偽名OK! 前科不問の仕事とは? 西成あいりん地区で暮らした78日間

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『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(國友公司/彩図社)

 

大阪府大阪市西成区の北部、JR新今宮駅の南側に位置する通称「あいりん地区」。日雇労働者が多い地区。1泊800円~1500円くらいで泊まれる日雇い労働者向けの簡易宿泊所が立ち並んでいる。最近では海外からのバックパッカーたちにも人気で、ユーチューバーたちの「泊まってみた」もよくあるネタだ。

 

でも実際のところ、このエリアにはどんな人たちが集まり、どんな暮らしを営んでいるのか。そんなことに関心がある方に読んでいただきたいのが『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(國友公司/彩図社)だ。

 

著者の國友氏は、筑波大学を7年かけて卒業したものの、出版社へ就職できずにフリーライターの道を選ぶ。そして彩図社を訪れた際に「原稿が面白ければ本にする」と言われ、西成ルポを書くことに決め、あいりん地区に滞在。結果、78日間を過ごすことになった。

 

著者が本書に記した西成での主な体験は以下の通りだ。

 

1.ドヤでの宿泊体験
2.解体作業現場での就労体験
3.従業員寮(飯場)での宿泊体験
4.貧困ビジネスのプチ体験

5.ドヤ従業員としての就労体験
6.あいりん地区散策及び人々との交流記
7.(おまけ)飛田新地のハッテン場(映画館)潜入レポ

 

 

到着当初こそ、この地区特有の雰囲気に戸惑うも、日を追うごとにどんどん馴染んでいくあたり、学生時代に「キナ臭いアルバイトと東南アジアでの沈没に時間を費やした」という著者の真骨頂が感じられる。

 

 

■元暴力団や前科&ドラッグ経験アリな人との交流

 

國友氏はこの地区に暮らす人たちと交流を深めるうちに“ワケあり”な人にも多く出会ったという。

 

たとえば、著者が親交を深める宮崎さん(仮名、60代後半?)の略歴はこうだ。

 

自衛隊→マグロ漁船→暴力団&ドラッグ→刑務所(傷害罪)→フクシマ原発作業員→あいりん地区で現場作業員→(後述するヒットマン経由で)生活保護申請。

 

だが意外にも、滞在期間中、運良くだったのかもしれないが、著者が危険な目に遭ったり、犯罪被害者になることはなかった。むしろ、出会ったすべての元中毒者たちは異口同音に、「ドラッグだけは手を出すな。経験者が言うんだから間違いない」と、著者に親身に忠告するほど、人々は互助の精神にも厚い。

 

体験する現場仕事にもブラック感はないし(他の業者のとんでもない話は出てくるが)、寮(飯場)は日雇い労働者向けの簡易宿泊所よりも快適で食事は「バイキングもあり、とてもウマい」とさえ記す。

 

ちなみに、土木工として働く場合、偽名OKで身分証も不要。過去(前科歴など)も現在(指名手配中か否かなど)も一切問われない。これがワケありの人々がここに集まる理由だが、そんな彼らも自分の居場所を作ろうと、競って仕事を真面目にこなしているという。

 

 

■「ヒットマン」という仕事とは?

 

仕事を求める人に優しい一方、貧困ビジネスがないわけではない。それが「ヒットマン」と呼ばれるものだ。

 

ターゲットを絞り、肩を叩いて「もういい加減疲れただろう」と語りかける。そして「生活保護、受けたらどう? 申請とかはこっちでするから」と、スカウトする。相手が「お願いします」といえば、受給までの1カ月間はヒットマンが1日千円(合計3万円)を渡してスカウトした人の面倒を見る。そして受給が始まると、初期投資の3万円を回収し、加えて、毎月マージン3万円をもらうという。

 

本書に登場するある警察官は「何より困るのは貧困ビジネスだ」と語る。一方、それによって命をかろうじて繋げられた人もいる。とにかくみんな生きるのに必死なのだ。

 

このように善悪が混然一体となって息づく西成あいりん地区。そんな西成滞在を経て著者は、「自分はまだここに来るような人間ではない」と思うと同時に、「私のような人間がこの街にいること自体、恐れ多いような気もする」とも感じたそうだ。

 

ぜひ、本書で西成あいりん地区での生活を疑似体験してみてはいかがだろうか?

 

文:ソラアキラ

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