老人たちに忍び寄る詐欺。怪しい“健康食品”のお店で何が行われているのか?

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『あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと』(ロバート・熊/自由国民社)

 

街中でたびたび見かけるのが、老人たちの集まっている怪しいテナント。軒先に掲げられた看板やのぼりには「健康」や「自然食品」なるきれいな言葉が並んでいて、時間が経つと、商品を片手にたくさんのご老人方がご満悦な表情のまま出てきたりする。

 

しかし、賢明な読者ならばお気づきだろうが、このような店舗は悪徳商法の疑いが強い。いわゆる詐欺の一種「催眠商法」の代表的な手口であるが、かつてはそんな場所で“だます側”にいた著者が、実態や対策を訴える書籍がある。『あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと』(ロバート・熊/自由国民社)だ。

 

かつては詐欺師として好成績を残していた著者が伝える内容はどれも、自分たちの親世代にそっと教えてあげたくなるようなものばかりだ。

 

 

■現場で話していることの9割はどうでもいい「世間話」

 

この手の会場を表から見ると、入り口についたて代わりのホワイトボードが置かれていたりと、何が行われているのか分からないこともある。とにかくうさんくさい商品のよさを老人たちへ徹底的に刷り込んでいるのかと思いきや、じつは、内容の9割は「世間話」や「人生の気づきの話」だという。

 

(C)にゃんとまた旅/ねこまき

 

世間話は、会場に集まった近所の老人たちが共通して受け入れやすいもの。講師役の人物が時にはユーモアも交えつつ、親近感をもたらすために軽快なトークを繰り広げる。そして、客との距離が縮まったところで、人生の気づきの話をし始める。これは、お坊さんの説法のようなもので、お金を使わないという心のブレーキを解除させるために用いられる。

 

また、会場には複数のスタッフがいるのも一般的であるが、その上で重要な役割を担うのが「アシスタント」の存在だ。

 

(C)にゃんとまた旅/ねこまき

 

彼らに求められていることのひとつは、講師の話を盛り上げるためのあいづちを打つこと。テレビ通販のように、話の合間で「うわ〜、すごい」「そんなにサービスしていいのですか?」など、大げさなリアクションを見せてくる。

 

さらに、もうひとつ重要なのが「客の一人ひとりに接客をしていき仲良くなる」ということ。商品説明が終わったあと、個別に声掛けをして購入を促す役割が与えられているという。

 

 

■長期間にわたり行われる勧誘。会員へのアフターフォローも

 

この手の詐欺が行われている会場では、比較的長期間にわたり勧誘が行われているのが一般的だという。本書によると、おおむね「1カ月から3カ月で開催する会社」が多く、客との人間関係を深くじっくりと築き上げながら、時間をかけて高額商品を売りつけていくそうだ。

 

例えば、2カ月間にわたり健康食品を売りつける詐欺の場合は、最初の1カ月間が重要になる。最初に売る商品はとりわけ長い時間をかけて宣伝し、まずは客からの信用を勝ち取る。その後、購入者のみに「会員証」を発行するのだが、その理由は購入しない客を振り分けるため。2カ月目からは、会員になった客のみを相手にして「最も自信のある商品」を販売していくわけだ。

 

さらに、詐欺業者たちはアフターフォローも欠かさない。この手の店舗はあるときふといなくなっているイメージもあるが、じつは、その後も会員向けの特典などにより客の心を引きつけている。

 

(C)にゃんとまた旅/ねこまき

 

本書によると、その代表的な例が「会員の集い」と称されるもの。月に一度、定期的に店舗のあった地域で開催されるほか、時には大きなホールで有名な演歌歌手を呼んだりと、大規模なイベントも年に数回行われる。

 

楽しかった思い出を胸にした老人たちにとっては、さながら“同窓会”のような場所であり、また、詐欺業者にとっては「有効期限が近付いている会員に高額商品を勧めることができる」という格好の場所でもあるのだという。

 

 

■近寄らない、通わない、クーリングオフを遠慮なく使うのが対策

 

詐欺被害に遭わないためには、周りからの注意に耳を傾けるのはもちろん、やはり本人が日頃から持っておくべき心がまえも必要だ。そこで、本書にある「被害にあわないための3か条」を紹介したい。

 

 

1.近寄らない

 

誰もが心のどこかで「自分は絶対にだまされない」と思っているはず。しかし、ひとたび会場に足を運んでしまうと、雰囲気に飲まれて購入してしまう場合もある。催眠商法で危険なのは「売りつけられる前に心を奪われる」ことなので、この手の業者にありがちな「無料引換券」などが付いているチラシであったり、近所の人から誘われるなどのちょっとしたきっかけにも、反応しないよう心がけておこう。

 

 

2.「もったいない」と思わずに通うのをやめる

 

一度だけ何らかのきっかけで足を運んでしまったなら、次の日には行かないという選択肢を取るようにするのがいい。タイミングは早ければ早い方がいいが、ポイントは「心を奪われる前に逃げる」ということ。万が一の場合、会場内ではスタッフが声をかけてきても「無視を決め込む」というのもひとつの方法で、それができないようであれば「冷たく薄い反応」で返してみるだけでもいい。

 

 

3.クーリングオフに遠慮をするな

 

近寄らない、通わないといったことができず、挙句の果てに商品を購入してしまった場合には、法律で認められた「クーリングオフ」を活用してほしい。

 

口頭や書面により契約の解除を知らせるための制度であるが、業者側に商品の引き取り義務が生じるため、店舗へ足を運ぶ必要もない。万が一、自宅にやってきた業者がごねるようであれば断固としてつっぱね、顔を合わせたくないならば「着払い」で商品を送ることもできる。

 

往々にして、詐欺師は巧妙に人の心の隙間につけ込んでくる。本稿で取り上げた催眠商法は、孤独を感じやすい老人たちをターゲットにした手段のひとつだ。親と離れて暮らす人たちも多いだろうが、本書の内容をぜひどこかの機会で伝えてあげてほしい。

 

文:カネコシュウヘイ

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