マドンナ(60)も言及「最近の音楽がすべて同じに聴こえる」のはなぜか

エンタメ

 

マドンナがイタリア版『VOGUE』8月号のインタビューで「最近の音楽がすべて同じに聴こえる」という旨の発言をして話題になった。

 

マドンナは現在60歳。1982年のデビューから今に至るまで数々の世界的ヒットを生み出し、現在もけっしてお世辞ではなく音楽シーンの第一線で活躍するアーティストだ。抜群のセルフプロデュース力があり、音楽やミュージシャンについて客観的に判断する才能は人並外れている。そんな彼女が漏らした本音は“現在の音楽シーンが抱える問題”をよく捉えているなと感じた。

 

 

■音楽関係者らが感じている“現在の音楽シーンが抱える問題”とは

 

僕も最近の音楽はつまらないと感じているタイプの人間だ。主観的な表現をすれば「聴け!」と言わんばかりに強圧的で独りよがりな音楽ばかり。1990年代以降、それまでの作品にあった商業性とアーティスト性のほどよいバランスは失われる一方だ。

 

歳を重ねると、過去の記憶が美化される現象はたしかにあるし「昔の音楽も同じように聴こえるじゃないか」という意見もあるだろう。しかし、以前『最近の曲がヒットしない原因は「歌詞の文字数」!? 往年のポップスと比較してみると…』という記事でも書かせてもらったが、音楽は時代と共に明らかに大勢に支持されにくいものへと変質してしまっている。

 

最近の音楽は邦楽、洋楽を問わずに歌詞の文字数、BPM(テンポ)、音圧などすべての要素がインフレしきっているのだ。もはや覚えきれないほどに歌詞が長ったらしく、リズムばかりが主張し、元の声や音色がわからないほどやかましい。

 

【上】ザ・ピーナッツ『恋のバカンス』(1963年)、【中】松田聖子『夏の扉』(1981年)、【下】AKB48『恋するフォーチュンクッキー』(2013年)の音圧を比較するとこうなる

「歌詞は文字数が多いほどいいんだ!」「うるさい音最高!」とかいう信念があってやっているのならまだいいが、大半のアーティストやエンジニアはなんとなく流行に流されてやっているにすぎないだろう。詞というものへの無知と「去年より速く、大音量に」という意味のない競争に巻き込まれ、本当に良い音楽は何かという視点を失っているのだ。結果として生まれるのは、個性のない“同じような音楽”である。

 

 

■音楽の進化は行きつくところまで行ってしまった

 

今から50年前……1960年代はベンチャーズやビートルズ、ジェームス・ブラウンあたりが最先端のダンスミュージックだった。ビートルズと言われても、若い人にとっては「びっくりドンキーで延々とかかってるアレか」くらいにしか思わないかもしれないが、特定のジャンルにしか興味がないようなリスナーはともかく、偏見なく音楽が好きな人ならばきっとその良さを感じられるはずだ。

 

今から30年前……1980年代はMTVの流行とともにマイケル・ジャクソンやプリンス、デュラン・デュラン、そしてマドンナらがそれぞれの個性を発揮して現代の音楽シーンのフォーマットを作り上げた。2010年代に彼らの作品に触れ、直接影響を受けている若い人も数多い。

 

今から20年前……2000年頃には安室奈美恵やモーニング娘。が登場し、1980年代の松田聖子らが築いたアイドルシーンとは別次元のカテゴリを確立。日本のアイドル音楽と文化的土壌はこれ以上ない完成の域に達した。

 

このようにこの50年のあいだに世界では“2018年の現代でもぜんぜん聴ける”名アーティストが数多く登場し、同時に楽器や機材も大きく発達した。iTunesのライブラリには文句のつけようのない過去の名曲がずらりと並んでいるし、目の前で演奏しているかのような音質を楽しむことができる。

 

僕は音楽の文化的・技術的な進化はもはや行きつくところまで行ってしまったと感じている。批判はしたものの若いアーティストにとって創作が難しい時代であることは確かだ。トレンドの“パワー勝負”に迎合するのは無理もないことなのかもしれない。

 

 

■音楽に「これ以上」を求めず「これから」を求める

 

ではどうすればいいのか。それはリスナーが音楽に何を求めているのかということの再考察だと思う。そんなに難しいことではない。今求められているのは、21世紀に生きる人間としての気付きやメッセージ性の伝わる音楽、アーティストの人間的魅力が伝わる音楽だ。

 

歌詞はもっとシンプルでいいし、アレンジや構成も心地よければオールディーの模倣で構わない。ただ、21世紀だからこその愛の形や満たされない気持ち、矛盾、悲しみの表現を追求するのだ。それこそマドンナが口にしたように「音楽がすべて同じに聴こえる」というフラストレーションを表現してみるなんてのも、現代的じゃないか。

 

アーティストやエンジニアはむやみに新しくあろうという姿勢を見直す時期に来ている。流行の追求がもたらすのは均質化であって真の新しさではない。温故知新というと堅苦しく聞こえるかもしれないが、物事の根本を知り、これからの音楽がどうあるべきか考えられる人が一人でも増えることを願っている。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

シンガーソングライター/音楽評論家

中将タカノリ

シンガーソングライター、音楽評論家。2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。深い文学性と、歌謡曲、アメリカンポップスをフィーチャーした音楽性で独自の世界観を構築している...

中将タカノリのプロフィール&記事一覧
ページトップ