“ブラバン目線”で楽しむ甲子園!──いよいよ開幕、第100回全国高校野球選手権大会

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GQ JAPAN

8月5日(日)から開幕する夏の甲子園。近年、甲子園のアルプススタンドでの応援が盛り上がりを見せているのをご存知だろうか? 記念すべき100回大会の開幕を前に、『高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究』の筆者が、完全吹奏楽目線でブームを解説する。

 

「C」の人文字が名物の智辯和歌山の応援席

 

中高時代、吹奏楽部でコンクールに打ち込んできた筆者は、吹奏楽目線で高校野球を観戦するのが趣味だ。夏は地方大会から球場に足を運び、個性豊かなブラバン応援を楽しんでいる。

 

応援について記事を書くようになり、『高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究』という本にまとめたところ、新聞やテレビ、ラジオなどのメディアから取材が相次ぎ、この数年、応援への注目度が急激に高まっている。応援好きな野球ファンは潜在的にいたのだが、発信する人やメディアがいなかったということであろう。 

 

100回記念大会の今年は、新聞、テレビ、ラジオからさばききれないほどの取材依頼が殺到している。さまざまなメディアで応援特集や特番が組まれるまでになった。

 

だが、筆者はこの春、ブームが本格化していることを実感していた。大阪・フェスティバルホールで高校野球応援曲に特化した「ブラバン! 甲子園ライブ~関西編~」(キョードー大阪主催)が開催され、チケットは即日完売。約2500人の高校野球ファンが集まったのだ。

 

“高校野球ブラバン応援研究家”として活動している筆者は、今センバツで優勝した大阪桐蔭、準優勝の智辯和歌山、天理、智辯、龍谷大平安の出演交渉から、コンサートの構成、さらにMCも担当した。全校の吹奏楽部、応援団にチアリーダーら延べ750人が参加しての合同演奏は圧巻で、「栄冠は君に輝く」や高校野球応援で多くの学校が演奏する「アフリカン・シンフォニー」は、詰めかけた野球ファンを大いに沸かせた。

 

 

 

ブラバン応援にハマった理由

 

 

今でこそ野球応援にハマッている筆者だが、札幌白石高校時代、高校野球の応援経験は一度もない。そもそも応援に行きたくなかったのが本音だ。「暑いなか球場で吹くなんて、楽器が傷む」「コンクール前の大事な時期なのに、野外で吹きまくると唇がバテる」というのが理由だ。

 

なぜここまで野球応援にハマッたのか。それは、5年前の夏、はじめて行った甲子園がきっかけだった。愛工大名電vs聖光学院の試合。高校時代、コンクール常連校だった名電に親近感をもっていたので、同校のアルプスに着席した。

 

「この炎天下のなかでよく吹くなぁ……」「こんなに長時間吹き続けて、唇が痛くならないんだろうか」と、応援に耳を傾けつつの観戦だったが、「野球部のために、よくそこまで一生懸命吹くなぁ……」という思いが正直強かった。

 

名電は4-3で惜しくも一回戦敗退。アルプススタンドでは控えの野球部員が涙を流している。ところが吹奏楽部員も泣きじゃくっているではないか! なかには嗚咽を漏らして号泣し、支えがないと立てなくなる生徒までいる。わたしは衝撃を受けた。

 

「え、野球部が負けて泣くの……?」と。

 

自分の知らない世界が、そこには広がっていた。

 

時には試合の流れを変えることもある吹奏楽部の応援。打席に立つ選手を鼓舞し、チャンス時は球場全体を盛り上げる。「吹奏楽部の応援に力をもらった」という選手の声も筆者はよく耳にした。

 

 

 

ブラバンの力を再認識した事件

 

名物「ワッショイ!」「ファンファーレ」でおなじみの天理高校

 

2年前の夏の甲子園2回戦、八戸学院光星に負けていた東邦が4点差をはね返し、劇的なサヨナラ勝ちを収めた試合は、応援が物議を醸した。

 

東邦吹奏楽部の演奏に合わせて観客が手拍子をし、勢いよくタオルを回す。そのうねりは、東邦アルプスから球場全体にまで広がり、八戸学院光星はこのムードに飲み込まれてしまう。その結果が大勢の観客を巻き込んでの逆転劇につながったという試合だ。敗者の「全員が敵に思えた」というコメントも話題になった。

 

自然発生とはいえ、「あの異様な雰囲気に違和感を覚えた」という野球ファンも多く、応援は物議を醸すこととなったが、「音楽にこんな力があったのか」と衝撃を受けた。

 

球場で吹奏楽部の生徒たちを見ていると、彼ら彼女らもまた、懸命にプレーする野球部から刺激を受け、力をもらっている。全力で試合を戦い、勝ったら「次もがんばって応援しよう」。負けたら「次はわたしたちがコンクールでがんばる」といった具合だ。「負けたのは自分たちの応援が足りなかったせい」とまで言う、コンクールよりも野球応援を優先する吹奏楽部顧問もいる。

 

応援への注目が高まるにつれ、定番曲をやめ、「自分たちだけのオリジナリティを」と応援曲を一新する学校も増えてきた。

 

今夏の全国高等学校野球選手権は、第100回の記念大会だ。高校野球がさらに盛り上がることは確実。野球部とともに戦うアルプススタンドの生徒たちにも、ぜひ注目してみてほしい。

 

 

『高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究』(文春文庫)

本体690円+税(7/10発売)

 

甲子園には魔物が棲む──。応援には魔曲がある! 高校野球が100倍面白くなる、世界初の甲子園「ブラバン応援」研究本を、新ネタ大増量で文庫化。PL学園、大阪桐蔭、智弁和歌山、天理、日大三、習志野、駒澤苫小牧など、完全吹奏楽目線で名門高校の顧問の先生やOBに直接取材を重ねた、トリビア満載&マニア垂涎の1冊。あなたも実況中継を爆音で聴きたくなる!

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167911119

 

文:梅津有希子

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