なぜ不祥事を起こすのは“オッサン”ばかりなのか?

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『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』(山口 周/光文社)

 

官僚、企業、スポーツ界……。世間を賑わす不祥事の主役は、いつも“オッサン”たちだ。しかも、彼らは組織の中で着実に上り詰め、大きな権力を握っている人ばかり。だが、彼らの言動は、世間の感覚とは大きくズレていて、私たちの常識では考えられないことが組織内部では平然と行われていたりする。経験豊富で優秀なはずの“オッサン”たちは、なぜこうした残念な“劣化”をしてしまうのだろうか。

 

本書『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』(山口 周/光文社)の著者は、“オッサン”を以下のように定義し、その問題の本質と、若い世代が取るべき対抗策を提言する。

 

1:古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
2:過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
3:階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
4:よそ者や異質なものに不寛容で、排他的

 

あなたの周りに、こんな“オッサン”たちがはびこっていないだろうか。著者のいう“オッサン”はこのように定義されるから、中高年の男性が必ずしも“オッサン”だとは限らないし、それより若い世代であっても“オッサン”に該当する可能性はある。その点は注意が必要だ。

 

 

■なぜ“オッサン”は劣化したのか?

 

 

著者は、“オッサン”の劣化に関して、世代論・組織論などのさまざまなアプローチで迫っていく。

 

本書の冒頭で強調されているのは、「大きなモノガタリ」の存在だ。著者のいう「大きなモノガタリ」とは、「いい学校を卒業して大企業に就職すれば、一生豊かで幸福に暮らせる」という昭和後期までの幻想のこと。現在の50代・60代はこの「大きなモノガタリ」が喪失する以前に社会人となり、キャリアを形成してきた。だが、バブル景気の崩壊に伴い、現代は「グローバル資本主義下における弱肉強食の世界」という「新しいモノガタリ」が支配している。

 

つまり、今の組織の上層部に居座っているのは、「古いモノガタリに適応した人」であり、中層以下で彼らの指示を受けているのは「新しいモノガタリに適応した人」……という歪な状況が生まれているのだ。

 

さらに、この“オッサン”たちは、株主をワクワクさせるようなビジョンを作り出す創造力(=「アート」)もなければ、「アート」が生み出したものに現実的な裏付けを取る体系的な分析や評価の能力(=「サイエンス」)にも欠けている…というのが著者の論。このあたりの議論は、氏の著作『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社)にも詳しい【この本に関する著者インタビューはこちら】

 

 

■革命の武器は“オピニオン”と“エグジット”

 

では、自分の上司や組織のトップが“オッサン”だった場合、私たちはどうすればいいのだろうか?

 

昨今の不祥事に関するニュースを見ていればわかるように、一度“オッサン”がトップに据えられてしまうと、周りは権力のおこぼれにあずかろうとするイエスマンばかりになってしまうようだ。著者によれば、こうした権力に抗うためには、“オピニオン”と“エグジット”という方法があるのだという。

 

“オピニオン”とは、「おかしいと思うことについてはおかしいと意見する」ということ。それに対して、“エグジット”とは、「権力者の影響下から脱出する」ということだ。「それができたら苦労しない!」という声が聞こえてきそうだが、要するに、これらができる程度に“どこでも働ける”状態を作る(=「モビリティ」を高める)ことが大切なのだろう。本書の要点は、この「モビリティ」を高めるにはどうすればよいか、という方向に進んでいく。

 

今は“オッサン”たちを糾弾せんとする若い世代も、いつかは自分たちが“オッサン”化してしまうかもしれない。私たちの寿命はどんどん延びているから、50代・60代で“オッサン”化してしまえば、その後の長い人生を幸せに暮らすことはむずかしいだろう。本書は、私たちが“オッサン”と戦う「武器」であると同時に、“オッサン”化を予防するための「ワクチン」でもあるのだ。

 

文:中川 凌

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