【中年名車図鑑|初代ホンダ・レジェンド】80年代後半、F-1で活躍するホンダが作り上げた“伝説”

車・交通

大貫直次郎

東京の南青山に新しい本社ビルが完成した1985年、本田技研工業は設定車種の拡大を目指して2台の重要なニューモデルを発表する。1台は約11年ぶりの新型軽自動車となる「トゥデイ」。そしてもう1台が、フラッグシップに位置する高級乗用車の「レジェンド」だった──。今回は“静かなる走りの余韻”を謳ってデビューしたHONDAブランド初のアッパーミドルサルーン、初代レジェンド(1985~1990年)の話題で一席。

 


【Vol.88 初代ホンダ・レジェンド】


本田技研工業は1979年12月に英国の自動車メーカーのブリティッシュ・レイランド(BL。後のローバー・グループ)社と技術および業務提携を結ぶ。最大の目的は、欧州における4輪車の生産と物流拠点の構築にあった。さらに、1980年代に入ると提携関係はいっそう発展。ホンダ車のライセンス生産技術供与(ホンダ・バラードをトライアンフ・アクレイムとして生産)や新型車の共同開発などを締結していった。

 

 

■高級乗用車を英国BLと共同開発

 

1985年にデビューした初代レジェンド。のちにローバー・グループとなるブリティッシュ・レイランド社との共同開発で生まれた


新型車のメインプロジェクトとしては、2社による高級乗用車の開発が鋭意推し進められる。ホンダとしては初のエグゼクティブカー、BLとしてはローバーSD1の後継モデルとなる新しい高級サルーンは、開発コンセプトに「第一級のポテンシャルと、人間感覚を包み込んだ快適さの実現」を標榜。これを達成するために、最新技術の導入はもちろんのこと“高級とは何か”という概念を徹底して練り込んだ。


パワートレインについては、既存の開発ノウハウを活かせることから、当時の高級車としては珍しいFF(フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトを採用する。プラットフォームおよび前ダブルウィッシュボーン/後RF(リデュースト・フリクション)ストラットのシャシーは新設計で、ホイールベースは2760mmと長く設定した。肝心の動力源には、新開発の1カム4バルブヘッドのV6エンジンを横置きで搭載する。高剛性のアルミシリンダーブロックに90度のバンク角を採用したV6ユニットは、ボア×ストロークが84.0×75.0mmの2493ccと同82.0×63.0mmの1996ccという2種類を設定。機構面に関しては、スイングアーム方式のハイ・バルブリフト設計にハイドロリック・ラッシュ・アジャスター付きの1カム4バルブ、30度のオフセットピン・クランクシャフト(各気筒の爆発間隔は120度位相の等間隔)、専用セッティングのPGM-FI、等長タイプのエグゾーストシステム、複合制御式の吸気システム(1996ccのみ)、アルミ製のインテークマニホールドカバーとエアクリーナーケース、2重構造のエグゾーストマニホールドカバーなどを組み込んだ。さらに、カムシャフトには特殊合金処理を、ピストンにはモリブデンコーティングを施し、信頼性の向上を達成する。完成したユニットは2493cc・V型6気筒OHC24VがC25A(165ps)、1996cc・V型6気筒OHC24VがC20A(145ps)の型式を名乗り、トランスミッションは2エンジンともに5速MTと4速ATを設定した。

 

ボディサイズは全長4810×全幅1735×全高1390mm。低ボンネット、ロングホイールベースが作り出す上質な台形フォルムが特長


高剛性モノコックボディの4ドアセダンで仕立てたエクステリアについては、ロー&ワイドで低ボンネット、ロングホイールベースが作り出す上質な台形フォルムを基本に、大きく傾斜したフロントウィンドウやラップラウンド化したサイド&リアウィンドウ、ボディとガラス面との段差3mmのフラッシュサーフェス形状、アンダーフロアのフラット化などを採用して最上レベルの空力ボディ(Cd値0.32)を構築する。ボディサイズはC25Aエンジン搭載車が専用バンパーやサイドモールを装備して全長4810×全幅1735×全高1390mmの3ナンバーサイズ、C20Aエンジン搭載車が同4690×1695×1390mmの5ナンバーサイズに設定。ボディ塗装には4コート・4ベースを取り入れた。一方で内包するインテリアは、高水準の静粛設計や三層圧空成形により静かで快適な居住空間を実現。また、傾斜角をもたせたうえでラップラウンド形状としたインパネや着座フィーリングに優れた100%ウールモケット表地のスプリングシートなど、高級車にふさわしいアイテムも豊富に盛り込む。FFレイアウトを採用した効果で、トランクルームは470l(VDA方式)の大容量を確保した。

 

 

■「高級車の歴史に新しい“伝説”をもたらすクルマ」の登場

 

当時の高級車としては珍しいFFレイアウトを採用。エンジンは2493cc・V6と1996cc・V6の2タイプ。トランスミッションは2エンジンとも5速MTと4速ATを組み合わせる


HONDAブランドの最高級サルーンは、東京都港区南青山に新しい本社ビルが完成した2カ月後の1985年10月に市場デビューを果たす。車名は英語で“伝説”を意味する「レジェンド(LEGEND)」。ホンダのクルマ造りに、そして高級車の歴史に新しい伝説をもたらすクルマであることを目指して命名していた。グレード展開は2.5 V6 Xi(KA2型)と2.0 V6 GiおよびZi(KA1型)の計3タイプで構成する。ちなみに、レジェンドは米国市場では新設のACURA(アキュラ)ブランドで販売。BL版は「ローバー800」シリーズとして1986年7月に発売された。


BLから学んだ高級車らしい足回りのセッティングや木目パネルの演出など、どこなく英国製サルーンの雰囲気を漂わせたレジェンドは、従来のホンダ・ファンの枠を超えた新規ユーザーを獲得する。また、F-1での活躍もいい宣伝材料となり、順調に販売台数を伸ばしていった。

 

 

■独自開発の2ドアハードトップの追加

 

高水準の静粛設計で快適な居住空間を実現。着座フィーリングに優れた100%ウールモケット表地のスプリングシートなど、高級車にふさわしいアイテムも豊富に盛り込む


1987年2月になると、レジェンドに新しいボディタイプが追加される。ホイールベースを2705mmと短縮したうえで、ボディサイズを全長4775×全幅1745×全高1370mmの3ナンバー規格とした2ドアハードトップ(KA3型)を設定したのだ。“真の豊かさの追求”そして“感覚性能の実現”を目指して生み出された内蔵式センターピラー付きのサッシュレス2ドアハードトップは、パワートレインに新開発のC27A型2675cc・V型6気筒OHC24Vエンジン(180ps)+フル電子制御(PGM)2WAY4速AT(デュアルモード・ロックアップ付)を搭載。懸架機構には4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを新採用する。豊かさの演出として、天童木工製の本木目コンソールや本革シートなども設定した。また、同年9月になると4ドアセダンにもC27Aエンジンを搭載。さらに、国産車で初めて運転席SRSエアバッグを標準装備した新設定グレードのエクスクルーシブをラインアップした。


レジェンドの進化は、まだまだ続く。1988年10月には“走りのプレステージ”を謳ったマイナーチェンジを実施。内外装の一部変更や4ドアセダンのリアサスペンションのダブルウィッシュボーン化、可変ウィングターボを組み込んだC20A 型1996cc・V型6気筒OHC24Vターボエンジン(190ps)の設定などを行う。そして1989年7月の一部改良では、FF車としては世界初のTCS(トラクションコントロールシステム)を搭載した仕様を発売した。


ホンダのF-1での大活躍、さらには日本でのハイソカー・ブームの追い風もあって、レジェンドは堅調な販売成績を記録。また、米国市場ではとくに2ドアハードトップが高い人気を博した。HONDAブランド初の本格的な高級サルーンとして、オリジナリティあふれる車両コンセプトと数々の最新技術を盛り込んだ“伝説”。その開発姿勢は、1990年10月デビューの第2世代にもしっかりと受け継がれたのである。
 

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

大貫直次郎のプロフィール&記事一覧
ページトップ