トロロッソと組んだホンダF1。鈴鹿のホームレースをどう戦ったのか?

車・交通

 

トロロッソ・ホンダになって最初のF1日本GP(10月7日決勝)を迎えた。トロロッソSTR13をドライブするピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーのたっての希望で、日本GPの舞台となる鈴鹿サーキット(三重県)に入る前に、ふたりのドライバーとチーム代表のフランツ・トストは、パワーユニットの開発拠点であるHRD SAKURA(栃木県さくら市)を訪問した。


SAKURAの次は本田技術研究所・四輪R&Dセンター(通称HGT。栃木県芳賀郡)を訪れた。HGTの研究棟は長大で、端から端まで歩くと約1kmにもなる。中央部分でトークセッションを行ったとはいえ、ガスリーとハートレーは1kmを歩いて従業員の熱い声援を受け止めた。


「真ん中あたりでドライバーのトークセッションがありました。Q&Aもあって結構時間をかけたので、反対側の人はもう持ち場に帰っているかと思ったら、みんな仕事をしないで待ってました(笑)」


同行した田辺豊治Honda F1テクニカルディレクターはそう説明した。ドライバーはHRD SAKURAでもHGTでも歓待ぶりに驚いた様子で、「ロックスターになったみたいだ」と感想を漏らしたという。

 

ドライバーのガスリー(上)とハートレー(下)はサーキットに入る前に、ホンダの研究所、開発拠点を訪れた


翌3日水曜日は四輪R&Dセンター(和光)を訪れ、従業員と一緒にランチを食べたりした。その翌日(4日木曜日)は鈴鹿(三重県)に移動。本田技研工業・鈴鹿製作所を訪れた。あるQ&Aセッションでは、「ホンダの将来に何を期待していますか?」というマジメな(?)質問も飛んだ。この質問に、フランツ・トストは次のように答えた。


「ホンダはF1をやっています。MotoGPもやっている。4輪事業、2輪事業、パワープロダクトにジェット。いろんなことを幅広くやっている企業なので、そこから将来的に新しい技術が出てくるのを期待しています」


イタリアに本拠を置くトロロッソにしてみれば、日本人と働くこと自体が初めての経験だった。だから、初めて仕事をする相手を深く理解しようとした。その真面目で勤勉な姿勢がホンダ側に痛いほど伝わってきた。


「日本人のことを知ろうとしてくれています」と田辺テクニカルディレクターは言った。「そして、ホンダという会社を受け入れようとしてくれている。日本GPに関しては自分たちのホームレースのような気持ちで、チーム代表やドライバー、エンジニア、メカニックが来てくれています。前戦ロシアの後半くらいから気持ちが盛り上がりはじめ、和気あいあいとしたムードで鈴鹿にやってきました」

 

 

 

■イタリアのトロロッソにとっても鈴鹿はホーム

 

トロロッソ・ホンダとして初の日本GP。鈴鹿のファンの期待は高かった


鈴鹿サーキットに初めて挑むハートレーは木曜日の午前中にコースの下見を済ませておきたいところだったが、鈴鹿製作所の訪問を優先したため機会を失ってしまった。だが、2~3周も走れば攻略してしまうのがF1ドライバーというものである。ガスリーにトラブルが発生してスムーズにセッティングができなかったこともあるが、ハートレーは金曜日のフリー走行2回目を10番手の好位置で終えた。ガスリーは13番手だった。


予選は2台とも好調だった。出走20台中、上位10台が進出するQ3に2台が進んだ。第12戦ハンガリーGP以来の出来事で、2015年にF1に復帰してからホームレースで2台がQ3に駒を進めるのは初めてだった。Q3ではハートレーが6番手、ガスリーが7番手となった。セッション後半に強く降り始めた雨に助けられた格好とはいえ、今季最高の成績である。ホームレースに臨むホンダにとって上々の出来だった。


ホンダは燃焼室設計の変更などで燃焼が良くなった(ということは燃焼効率も上がり、出力も向上しているはず)アップデート版のパワーユニット、通称「スペック3」を鈴鹿に持ち込んでいた。前戦ロシアGPに投入したものの、金曜日に走った段階で「もう少し煮詰めたい部分が顕在化した」(田辺)ためにそれ以降のセッションは旧スペックに戻して走り、煮詰めを行ってホームレースを迎えていた。


「我々のホームレースで今年最高の予選結果を出せたことは非常によろこばしい」と語った田辺テクニカルディレクターだったが、レース後は「6番手、7番手の予選結果をレース結果に結びつけられず、非常に残念」と肩を落とした。ふたりのドライバーともポイントが与えられる10位以内でフィニッシュできず、ガスリーは11位、ハートレーは13位だった。

 

ホームレースでの予選は2台とも好調だったが…


スペック3は不発だったのかというと、複雑なところだ。「パワーユニットのパフォーマンスが明らかに上がっているのは確認できた」が、「最適な状況ですべてのレースラップを走ることができなかった」のが、残念な結果に終わった理由のひとつだった。とくにガスリーに関しては、トラブルによって予定どおりに走れなかったのが響いた。いったんはルール統括側に認められたガスリー車の制御データのセット変更を、スターティンググリッド上で「だめ。元に戻せ」と指示されたのも痛かった。


「当然、フラストレーションが溜まる結果ですが」と話したうえで、田辺テクニカルディレクターはつづけた。


「落ち込んでいても仕方ないので、『次、頑張ろう』と話しています。この先も開発をつづけていくだけです。鈴鹿は我々のホームレースですので、昔から一段と背筋が伸びるところです。そんななか、暖かく応援していただいたことに大変感謝すると同時に、勇気をもらいました。期待に応える2台入賞はできませんでしたが、オーバーテイクをお見せすることはできたので、よろこんでいただけたら幸いです。また来年帰ってきますので、引きつづき応援をお願いしたいと思います」


金曜日の夜はトロロッソのガレージ前に山のように人が詰めかけ、メカニックの作業を見守った。メカニックはその状況に驚くと同時に非常によろこんだという。ホームレースがあるというのは、参戦する側にとっても、応援する側にとってもいいものだ。

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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