【今週の大人センテンス】アッパレ! 小泉今日子の「反アンチエイジング」発言

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巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第27回 蔓延する「若さ信仰」への疑問と反発

 

「はい。これは抵抗しなきゃと。私は『中年の星』でいいんじゃないかと思ってます」by小泉今日子

 

【センテンスの生い立ち】

 

今年50歳を迎えた小泉今日子。雑誌「GLOW」(宝島社)で連載している「小泉放談」の9月号のゲストは、日本のフェミニズムシーンを牽引してきた上野千鶴子。「アンチエイジングって言葉が、大嫌いなんです」という上野の言葉に「私もです」と答えるなど、女性を支配している「若さ信仰」に異を唱えた。毎日新聞が9月26日付の紙面で、その発言に共感する声が広がっているという記事を掲載。あらためて小泉の主張に注目が集まった。

 

【3つの大人ポイント】

 

・自分の年齢を受け入れる大切さとカッコよさを提示している

・それでいて、美しくあることを否定しているわけではない

・女性だけでなく男性にも反省のきっかけを与えてくれている

 

 

「男は、どうせ若い子が好きなんでしょ」「あたしなんてもうオバサンだから」といったセリフを何の引っかかりもなく口にできるタイプの方は、話題になっている小泉今日子の一連の発言にさぞやカチンと来たかと存じます。「キョンキョンだからそんなこと言えるのよ!」と思ったとしたら、自覚がないまま「若さ信仰」に縛られていて、若さへの不必要なコンプレックスに支配されていることを警戒したほうがいいでしょう。

 

16歳でデビューし、今年で50歳になった小泉今日子は、今の日本における「美しく年を重ねている女性」の代表選手と言える存在です。そんな彼女が、女性誌で「アンチエイジング」や「美魔女」に対する違和感をキッパリと表明しました。掲載された号が発売されたのは2ヶ月ほど前ですが、9月26日付の毎日新聞が発言への反響の大きさを記事にしたことをきっかけに、ネット上で「さすが小泉今日子!」という称賛の声が巻き起こっています。

 

「アンチエイジング」大嫌い! 小泉今日子さんらの発言に共感の輪(9月26日付「毎日新聞夕刊」)

 

 

発言が飛び出したのは、雑誌「GLOW」9月号に掲載された上野千鶴子との対談の中。歳を取るのはけっして悪いことじゃないという話の流れで、こんなやり取りがなされます。

 

上野 だから私、アンチエイジングって言葉が大嫌いなんです。

小泉 私もです。ずっとアイドルの仕事をしてきて、30代半ばくらいから「かわいい!」って言われる中に「若い!」という声が入ってくるようになって。これ違くない? 喜んじゃいけないんじゃない?って。

上野 「美魔女」とかに出てこられるとね。

小泉 はい。これは抵抗しなきゃと。私は「中年の星」でいいんじゃないかと思ってます。

 

自分を「中年」と定義しつつ、世の中に蔓延する「若いほうが価値がある」「若さに執着することが女の務め」といった風潮に反発し、自分の年齢を受け入れる大切さとカッコよさを提示してくれています。そんな風潮に違和感や反発を覚えていた人は多かったようで、毎日新聞だけでなく女性誌などでも、この発言が肯定的に取り上げられました。

 

男性としても「どうせ若い子が好きなんでしょ」と決めつけられるのは、けっこう不愉快です。「若さ」はたしかに素敵な要素ですけど、男性や女性の魅力のうちのひとつに過ぎません。「どうせ若い子が~」と言われると、女性に対して「若さ」という魅力しか求めていない単純で鈍感な男扱いされているみたいだし、何より言っている当人の姑息な言い訳がましさを感じます。あなたがイマイチ魅力的じゃない原因は、若さが減ったからじゃなくて、若さだけが女性の価値だと思っている浅はかさにあるんじゃないでしょうか。

 

「美魔女」も、目指してらっしゃる当人はどう認識しているかはわかりませんけど、たいていの場合「たぶん○歳ぐらいだろうけど、年齢より若く見えるな」とは思っても、推測の実年齢はだいたい当たります。「えっ、ほんとに50代!」と本気で意表を突かれるケースはまずありません。無理の仕方によっては「ああ、そんなに無理して若く見せようとしないほうがきれいなのに」と、僭越ながら残念に感じることもあります。

 

きっと小泉今日子は「歳を重ねたら見かけに気を使わなくてもいい」と言っているわけではありません。「美しい人であること」は、いくつになっても大事です。ただ、その美しさは「若さ」という期間限定の特権に頼ったものではなく、年齢とともに積み重ねられた自分独自の魅力によって醸し出されるもの。「若さ」と違って誰にでも平等に与えられるものではないだけに、なかなか厳しい世界です。とはいえ、魅力の種類は無数にあるので、そこでうっかり「定番の美しさ」や「流行りの美しさ」を求めてしまう必要はありません。

 

小泉今日子の発言は、女性はもちろん男性にも、知らず知らずのうちに「若さ信仰」に縛られているのではないか……という反省のきっかけを与えてくれました。けっこういい歳の女性のみなさんが、無理なアンチエイジングに血道を上げるのではなく、遠回りではあるけど着実な方向で「その年齢だからこその魅力や美しさ」を求めていただけたら、男性としてもとても幸せです。若さしか武器がない小娘なんて、みなさんの敵ではありません。

 

それはそれとして、私は今、胸に手を当てて自分に問いかけています。いや、個人的な事情なんですけど、日頃、たとえば40代後半ぐらいの女性が「今の仕事を始めて20年ぐらいです」と言ったら、すかさず「ということは、15歳ぐらいからやってらっしゃるんですね」と返しています。「そんなわけないだろ」という突っ込み前提で露骨に若い方向に間違えるのは、「若さ信仰」に乗っかって、しかも助長する行為ではないのか。今まで小泉今日子の発言の素晴らしさを書いてきましたが、それとまるっきり矛盾するのではないか。

 

いや、そうではないと言わせてください。露骨に若い方向に間違えるという「ボケ」をかますのは、世に蔓延する「若さ信仰」への皮肉であり、言われた側の女性といっしょにその無意味さを笑おうという試みに他なりません。言われた側が、瞬時に意図を察知して「あらまあ、よくわかったわね」とニッコリ笑ってくれて、初めてこの「ボケ」が成立します。これぞ大人の阿吽の呼吸。フェミニズムが日本で今ひとつ浸透しないのは、微妙なニュアンスを汲み取った上での大人のシャレっ気が欠けているからではないかと愚行いたします。

 

まあ、意図が通じなくて「バカにしてるの?」とムッとされるケースも少なくありません。過去の経験だと35歳以下の女性に言ってしまうと、「なにその見え透いたお世辞」と言いたげな呆れ方をされがちです。お世辞と言えばお世辞ですが、そうじゃないのに……。さまざまなリスクを抱えつつ、それも含めて「若さ信仰」への果敢な挑戦ということで、これからもがんばります。誰に向かって何のために決意しているのか、よくわかりませんけど。

 

 

【今週の大人の教訓】

 

「若さの残り香」だけに頼っていたら、確実に先細る一方である

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石原壮一郎

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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