“日常商品”で購入頻度が高い。コンビニの品揃えは、この緊急商品と日常商品の絶妙なバランスの上に成り立っているのだ。

 

コンビニが弁当やパウチ惣菜、カウンターフードに力を入れる目的は、客の来店頻度を高めることだ。昨今躍進めざましいドラッグストアは、弁当や惣菜、加工食品の品ぞろえを強化し、客の来店頻度を高めている。天候や気温の変化、近隣のイベントを参考に弁当、おにぎり、惣菜などを小まめに発注し、毎日来ても飽きない店作りをしている。

 

ちなみに、中食商品の売上構成比は25%~30%で、日用品より粗利益率が高い。廃棄ロスなどの問題もあるが、中食商品はコンビニのいわば「キラーコンテンツ」で、稼ぎ頭でもあるのだ。

 

 

■スーパーの客を奪うコンビニ

 

コンビニは近頃、加工食品の品ぞろえを充実させている。スーパーの惣菜コーナーでも売れ筋の唐揚げやコロッケがレジ前とずらずらと並ぶ。店内にフライヤーがなかった時代を、一体どれくらいの人が思い出せるだろうか。

 

もちろん、味の面も忘れてはならない。食材の生産者やメーカーとタッグを組んで高品質なPB商品を続々生み出し、高価格帯商品の売上も着実に伸ばしている。コンビニは今後、手に取りやすい価格の商品と、プレミアムなグルメ商品に分かれてくだろう。中長期的には、冷凍食品や配達商品にも力を入れ、スーパーの客を奪っていく。

 

 

■次なる一手は「ミールセット」

 

弁当やカウンターフードで客の来店頻度を高めたコンビニ。しかし、店舗数は全国5万店を超え、地域によっては過当競争気味だ。次なる一手は店を出ることだろう。一つは移動販売。生活インフラともいわれるコンビニが、さまざまな理由で買い物に来られない「買い物弱者」に商品、サービスを届けるのは社会的意義がある。

 

もう一つは、試行を重ねてきた宅配だ。ただ、人手不足の中、店員に配達業務を任せるのは難しい。業者と手を組み、宅配サービスを相次ぎリリースしているが、やはり人手不足感はぬぐい切れない。そこで、ネットで注文した商品を店舗で受け取れる「取り置きサービス」など、ネットとリアルを組み合わせたオムニチャネル化を進めている。

 

今注目すべきは、一人分のカット済み野菜や調味料一式を詰めた「ミールセット」の配達だ。毎日の食事に変化をもたせたい単独世帯や、調理済みを手抜きと感じる主婦に浸透していくだろう。

 

生野菜や肉で料理をしたいが、食材を買う時間はなく、買ったところでどうせ無駄にしてしまう。また、塩、コショウくらいしか家にない――。ミールセットはそんな中食の利用動機を持つ客に支持されるだろう。実際、コンビニだけでなく、スーパーや宅食サービス業者にも広がっている。“時間意識の変化”と“食の簡便化”の流れをうけ、コンビニは「どこにいても利用できる」ようになっていくだろう。

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『月刊コンビニ』編集長

毛利英昭

『月刊コンビニ』編集長。 コンサルティング会社にて16年間にわたり流通システムを担当した後、1998年に独立し株式会社アール・アイ・シー設立。 ITベンダー、流通サービス業界を中心に、業務改善やシステム構築分...

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