【今週の大人センテンス】日ハム・大谷翔平が見せた“常識外れ”の活躍にウットリ

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出典:「北海道日本ハムファイターズ」公式サイトより

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第29回 「二刀流批判」をねじ伏せた見事な実績

 

「行きましょうか?」by大谷翔平

 

【センテンスの生い立ち】

今年のパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージは、日本ハムとソフトバンクが激突。2016年10月16日に行なわれた第5戦で、日本ハムが3点リードで迎えた9回表に抑えとして登板したのは、打者として先発出場していた大谷翔平。165キロの速球などで三者凡退に抑え、日ハムは4年ぶり7度目の日本シリーズ進出を決めた。4回が終了したあと、ロッカールームにいた大谷は、登板の意思を確認するために話しかけようとしたコーチに対して、聞かれる前に「行きましょうか?」と申し出たという。

 

【3つの大人ポイント】

・監督の大胆なプランを察知して自分から意思を示した

・プロ野球の“常識”を逸脱する活躍で夢を与えてくれた

・日本シリーズに向けてのワクワク感を盛り上げてくれた

 

間違いなく、いまもっとも「見ていて楽しい野球選手」です。スポーツ中継であんなにワクワクする気持ちを味わったのは、いつ以来でしょうか。ネットではあちこちで「マンガみたい」という声が上がっていましたが、10月16日に行なわれたパ・リーグのクライマックスシリーズファイナルステージ第5戦は、まさに現実を越えた展開でした。

 

日本ハムが勝てば日本シリーズへの進出が決まるという大詰めの一戦。日本ハムが3点リードで迎えた9回表、場内に「指名打者、大谷がピッチャー」というアナウンスが流れます。球場内に大声援が渦巻くなか、マウンドに上がった大谷翔平は、自己最高であり日本記録を更新する165キロを連発。ソフトバンクの3人の打者を三振、三振、遊ゴロと、あっさり3者凡退に打ち取りました。

 

日本ハムの日本シリーズ進出を決めた大谷の快投は、こちらでご覧ください。気合いの入った表情がたまりません。

 

10-16 怪物大谷翔平、最速新165キロ連発ダイジェスト プロ初セーブで日本S進出決定 第5戦クライマックスシリーズファイナル 日本ハム対ソフトバンクホークス(You Tube)

 

野球ファンにはいまさらの説明ですが、現在のプロ野球で投手と野手の「二刀流」を行なっているのは、大谷ただひとり。長い歴史をさかのぼっても数人いただけで、今年の大谷のように投手としても打者としても胸を張れる結果を残している選手は誰もいません。今年は投手としては10勝(4敗)をあげ、防御率は1.86。規定投球回数に3回足りませんでしたが、もし達していれば最優秀防御率のタイトルを2年連続で獲得していました。打者としても100試合以上に出場。22本の本塁打を打ち、.322の打率を残しています。

 

大谷がドラフト会議で日本ハムに指名されたのは2012年の秋。当初から「二刀流に挑戦したい」と公言していましたが、ほとんどの野球評論家はそんな彼を「プロ野球をなめるな」と厳しく批判します。ファンの多くも、実現してほしいと思いつつも「たぶん無理だよね……」と疑いの目を向けていました。しかし、栗山英樹監督は彼の気持ちを尊重して、1年目である2013年のシーズンから二刀流へのチャレンジを全面的にバックアップ。大谷もそんな気持ちと期待に応えて、一年ごとに大きく成長していきます。

 

あの試合での大谷の活躍は、二刀流への挑戦が間違いではなかった証であり、プロ野球の“常識”や“定説”がはっきりと代わったことを見せつけられた出来事だったと言えるでしょう。「いまの成績が長続きするかどうかわからない」「このままでは選手寿命を縮める」とあくまで懐疑的に見る声もありますが、それはこれから先の話であり、すでに現時点で二刀流は夢物語ではなく現実に可能だったことを十分に示してくれています。

 

大事な試合で、DH(指名打者)として出場していた選手をリリーフで登板させようというのは、それこそ“常識”では考えられない起用法です。しかし新聞の記事によると、大谷はコーチに登板の意思を確認される前に、栗山監督の大胆なプランを察知したとか。直接のやり取りではなかったにせよ、自然に「行きましょうか?」という言葉が出てきたところに、栗山監督との深い信頼関係とお互いに理解し合っている様子が伺えます。

 

日本ハムファン爆ぜた 大谷、自ら「投手で行きましょうか」(どうしんウェブ)

 

近ごろはあらゆる場面で、やたらと“常識”が幅を利かせています。どんな仕事でもどこの業界でも、失敗や批判を恐れて安全策を選んだり前例を踏襲したりしがち。スポーツを見るときぐらいは、そんな手かせ足かせを脱ぎ捨てましょう。大谷の“常識外れ”の活躍ぶりは、チマチマと小さくまとまりがちな世の中の閉塞感をぶち破ってくれます。思いっきりウットリして、手に汗握って、返す刀で自分を縛っている常識の鎖を一本でも二本でもいいから断ち切りたいもの。今の大谷には、見る側に自分自身を変えさせる力があります。旬の輝きを放ってくれているまぶしい存在に胸躍らせ、力いっぱい声援を送りましょう。

 

セ・リーグを勝ち抜いた広島カープとの日本シリーズは、10月22日から始まります。日本ハムファンや広島ファンはもちろん、どっちのファンでもない人も、にわか野球ファンも、大谷のおかげで日本シリーズに向けてのワクワク感が盛り上がりました。広島カープは広島カープで25年ぶりに日本シリーズに進出して、選手もファンも気合十分です。ピッチャー大谷と広島打線、バッター大谷と広島投手陣との対戦を楽しみにさせてもらいましょう。待ち遠しいこと巌流島で宮本武蔵と戦った佐々木小次郎の如し。二刀流だけに。

 

 

【今週の大人の教訓】

これまでの“常識”や“定説”なんてものは打ち破るためにある

 

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石原壮一郎

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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