「性」が揺らいでいる

人間関係

 

■結婚生活を続けながら、女性とつきあい始めて

 

人間は「男」と「女」しかいないわけではないと、最近つくづく思う。その間にはたくさんのグラデーションがあり、さらに自分を「無性」「中性」と感じている人たちもいるのだ。自分の性が何であるのかを「性自認」、そして誰を対象に恋愛するのかを「性的指向」である。

 

「私は女で男が好きで、とごく当たり前に思っていたんです。でも子どもが生まれて大きくなるにつれ、自分の中に“女らしさ”みたいなものを嫌悪する気持ちが出てきた。私は本来、男性を愛する体質ではないような気もして」

 

スミコさん(40歳)はそう言った。結婚して15年、家庭は大事にしてきたつもりだ。だが常に、自分の中にもやもやした気持ちがあった。

 

「そんなときに知り合ったのが、パート先のエリさん。彼女も結婚しているけど、あるとき私にこっそり『私、あなたのことが好きになっちゃった』って。私も彼女のことが気になってたまらなかったので、一緒に食事に行ってゆっくり話したんです」

 

彼女の言葉や行動に、恋愛感情をもっている自分に気づいたとスミコさんは言う。

 

 

■これも“不倫”なのかもしれない

 

会うたびにスミコさんはエリさんに惹かれていった。だから「今日は夫も子どももいないの。うちに来ない?」と言われたとき、素直に頷いた。その日はちょうどスミコさんの子も合宿中で留守だった。夫はひとりで家でのんびりできてかえってうれしそうだった。

 

「泊まるつもりはなかったんだけど、ふたりで話しながらお酒を飲んでいたら、怪しい雰囲気になっちゃって。エリさんと関係をもちました。私、性的なことにはあまり興味がなかったんだけど、エリさんと触れあっているだけで、それまで感じたことのない興奮と心地よさがあったんですよね」

 

私の居場所はここだった。スミコさんはそう感じたという。自分が男のようにエリさんの体を欲していることにも気づいた。体と心が一致しない理由がわかったという。以来、1年にわたってふたりはつきあい続けている。

 

「本当は彼女と一緒に暮らしたい。でもお互いに子どもがまだ未成年だし、ここは責任をもって子どもが独立するまでは我慢しようということになっています。夫のことは嫌いではないけど、私のパートナーは本来、女性であるべきだったんだと今になってわかったんです」

 

これも不倫なのかもしれないけれど、とスミコさんは小さくつぶやいた。揺れる性の中で、せめてもの「居場所」を、スミコさんは見つけることができたのかもしれない。

 

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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