ついにJR北海道とJR九州で消滅…なぜ「車内販売」は“お荷物”扱いされるのか?

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JR九州は3月15日をもって観光列車以外の車内販売を終了する。写真は「或る列車」の車内販売

1月30日付けの東京新聞朝刊に「車内販売 絶滅危惧?」という記事が掲載された。これは、JR北海道とJR九州で車内販売が相次いで取りやめになることを受けて記事にしたものである。JR北海道では、唯一残っていた「スーパー北斗」(函館~札幌)の一部列車で行っていたものを2月28日限りでとりやめ、在来線のすべての列車から車内販売は消える。JR九州は、九州新幹線の全列車の車内販売とグリーン車のおしぼりなどの配付サービスを3月15日で終了する。これでD&S列車(いわゆる観光列車)以外のすべての列車から車内販売はなくなる。

 

JR北海道の「スーパー北斗」は2月28日をもって車内販売を終了する


以前から、車内販売は少しずつ取りやめとなっていて、在来線の特急列車で残っているのは、JR東日本の「あずさ」「ひたち」などの一部の列車と、一旦廃止したものの利用客の要望で、一部列車の一部区間で復活したJR四国だけである。東海道新幹線でも「こだま」は、すでに車内販売を中止している。


理由については、売り上げの減少と人手不足を挙げている。都会の駅では売店や駅構内や近辺にコンビニがあり、そこで乗車前に駅弁や飲食物を購入するのが一般的になっている。一部の列車内で車内販売を取りやめたあたりから、あるかどうか分からない車内販売を当てにしないで、自己防衛的に事前に飲食物を調達する傾向が強まった。また、編成の長い列車では、いつやってくるか分からず、待っていても売り切れでがっかりする車内販売に頼らない風潮もあるようだ。

 

JR四国の特急列車はユーザーからの要望で車内販売を復活させた


しかし、どの駅にも売店があるとは限らない。前述の東京新聞の記事でも筆者がコメントしたが、1時間に1本程度特急が停車する駅であっても、売店も何もない状況に遭遇してひもじい思いを経験したこともある。また、いつも時間に余裕があるわけではなく、発車間際に列車に乗り込む状況では、当然買い物をする時間はない。


1時間程度の乗車であれば我慢できるだろうが、3~4時間も飲まず食わずであれば、具合が悪くなることもあろう。夏場であれば水分不足で熱中症になってしまうかもしれない。そんな経験をすれば、次からは列車以外の乗り物を選択するであろうから、鉄道離れは加速するのではないだろうか?とくに長時間運転の特急列車が多いJR北海道では、負のスパイラルに陥っていく懸念が強い。北海道の特急では、あらかじめ注文しておけば途中駅で駅弁を取り寄せてくれるサービスがあった。長万部駅の「かにめし」はできたての温かい弁当が美味しかったので、長万部発車直後に「かにめし」を届けてくれるのは嬉しくて通るたびに注文したものだった。長万部から札幌までは2時間半近くかかるので、重宝したのである。

 

近年増えている観光列車では車内販売は健在。写真は「四国まんなか千年ものがたり」


せめて車内に飲料の自動販売機くらい置いてほしいものだが、これに関しては、売り上げが少ないことや維持の手間を考えて撤去したとのことである。それにしても飲まず食わずの状況を強いられる乗り物を好んで利用する人がどれだけいるだろうか?メンテナンスの手間がかかるからといって長距離列車からトイレをなくすのと同じことといっては言い過ぎだろうか?最低限のサービスとして維持を前提に工夫して欲しいものだ。


一部の地域で試行しているように、地元の業者が一部の短い区間に限ってでも、列車に乗り込んで名産品の販売を行うこともできるだろう。また、車内を往ったり来たりする激務を嫌って人手不足になるなら、車内にカウンターを設けて、そこで販売する手もある。いつ巡回してくるか分からないので頼りにしない人も、売店があるのなら、そこへ出向くかもしれない。鉄道会社のみに任せるのではなく、沿線の人々が協力して列車を魅力的にすることを考えてもいいのではないだろうか?


幸い、観光列車の車内販売は健在だ。列車旅を楽しむ人がメインなので売り上げも見込めるからだろうが、そうした成功体験を他の列車にも広められないものだろうか?

 

東海道線、高崎線等の普通列車に連結されている二階建てグリーン車。アテンダントが飲料や軽食の車内販売を行っている


特急列車ではないけれど、首都圏を縦横に走っているJR東日本の二階建てグリーン車は必ずといっていいほどアテンダントさんが乗務し、グリーン券のチェックを兼ねて、飲料を中心に軽食やおつまみ、お土産の販売も行っている。列車により混み具合も利用状況もマチマチだと思うが、いつまでも続けて欲しいものだ。


すべては儲かるか儲からないか次第と言ってしまえば身も蓋もないけれど、ただ座って長時間の移動に耐えるだけの乗り物となってしまうと、鉄道の魅力は乏しいものとなり、ほかの交通機関との競争力はますます弱まることになりかねない。発想を転換して、収益源を増やす手段のひとつと位置付けて積極的に商売してもらいたいものである。
 

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旅行作家

野田隆

1952年名古屋生まれ。長年、高校で語学を教える傍らヨーロッパと日本の鉄道紀行を執筆。2010年、早期退職後、旅行作家として活動中。著書に『テツ道のすゝめ』『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』『テツはこんな旅をして...

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