生産台数1億台突破!世界の経済は“カブ”で回る【ニッポン発の傑作モノ】

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1958生まれのスーパーカブは、今年で60周年。人に当てはめればもう還暦だが、ラインナップを増やすなど、アクセルをゆるめる気配はまったくない。登場から現在までの主要モデルを振り返るとともに、現在購入できる最新のスーパーカブを紹介しよう。

 

 

■HISTORY OF SUPER CUB

 

<1962年>「HONDA CA100」

 

 

明るい紅白カラーと2人乗り仕様で、アメリカでもブームを巻き起こした輸出専用車。

 

 

<1966>「SUPER CUB C50」

 

 

さらなる耐久性と動力性能、メンテナンスフリーを追求し、エンジンをOHV→OHC化。

 

 

<1971>「SUPER CUB DX」

 

 

高度経済成長期に、市場が求めたデラックス版。メタリックカラーでシートにも柄を追加。

 

 

<1978>「SUPER CUB C50」

 

 

早朝の新聞や牛乳配達、深夜の電報配達でも苦情が出ないよう排気音がより静かになった。

 

 

<1981>「CT110」

 

 

“ハンターカブ”の愛称でマニア垂涎。増量タンクや浅い水辺も走れるアップマフラーを装備。

 

 

<1983>「SUPER CUB 50 SUPER CUSTOM」

 

 

副吸気回路の新採用によって、リッターあたり180kmという驚異的な超低燃費を実現。

 

 

<1988>「PRESS CUB」

 

 

新聞配達などの業務用に特化。発進&停止のしやすい3速ミッションとし、スタンドも大型化。

 

 

<1997>「LITTLE CUB」

 

 

14インチホイールでシートを低くし、明るいカラーでファッショナブルに。女性にも人気。

 

 

<1998>「C100 BIZ」

 

 

派手なカラーでブラジル進出。シート部に収納を設けるなど、ニーズに合わせた仕様に。

 

 

<2003>「WAVE125」

 

 

タイ生産で、人気の秘密はスクーターっぽいスタイル。実用性も重要で前にはカゴを装備。

 

 

<2013>「CROSS CUB」

 

 

悪路も走れるハンターカブをオマージュし、現代風にアレンジ。ストリートにも映える。

 

 

■日本の経済を成長させ海外でも大活躍!

 

日本はもちろんアジア、欧米、欧州など世界の約8割の国で販売されるホンダの「スーパーカブ」は、流通面において50年以上に渡り世界経済を支え続けてきた。そんな“エポックメイキング”はいかにして生まれ、なぜ世界の人々に支持されたのか、あらためてその偉業を振り返ろう。

 

▲「今秋発売」と予告宣伝を、1958年7月3日の朝日新聞に掲載。エンジン性能やスタイルについて述べられているが、最大のセールスポイントは「片手運転」できること!?

 

ホンダ「スーパーカブ」。その姿はあまりにも身近で、我々の暮らしにすっかり溶け込んでいる。それだけにあまり意識することはないが、この原動機付自転車は、庶民の生活に寄り添って大ヒットし、日本の高度経済成長の立役者となった乗り物だ。誕生は60年も前のことで、生産累計台数は昨年1億台を超えた。成功は日本にとどまらず海を越え、160カ国以上に販売している。

 

モノが良いのはもちろんだが、国内市場においては、販売網の早期獲得もヒット要因のひとつだろう。1952年にスーパーカブの前身となるF型カブを開発した本田宗一郎氏は、全国5万の“自転車店”に熱のこもった手書きの手紙を送り、良品を収めることで信頼を得ていった。また宣伝も斬新で、発売前から新聞に広告を出し、発売後も「ソバも元気だ、おっかさん」のキャッチコピーで雑誌を賑わした。

 

 

これは東京へ蕎麦修業にきている若者が、実家の母親へ報告の手紙と写真を送り、母親がそれを見ているという想定。手紙には「この店にはスーパーカブがあるのが魅力です。出前迅速、ソバはノビないとあって、お得意さんはガ然ふえました。片手運転もOKの素晴しい性能、ボクだって働きがいがあります」とあり、おもしろおかしく、しかし的確にスーパーカブの魅力を伝えている。

 

国内に加え海外での成功においては、「操作性」「積載性」「走破性」「燃費」「耐久性」という5つのキーワードが挙げられる。通常バイクの左側グリップ部にはクラッチレバーがあるが、スーパーカブにはない。それは本田宗一郎氏が「蕎麦屋の出前が “おかもち”を持ったまま乗れるように」という要望によるもの。その実現のために左足のペダルだけで変速を可能とする自動遠心クラッチを開発。これにより左手はフリーとなり、難しい操作は不要となった。

 

▲本田宗一郎氏(写真中央)とホンダ開発陣。スーパーカブを企業の底辺を支える大量生産モデルとし、世界に普及させる想いは開発当初からあったという

 

先のキャッチコピーに“片手運転もOK”とあるのはそのためだ。昭和30年代の日本や新興国では、免許のない子供が運転したという逸話が残っているほどで、たとえバイクであっても自転車感覚で乗れるほどイージーな存在だったのだ。

 

積載性に関しては、シート後方に大きなキャリアを備えていた。アジア諸国では子供と大きな荷物を載せて走っている姿は一般的で、しかもそこそこのスピードで走っている。当然道路はアスファルトばかりではないが、スーパーカブは走破性に優れる17インチを採用。そのため悪路も難なくこなし、それでいて燃費が良いのも特徴だった。

 

発売当時、小排気量車はパワーの出やすいストロークエンジンが有利だったが、煙が出て飲食店の配達に向かず、排気がクリーンでないと女性に嫌われてしまうと、4ストロークエンジンにこだわった。これが優れた燃費性能やタフさを生み、1983年には前人未踏の180km/Lという驚異的な数値を実現したのだ。

 

▲1971年、ホンダの二輪車生産が1000万台を突破。節目ごとに本田宗一郎氏は式典を開いてきた。笑みを浮かべて跨がるのは、もちろんスーパーカブ

 

タフという点では、「オイルが入っていなくても壊れない」という都市伝説も存在する。実はコレ、あながち冗談でもなく、オイル交換を依頼されたバイク店が、入っているオイルを抜こうしたところ、一滴も出てこなかったという話もあるほど。さらにガソリンの質は世界中で異なり、日本のように質の高いガソリンばかりではない。そんな状況下であっても、優れた性能を発揮したからこそ、広く普及したのだ。

 

そんなベストセラーのスーパーカブだが、実は基本構造やフォルムは1958年の発売当初から大きく変わっていない。後にさまざまなエンジニアやデザイナーが、今までにない新しいスーパーカブをつくろうと試みたが、結局変えなかった。重量物であるエンジンや燃料タンクを車体の中心に置くレイアウトが利にかなっているなど、車体を見直せば見直すほど初代の完成度の高さに気付いたという。つまり、変えなかったのではなく、60年もの間、スーパーカブは変える必要がなかったのだ。

 

 

<いきなり“スーパー”が付いたワケ>

 

 

スーパーカブ誕生の6年前。創業間もないホンダは、200社以上あったバイクメーカーのひとつでしかなかったが、旧日本軍の払い下げ品である無線機用発電エンジンで、自転車に後からエンジンを組み込む「カブF型」を発売し大ヒット。これが初代“カブ”であり、車体も専用開発し、1958年にデビューさせた渾身の1台が“スーパーカブ”となったわけだ。

 

 

■新たなステージへ走り出すSUPER CUB

 

豊富なラインナップでより用途にマッチした“カブ”。ここからは、現行モデルを紹介しよう!

 

▼より上質に生まれ変わった125cc版カブ

Honda「SUPER CUB C125」(39万9600円)

 

 

クオリティの高さにこだわった最新125cc版は、ビジネス用途ではなく、ストリートにも馴染むスタイリッシュさがウリ。乗り降りしやすい車体はそのままに、デザイナーが初代モデルをモチーフにミリレベルで微妙なシルエットを再現。鳥が翼を広げたようなハンドル形状や青×白の車体、懐かしのエンブレムなどを採用している。

 

SPEC DATA
●全長×全幅×全高:1915×720×1000mm
●シート高:780mm 車両重量:110kg
●最小回転半径:2.0m
●エンジン種類:空冷4ストロ ークOHC 単気筒
●総排気量:124cc
●最高出力:9.7ps/7500rpm
●最大トルク1.0kgf・m/5000rpm
●燃費:105.0km/L(定地燃費値)

 

▲いくら現代的なデザインとなっても、S字基調のシルエットは普遍。ボディ全体が滑らかな曲選で構成されている

 

▲もはやキーシリンダーはなく、“キーフォブ”を携帯していれば電源のON/OFFなどが可能なスマートキーを採用

 

▲初代と変わらぬ前後17インチのまま、ホイールはアルミキャスト製となり、ブレーキは制動力抜群のディスク式に

 

▲厚みを嫌って、樹脂成形ではないスチール材のプレス成形としたリアフェンダー。灯火器類はすべてLEDとなった

 

 

▼スタンダードモデルもカジュアルに変身

Honda「SUPER CUB 50」(23万2200円)

 

 

丸目のヘッドライトなど円を基調としたやわらかなフォルムで原点回帰。親しみやすく愛着のわくスタイルに加え、カラーもカジュアルに。シフトチェンジ時の衝撃を軽減する2段クラッチを引き続き採用し、乗り心地がより快適になっている。カートリッジ式オイルフィルターで、整備性も向上した。

 

SPEC DATA
●全長×全幅×全高:1860×695×1040mm
●シート高:735mm 車両重量:96kg
●最小回転半径:1.9m
●エンジン種類:空冷4ストロークOHC 単気筒
●総排気量:49cc
●最高出力:3.7ps/7500rpm
●最大トルク0.39kgf・m/5500rpm
●燃費:105.0km/L(定地燃費値)

 

 

▼ユニークなフォルムで遊び心満点

Honda「CROSS CUB 50」(29万1600円)

 

 

いつの時代にも派生モデルが存在し、もちろん現行にも健在。ライトやマフラーにガードを備え、泥ハネや飛び石対策のマッドガードで守られたタイヤは、悪路も走破できるよう太めのセミブロックパターンに。カモフラージュ柄のメーターでサバイバルムードを高め、行動範囲を広げた。

 

SPEC DATA
●全長×全幅×全高:1840×720×1050mm
●シート高:740mm 車両重量:100kg
●最小回転半径:1.9m
●エンジン種類:空冷4ストロークOHC 単気筒
●総排気量:49cc
●最高出力:3.7ps/7500rpm
●最大トルク0.39kgf・m/5500rpm
●燃費:94.0km/L(定地燃費値)

 

 

▼特別色の記念モデルは受注期間限定!

Honda「SUPER CUB 50 60周年アニバーサリー」(29万1600円)

 

 

誕生60周年を記念した期間限定の受注モデルは、1963年にアメリカでの広告に描かれたイメージイラストがモチーフ。記念エンブレムをはじめ、より高級感のあるツートーンシートやブラック塗装を施したリアキャリア、スペシャルキーが採用され、特別感のある外観としている。

 

SPEC DATA
●全長×全幅×全高:1860×695×1040mm
●シート高:735mm 車両重量:96kg
●最小回転半径:1.9m
●エンジン種類:空冷4ストロークOHC 単気筒
●総排気量:49cc
●最高出力:3.7ps/7500rpm
●最大トルク0.39kgf・m/5500rpm
●燃費:105.0km/L(定地燃費値)

 

 

<初期のカブ、今乗るとどうなの?>

 

▼1955年製「F型カブ」

 

 

法規では50ccバイクを「原動機付き自転車」と定めるが、これぞその起源。自転車とバイクのハイブリッドだ。

 

 

▼1958年製「初代スーパーカブ」

 

 

旧車然とした乗り心地を予想したが、見事裏切ってくれた。スイスイ走り、今でも街を軽快に流せる高性能に驚く。

 

 

▼1960年製「C110」

 

 

若者に人気を誇った「スポーツカブ」は、元祖レーサーレプリカ。専用フレームの軽い車体を活かして動きは俊敏。

 

 

▼1962年製「C240」

 

 

 

 

 

ホイールを2インチ小径にし、足着き良好。ポートカブと呼ばれ、世界中の港へ輸出された。小柄でより手軽だ。

 

 

▼1964年製「CT200」

 

 

通称“ハンターカブ”は、いつでも銃を構えて獲物を狙えるようブレーキレバーをハンドル左右に装備。登板力も驚異的。

 

文:青木タカオ

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