指原莉乃が「韓国のファンさん」からもらった手紙が泣ける【今週の大人センテンス】

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写真:Top Photo/アフロ

 

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第113回 ケチをつける残念な人たち

 

「同じ言葉ではないということが、同じ国ではないということがたまには悲しいけど 私が努力すればいいんですがら。近い国でよかったです。同じ時間を生きて幸せです。」by韓国の指原莉乃ファン

 

【センテンスの生い立ち】

HKT48のメンバーで、AKB総選挙で2017年に3連覇を果たした指原莉乃。国内だけでなく、アジアを中心に海外にもファンが多い。11月25日深夜、自身のtwitterに韓国のファンから届いた手紙の写真を投稿。そこには日本語で、上のように書かれていた。このtweetは大反響を呼び、28日12時の時点で28万以上の「いいね」を集め、4万回以上リツイートされている。ただ、コメント欄などでは、手紙にケチを付けている人も少なくない。

 

【3つの大人ポイント】

  • 気持ちを伝えたいという純粋さがあふれている
  • 現実を受け止め、力強く前に進もうとしている
  • あえて紹介した指原莉乃の心意気が感じられる

 

出典:指原 莉乃Twitter @345__chan」より

とてもいい話であり、とても素敵な手紙です。きっと一生懸命に日本語を勉強したのでしょう。たどたどしさを感じさせる文面といい、一文字ずつ丁寧に書かれた筆跡といい、大好きなアイドルに自分の気持ちを伝えたいという純粋さにあふれています。どんな名文家も、これほどの感動的な文章はなかなか綴れません。

 

手紙をもらった側の指原莉乃もアッパレです。自身のtwitterに、泣き顔の顔文字を入れつつ「韓国のファンさんからのお手紙 泣きそうになっちゃったよ~」とコメントを付けて、手紙の写真をアップしました。別の国に住むファンから「近い国でよかったです。同じ時間を生きて幸せです」と書かれた手紙をもらって、さぞ嬉しかったでしょう。アイドル冥利に尽きるとはこのことです。手紙に込められた気持ちは、しっかり本人に伝わりました。

 

ただ、とても残念なことに昨今は、韓国ファンの手紙に心を揺さぶられたからといって、何も考えずにtwitterにアップできる雰囲気ではありません。聡明な彼女のことですから、自分の感動をフォロワーにおすそ分けしたいというまっすぐな気持ちと同時に、アップしたら一定の割合でうっとうしい反応が混じってくることはきっと予想していたはず。それでも彼女は腹をくくって、手紙をアップしました。一石を投じる意図があったかどうかはわかりませんが、いずれにせよとても勇気のある行動です。

 

そして、やっぱりというか困ったことにというか、tweetにはたくさんの好意的なコメントに混じって、うっとうしいコメントが書き込まれています。〈日本人に対して「ごめんなさい」と謝罪も出来ないような反日国家のファンの手紙に心揺さぶられてんじゃねえよ〉〈その努力が反日に使われそうな気がして怖いです〉〈指原さんて、そういう系の人だったんですね。がっかりしました。嫌いになりました〉……。この手紙を見てこんな言葉を書いてしまえる人がいるなんて、ああ、情けない。ああ、恥ずかしい。

 

ひいき目に見たいのは山々ですが、どうひいき目に見ても、日本は今、情けなくて恥ずかしい国になっています。もちろん一部ですけど、特定の国の人を平気で差別する、嫌いな国に対してはどんな汚い言葉を投げつけてもいいと思っている、差別したり嫌ったりする理由を探しまわって自分を正当化する、そんな残念な人が少なくありません。そういう人は「反日教育をしているような国」という言い方をよくなさいますが、相手を嫌うための情報を必死で集めている自分のほうが、よっぽど洗脳された状態だとは思わないのでしょうか。

 

そういう人たちは常々、嫌いな国の悪いニュースをピックアップして「だからあの国はダメだ」と言っては留飲を下げてらっしゃいます。日本の悪いニュースは棚に上げつつ。たとえばどこか外国のメディアが、日本のイメージを悪くしようと思ったら、そういう人たちの日頃の言動を取り上げて「日本はこんなに差別が横行している」「日本はとんでもない国だ」というニュースを作るでしょう。他国のイメージなんてそんなもんです。一部の人のセコイ自己満足のせいで、日本人全体が差別的だと見られたらたまったもんじゃありません。

 

この手紙が素晴らしいのは、一生懸命に書かれているだけでなく、前向きな姿勢にあふれているところ。大好きなアイドルとは言葉も国も違うということをまず受け入れ、そこは努力で乗り越えようと決意した上で、近い国であることや同じ時間を生きているというプラスの面に幸せを感じています。現実を嘆いていても始まりません。ままならない現実にどう立ち向かい、手持ちのカードをどう生かすかを考えるのが、人生を充実させて多くの幸せを感じるための基本です。この手紙は、そういうことも教えてくれました。

 

私たちも、嘆いてばかりはいられません。情けなくて恥ずかしい差別主義者は、確実に増えています。外国人労働者をいろんな名目で奴隷扱いしているのもひどい話だし、国がそれを推し進めていることが、一部の人を調子づかせている一面もあるのでしょうか。ただ、それが今の日本であり私たちが住んでいる社会です。批判は大切ですけど、標的を見つけて「ケシカラン」と怒りを覚えることで「自分はまとも」と言い聞かせたり留飲を下げたりしているだけなら、やっていることは差別主義者の人たちとたいして変わりません。

 

手紙の韓国のファンを見習って、現実にどう立ち向かい、自分なりの手持ちのカードをどう生かすかを考えたいものです。差し当たっては、コンビニでお会計をするときにレジの外国の人に向かって、ニッコリお礼を言うあたりから始めましょう。あるいは、上司や親など身近な人が差別的なことを言い出したら、ちゃんと反論するか、せめて思いっ切り不愉快そうな顔をしたいところ。何ごとも小さなことからコツコツと、です。

 

 

【今週の大人の教訓】

「叩きやすいところを叩いて自分を守る」という落とし穴は常にそこにある

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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