いじめで親子心中という悲劇…わが子に「しにたい」と言われた母の深すぎる苦しみ

人間関係

 

「しにたいよ」

 

宮城県仙台市で小学2年生の女の子が、両親に宛てた手紙にそう綴ってから3か月後、その母親が女の子と無理心中したとみられる事件は、多くの子育て家庭に衝撃を与えました。私は日本テレビの記者として、20年以上前から全国の小中学校などで取材をしてきましたが、こうした無理心中が明らかになるのは稀だと思います。エスカレートするいじめ事件の結末が、ここまで来てしまったのかと身震いしました。

 

わが子が「しにたい」ほどの深刻ないじめを受けていると知った時、親はどんな思いでいるのでしょうか。私は、かつて長男がいじめを受け、命の危険にさらされたことがある、ある母親に、今回の仙台の事件についてどう受け止めたのかと聞きました。

 

すると彼女は「無理心中をした母親の気持ちがよくわかる」と言うのです。「私も同じことをしていたかもしれない」、と。それほどまでに、親が苦しむ理由。それは、「誰も助けてくれない。どうしようもない」という八方ふさがりの「絶望感にある」、と彼女は話してくれました。

 

 

■母親へのケアも必要

 

仙台市の母親が絶望してしまった背景には何があるのでしょう。今回の事件の特徴の一つは、母親が多くの機関に「相談していた」ということです。遺された父親を支援する「全国自死遺族連絡会」を取材しますと、母親は「しにたいよ」という娘の手紙の内容も含め、学校には計20回以上、相談していたといいます。

 

さらに教育委員会、児童相談所、法務局、スクールロイヤーと呼ばれる弁護士や、いじめ100番など、様々な外部機関にも相談したそうです。それでも、なぜか事態は動かず、母親も女の子も不眠が続くなど、体調を崩してしまったようです。

 

学校や加害側がいじめを否定した場合などには、被害側が、地域から孤立してしまう事態が全国の学校でもみられます。わが子に寄り添おうとした母親が、精神的にわが子と一体化し、孤立した中で自らを追い込んでしまった可能性も考えられるでしょう。

 

学校や教育委員会、また外部の相談機関が、相談に対してどう対応したのかが重要ですが、その検証はこれからです。全国の同じ業務に携わる方々には、子どもだけでなく、母親が精神的に孤立しないための支援も必要なのだと、肝に銘じてほしいと思います。

 

 

■子どもが、いじめにあった時は

 

子どもが「いじめにあった」と訴えてきた時、親はどう行動すればいいのでしょうか。まずは、落ち着いて、お子さんの話をじっくりと聞いてあげてください。一番つらいのは子ども本人ですから、まずは寄り添って安心できる状況をつくることが大切です。

 

「いじめかどうか」は少し横に置いて、「学校で何が起きたのか」を冷静に聞きだし、整理した上で、あくまで「子どもから聞いた話」として、学校に共有し、加害行為を止めて欲しいと伝えてください。いきなり「子どもがいじめられた」と責めてしまうと、学校側とのやりとりがうまくいかなくなってしまうことがありますから注意が必要です。

 

学校側の話し相手は、担任の先生でなくても構いません。いじめへの対応は、学校内で先生方がチームになって行うことが法律で決まっています。担任以外に信頼できる先生を学校内に1人は見つけておき、いざという時に相談できる関係を築くことも大切でしょう。

 

 

■いじめは、学校だけの手には負えない

 

「いじめはあってはならない」と考えるあまりに「これくらいのこと、いじめではない」と見過ごしてしまう学校が後を絶ちません。本当は、被害側の子どもが「心身に苦痛」を感じれば、いじめ、なのですが。

 

より第三者的な立場でいじめ問題の解決に動く存在を、「学校の外」に置くことが必要だと思います。例えば教育委員会の中に第三者的な「いじめ相談と調査を担う組織」を設けることも検討する必要があるのではないでしょうか。組織というほど大それたものでなくても、2~3人のメンバーを決めておくだけでも有効でしょう。

 

現在のいじめ対応は、学校だけの手には負えなくなっていると感じます。命を守るための取り組みは、待ったなしの状況です。

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元 日本テレビ報道キャスター

岸田雪子

フリーキャスター・ジャーナリスト。早稲田大学法学部を卒業、東京大学大学院情報学環教育部修了後、1993年日本テレビ入社。報道局社会部記者、政治部記者を務めた後、ディレクターとして「真相報道バンキシャ!」「N...

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