これはモードか悪趣味か。「お洒落」は言ったもの勝ちなのか…?

ライフスタイル

シンプルかつミニマルな装いをお洒落とする人もいれば、着飾ることをお洒落と感じる人もいる。現代的なモダンスタイルを美しいと感じる人もいれば、歴史が培ってきたクラシックスタイルを美しいと思う人もいる。イタリアがお洒落と思う人もいれば、イギリスがお洒落と思う人もいるし、最新のコレクションが着たい人もいれば、古着好きもいる。お洒落とは斯くも難しい。

 

しかしながらこれはお洒落なのだろうか。はじめ、なにかのオマージュかそれともモチーフかと思ったのだが、「PENIS」と書かれているということは直球だ。日本のコレクションには入ってきていないようだが、本国サイトではしっかり掲載されているのでフェイクニュースではない。最新のモードか悪趣味か。一流のブランドが「お洒落」と言えば、なんでもお洒落になるのだろうか。

 

 

■「グッチのうちわ」2万8000円也…

「グッチのうちわ」はメルカリでも人気!? 出典:メルカリ

少し前から気になっているのはイタリアの某ブランドの乱心だ。まるで大阪のおばちゃんが着るような派手な色柄のセーターや、ヒョウ柄どころかヒョウの顔をあしらった金具のバッグなどなどはまだしも、カタカナでブランド名を描いたうちわを公式サイトで2万8000円で売り出したときには正直呆れた。冗談なのか、それとも気が触れたのか。「ダサいがカッコいい」というアンチテーゼとしても、個人的には受け入れがたい。

 

 

80年代に流行したスポーツブランドと、ダジャレの如くコラボしたロゴ使いに至っては、当時実際にトレーナーを着ていた世代としてはバカにされているようでいただけないし、ロゴ入りアイテムの類は散々着倒したうえで、「ダサい」と結論付けた過去を覆すことにも抵抗がある。若い世代に新鮮なのであれば、六本木バイオとか、セイラーズ、パーソンズのトレーナーとかメルカリにだしたら売れるのだろうか。実家の屋根裏にあるけど。

 

これも非常に抵抗ある流行アイテムだ。かつて「オタク族」と呼ばれた人たちが、ホームセンターのワゴンに山積みされていたスニーカーを、自らを蔑みながら履いていたのはひとつのカルチャーとしても、お洒落と別次元に生息していたものをお洒落の俎上に引きずり出して、「みてみて、これ超お洒落じゃね?」と騒ぎ立てるかのような印象は拭えない。

 

「ダサカッコいい」はミスマッチではないはずで、かつて流行した「ナード」は高等な知的階級の遊び心だったはず。お洒落の解釈は様々だが、まだ誰もお洒落と認めていないものを見つけ出して「お洒落」のレッテルを貼る行為がお洒落だとしたら、お洒落は単に言ったものがちだ。「新鮮」はいつのじだいも若者の心を捉えるもので、筆者もかつては飛びついてきたことは否定しない。だが歴史の作り手を導くべきは歴史を知るものの使命であるべきだ。「ハズし」としても、基本をしっかりこなせる上での応用であるべきで、基本を知らない人間が抽象画を描いたとしても、それは芸術ではなく落書きでしかない。ピカソの初期のデッサン画は完璧な筆致だし、村上隆の作品はコミケの絵師さんのそれとは異なる(はずなんだけど、筆者はよくわからない)。

 

「王様、この服はバカやマヌケには見えません」

「そ、そうか。たしかに、これはお洒落な服だ」

「さすが王様、お目が高い」

王様は裸だ。

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ファッションエディター・ライター

池田保行

神奈川県横浜市出身。ファッションエディター・ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリー。 2004年よりファッション エディター & ライター ユニット ZEROYON 04(ゼロヨン)を主催。 毎年1月と6月にイタリ...

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