爆発的なジムニー人気と西日本豪雨の関係性

車・交通

 

スズキの4輪駆動軽自動車ジムニーと小型車登録のジムニーシエラが、かつてないほどの注目を集めている。複数のメディアの記事によると、ジムニーは今注文すると納車まで半年待ち、ジムニーシエラは1年待ちと言われる。

 

これまでの販売台数は月平均で1000台レベルとのことで、新型の目標販売台数は合わせて年間1万6200台と発表していた。生産は日本に限られるし、他車との共通部分が少ないので、この数字だったのだろう。スズキ社内はうれしい悲鳴に包まれているかもしれない。

 

ここまで爆発的な人気を得た理由のひとつとして、西日本豪雨は外せないだろう。新型ジムニー(ジムニーシエラを含む)が発表されたのは7月5日。西日本豪雨で大雨特別警報が発表されたのは次の日なのだから。最終的に警報は11府県に出されるという異常事態になり、死者数が200人を超える大惨事に発展した。

 

あのレベルの洪水に見舞われれば、小さく軽いジムニーは簡単に流される。上から土砂が降ってきたら逃れることはできない。しかし自宅から街中に出る道が土砂で覆われたり、路面が荒れたりして孤立状態になったとき、ジムニーなら行けるかもしれないという場面はありそうな気がする。

 

実際に試さなくても、市販乗用車として世界最高レベルと言われるヘビーデューティ性能が、心理的な安心感をもたらしてくれることは間違いない。しかもジムニーは安い。200万円を超えるのはジムニーシエラの上級グレードのAT車だけで、他はすべて100万円台だ。頑張ればなんとか手が届くレベルにいる。

 

 

■ジムニーにあってGクラスにないもの

 

 

ジムニーが新型に切り替える約1ヶ月前、やはりヘビーデューティな4輪駆動車であるメルセデス・ベンツGクラスがモデルチェンジした。しかし高級SUVだけあって価格は最低でも1500万円以上した。それでも発表当時は一部のクルマ好きが注目をしたけれど、ジムニーの登場で存在が霞んでしまった感は否めない。

 

しかも新型Gクラスは、ボディと別体のラダーフレームを持つことはジムニーと共通していたものの、1979年の登場以来守り抜いてきた前後リジッドのサスペンションのうちフロントを独立懸架に一新し、ステアリングはボール循環式からラック&ピニオン式に変えた。一方のジムニーは従来と同じ構造を受け継いだ。

 

Gクラスの改良は、いずれもオンロードのハンドリングや乗り心地を向上させるためと言われているが、逆に言えばオフロードではリジッドアクスルやボール循環式のほうが有利である。数年前に限定販売されたトヨタ自動車のランドクルーザー70もこの形式だ。ここで悪路走破性にこだわるジムニーの本物感がクローズアップされたような気がする。

 

でももし新型ジムニーのデザインがイマイチだったら、ここまで注目されなかったかもしれない。やはりデザインが魅力的であることが、人気につながっているのではないかと判断している。

 

SUVを含めて、他の多くのクルマが丸くなりつつある中、ジムニーは角にこだわった。先代がSUVの乗用車化という流れに乗る形で丸みを帯びたのに、今回はトレンドに別れを告げ我が道を進んだ。ハスラーの出現でSUVの役割分担ができたこともあるが、このストイックな姿勢が共感を呼んだのだろう。

 

しかも新型のスタイリングは単なる四角四面ではない。全体のフォルムは2代目、フロントグリルの形状や両脇のウインカーは初代を思わせる。グリルやバンパーの下端を斜めにカットした造形は、無味乾燥となりがちな箱型ボディに動きを与えている。インテリアも四角いメーターや太いグリップで信頼感を表現し、ボタンからレバーに戻した4WD切り替えレバーを筆頭として操作系は確実な手法にこだわった。

 

そんな作り手の真摯な思いと、本物を求める時代の空気感が、ジムニー48年の歴史のなかでもっとも近づいた瞬間が、今なのかもしれない。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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