「私こそ生産性のない人間ですよね」…子どものいない専業主婦の哀しみ

人間関係

 

■すぐに子どもに恵まれると思って

 

ヒカリさん(47歳)が結婚したのは27歳のとき。社内結婚だったため、ヒカリさんは退職した。

 

「結婚すればすぐ子どもができると思っていたんですよね。それに当時は社内結婚の場合、暗黙の了解で女性がやめるのが当然という雰囲気だったし。ところが3年たっても4年たっても子どもに恵まれない。夫婦で病院にも行きましたが原因は不明。夫は『ずっと恋人みたいでいいじゃないか』と言ったけど、彼はどんどん仕事が忙しくなって出張も増えていった。私はずっとひとりなんです」

 

女性の社会進出も進み、同時に夫だけの経済力では家庭を切り盛りできなくなっていったため専業主婦たちも続々と働きに出るようになった。

 

「うちはたまたま恵まれていて、夫の親が持っていた家を譲ってもらったので家賃もかからない。しかもふたり暮らしだし、夫は平日はほとんど家で食事をしませんから、それほどお金を使わずに暮らせる。パートに出なくてもやっていけてしまう。週に2回ほど習いごとをしていましたが、家族の話をする女性たちの輪にはあまり入れませんでした」

 

40歳のとき、捨て犬を拾った。それ以来、少し気が紛れるようになったが、今でも1日、誰とも口をきかないことがあるという。

 

「私こそ生産性のない人間ですよね。最近、更年期も入ってきて、うつ状態になることが多くて」

 

ヒカリさんは暗い表情でそう言った。

 

 

■親の介護で忙しいけれど

 

もうひとり、子どものいない専業主婦であるユウコさん(43歳)は、最近、親の介護に忙しい。

 

「1時間かかる実家に毎日通っています。父が倒れて、その介護をしていた母も弱ってきたので。私はひとりっ子で子どもがいないから、うちの家系は途絶えてしまうんだなと考えると、なんだかとても悲しい。親が亡くなったら、私はひとりぼっちなんだなと思うんです」

 

夫はユウコさんにとっては、あくまでも“他人”。仲が悪いわけではないが、「夫婦は子どもがいて初めて家族としてつながることができるんじゃないかしら」と話す。

 

「今は無理ですが、介護にめどがついたら里親になるのもいいかなと思って、いろいろ調べています。このままだと私の人生は何のためにあったかわからない。そんなふうに追いつめられて」

 

自身の人生の意味を見いだすために里親制度があるわけではない。あくまでも家庭のぬくもりを知らない子どものための制度なのだから。

 

子どもがいない、経済活動としての仕事もしていないと「ない」ことばかりに目が向いてしまのはやむを得ないのかもしれない。だが、人は生きているだけで、存在しているだけでいいという考え方もある。「生産性」という言葉に女性自らが翻弄されていては、自分の人生を楽しむことができなくなるのではないだろうか。

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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