たった140円で合法的に10時間もの「乗り鉄」旅を楽しむ方法とは?

車・交通

 

JRの初乗り運賃140円(JR東日本など)あるいは120円(JR西日本の大阪環状線内)を払うだけで、近郊路線を大回り乗車して楽しむ鉄道ファンがいる。鉄道好きならよく知られていて、いまさら何を、ということになるが、世間では知らない人もかなりいる。そこで、JRの都市近郊区間における大回り乗車について解説しておこう。

 

 

■大回り乗車が認められるわけ

 

中央線快速

例えば、東京の山手線に乗るとしよう。東京駅から隣の有楽町駅までは、初乗り運賃140円(SuicaなどのICカードなら133円)である。ところで、うっかり反対方向へ向かう内回り電車に乗ってしまったとする。すぐに次の駅で降りて戻る人が多いだろうが、東京見物を兼ねてぐるっと一周してしまおうかと酔狂なことを考える人がいるかもしれない。この場合は、1時間近く乗り通さなければならないけれど、座ることが出来てスマホを見続けるなり、居眠りをすると案外時間が経つのは早いものである。さて、この場合、運賃はいくらかかるかと言えば、乗車時間や距離が増えたにもかかわらず、ほぼ一周して有楽町で下車すると133円(紙のきっぷなら140円)なのだ。

 

もっと、現実的な例を挙げよう。新宿駅から東京駅までJR中央線の快速電車を利用すれば14分、200円(ICカード利用なら194円)だが、山手線で渋谷、品川経由なら30分ほどかかる。倍ほどの時間がかかり、距離も増えるので、乗車キロに照らして計算すると260円のはずである。しかし、実際には200円(ICカードなら194円)で済んでしまうのだ。

 

これは、JRの大都市近郊区間内のみを利用する場合、実際に乗車する経路にかかわらず最も安くなる経路で計算した運賃で乗車することができる、という規則があるためだ。ただし、同じ駅を2回通ったり、行ったり来たりすることはできない。一筆書きで行ける範囲である。ただし、新幹線は含まれず、在来線のみである。また、途中駅で改札口をでることはできない。トイレや売店が改札の外にしかないからといって、改札を出る場合は、その駅までの運賃精算を行い、再入場すると新たな切符が必要となる。

 

 

 

では、大都市近郊区間とは具体的にどの範囲か?市販されている時刻表の巻末のJR営業案内に出ているが、東京、新潟、仙台、大阪、福岡の5つの近郊区間がある。そのうち、多くの一筆書きルートが考えられるのは、東京近郊区間と大阪近郊区間であろう。とくに、東京近郊区間は多くの路線が入り組んでいるので、鉄道ファンの食指をそそりやすい。もっとも、大回りして同じ駅を2回通らない一筆書きルートというと、どうしても限りがある。今では、中央線で延々と進み、篠ノ井線の松本までが近郊区間だと言われても、ぐるっと回ることはできないのだから、初乗り運賃で回ることができる範囲には入らない。東京駅から中央線に乗るのなら、八王子で下車して北へ向かう八高線に乗り換えるか、南へ向かう横浜線に乗り継ぐしか選択肢はないのである。

 

 

■八王子からどちらへ向かうか?

 

八高線のディーゼルカー

横浜線に乗り換えると、あとは橋本で相模線に乗り換えるか、横浜線に乗ったまま東神奈川に出て、京浜東北線で有楽町へ戻るしかない。相模線に乗り換えると、茅ヶ崎から東海道本線で大船、京浜東北線や鶴見線を回ることもできるけれど、東京近郊区間の左下4分の1程度をまわっただけでおしまいである。

 

それなら、八王子から八高線で北へ向かい、高麗川からは首都圏では珍しいディーゼルカーに乗り換えて、ローカル線の雰囲気を味わいながら高崎まで行ってしまおう。その先は、両毛線経由で小山、水戸線に乗り換えて友部、常磐線で都心方面へ戻るようにして我孫子まで、さらに成田線で成田、香取、銚子の手前の松岸で総武本線に乗り継いで成東へ。東金線で大網へでて、外房線、内房線と房総半島を一周して千葉へ。そして総武線で都心を目指しながらも西船橋で武蔵野線に乗り換えて東京近郊を外周して、南浦和から京浜東北線で南下して秋葉原で降りれば140円で合法的に長い「乗り鉄」が楽しめる。

 

東京駅から中央線で一気に八王子まで向かったけれど、これを東京駅から品川経由山手線外回り電車で新宿へ向かい、そこから中央線というルートをあらかじめ取っておけば、神田は経由していないので、最後は神田で降りることも可能だ。

 

 

■具体的な大回り乗車プラン

 

両毛線

もっとも、東京駅を午前8時7分発の快速高尾行きで出発すると、順調よく高崎まで行け、11時45分着。30分程昼食タイムを取り、両毛線、水戸線に乗って友部に到着するのが16時15分。

 

この先、すぐに常磐線に乗り継いでも、我孫子着が17時33分だから、1月や2月は、千葉方面は闇の中である。車窓は楽しめそうにないから、素直に上野まで乗り通し、山手線に乗り換えて秋葉原で旅を終わりにしよう。それでも、10時間以上の旅となり、乗車キロは388.2km。これを運賃表で見ると6480円かかることになる。それが、140円で合法的に乗車できるのだからずいぶんと得したような気になるであろう。

 

最近は、SuicaなどのICカードを使う人が多いけれど、大回り乗車の場合は、あらかじめ券売機で140円の乗車券を買っておいた方が無難だ。ローカル線区間で車内改札があった場合の対応も簡単だし、ICカードの場合は入場してからの時間制限がある場合もある。

 

もっとも、格安だからといっても、普通列車(快速列車を含む)しか乗れないし、混雑していて座れない場合もあろう。改札口から一歩たりとも出られないのもつらい場合もある。あまり欲張りすぎると修行のような「乗り鉄」となるかもしれない。究極の移動を競うのではなく、余力をもってほどほどの楽しみ方をするのが賢明であろう。

 

 

■大回り乗車プランの一例

 

 


※情報は2019年1月15日時点のものです

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旅行作家

野田隆

1952年名古屋生まれ。長年、高校で語学を教える傍らヨーロッパと日本の鉄道紀行を執筆。2010年、早期退職後、旅行作家として活動中。著書に『テツ道のすゝめ』『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』『テツはこんな旅をして...

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