「破水した妊婦」でも許さない…米軍基地の厳格すぎる交通ルールとは
日本には沖縄を中心に全国で130箇所以上の米軍基地がある。基地は非常に広く、移動はもちろん車が基本だ。基地内での交通ルールは本国と同様。日本ではなじみのないルールもあるが、とても合理的で、かつ厳格だ。その中で、日本人が学ぶべき交通ルールをいくつか紹介してみたい。
■米軍基地は小さなアメリカだが、車両は「左側通行」
基地の中は完全にアメリカである。ファストフード店やドーナツ店なども日本では展開がないブランドが多い。売店で販売されているソーダやチップス類もすべてアメリカ仕様だ。モンスターエナジーも日本にはない大きなボトルだったりする。このような物資については日本の商社などを通さずアメリカから直接送られてくるのだそう。
しかし、車両の通行方向に関しては、日本と同様「左側通行」となる。日本の公道が左側通行のため、「ゲートを境に右と左が逆転すると危険だから」というのが大きな理由だ。実際、米軍基地の公用車や米軍人のプライベートな車はほとんどが右ハンドル車だ。車両と通行方向については日本と同じだが、交通ルールに関しては、アメリカのスタイルがほぼそのまま適用されている。
■交差点における『4WAY』とは?
アメリカの住宅地などで良く見かける「4WAY」の標識が基地内のいたるところに設置されている。「交差点に入った順番から出ていく」という方式だ。日本では同じような規格の道路であっても、一方が「止まれ」の一時停止になっていて、それに交差する道路が「優先」となっているケースが多い。
しかし、米軍基地の中で一般的な4WAYでは、どちらかが優先ということはなく、4方向(4WAY)から交差点に入る車は手前で全車一時停止をして、交差点に入ってきた順番が早い車から発進する(交差点から出ていく)仕組みになっている。筆者はアメリカの道路で何度も経験しているが最初は4方向からほぼ同時に車が来た場合、自分が何番目に入ったのか混乱することもあった。が、「交差点では4方向全車一時停止」の方が安全性は高い。合理的なシステムである。
■産気づいた妊婦であってもシートベルトを着用しないと基地内には入れない
米軍基地内ではシートベルトの着用が日本に比べてはるかに厳しい。例えば自衛隊の駐屯地では、制限速度や徐行、一時停止に関しては厳しくチェックされるが、シートベルトに関してはそれほど厳格にはチェックされない(そもそも、自衛隊の73式大型トラックなど荷台についている座席にはシートベルトがついていない)。
一方、米軍基地では速度はもちろん、一時停止やベルトの着用など、すべてにおいて異常なまでに厳しい。軍人の家族に対しても同様で違反をするとすぐにポリスが飛んできて注意される。例えば、産気づいた日本人の妊婦さんを乗せた車が、軍人である夫が運転する車で基地内に入るような場合でも、ベルトを着用していない妊婦がいるとゲートで止められ基地内には入れない。(ベルトを着用すればOK)「赤ちゃんが生まれそう!」「破水した!」という状況であっても「例外はない」のである。
■新生児用チャイルドシートがないと出産後の退院許可が出ない
基地内の病院においては、出産を終えて退院する際、赤ちゃんを乗せるための新生児用チャイルドシートを持参して医師に見せることで退院許可が下りる。これは筆者の友人が25年前に基地内の病院で出産した際に経験したことである。日本でもそのような志の高い産院はわずかに存在するようだが、助産師も産科医もほとんどは新生児用チャイルドシートを装着しているかどうかなど気にも留めないだろう。
また、基地の中には軍人の家族が通う幼稚園入園前のスクール『sure start』から、小中高はもちろん大学または大学院までが揃うところもあり、子どもたちの多くはスクールバスを使って移動する。当然、バスにはシートベルトがついており、これを着用しなくてはいけない。日本もバスで子どもを送迎する幼稚園が少なくないが、幼稚園バスはシートベルト装着の対象外である。
米軍基地で使うスクールバスには『バスモニター』という子供たちの様子を見たり世話をしたりする人が必ず同乗し、全員例外なくシートベルトを着用させている。日本ではスクールバスに先生が同乗する光景が良く見られるが、シートベルト着用について厳しくチェックすることは少なく、立ち歩いている子供を座らせる程度だ。中には、ベルトを首に巻き付けて遊ぶなど危険が及ばないよう、シートベルトを縛って使えないようにしている学校も存在するようだ。
米軍基地では生まれてすぐから、交通ルールの厳守が求められる。そしてどのような場合でも「例外がない」ということがポイントだ。チャイルドシートにしても、「家の車では使うけど、幼稚園バスでは使わなくていい」といった例外がない。日本は世界一厳しい車検制度があり、世界トップレベルの安全な車を数多く送り出しているが、車に乗る人の安全意識についてはまだまだ低い。