男性用はOKなのに「女性用アダルトグッズ」はNG…女性は性を愉しんではいけないんですか?

ライフスタイル

三浦ゆえ

表立って語られることは少ないものの、ここ10年ほどでアダルトグッズは目覚ましい進化を遂げています。見るからに卑猥で、電池で動くチープな作りですぐ壊れてしまう、路地裏のいかがわしいお店でしか売っていないから買いにくい……というのはすべて過去のイメージです。

 

特に女性を対象にしたグッズは、充電式は当たり前、アプリをインストールしたスマホと連動させて遠隔操作できる、温感センサーが搭載されていて人肌にあたためることができるなどなど、進化した点をあげればきりがないほど。(大人の)オモチャというよりガジェットというほうが相応しい存在です。

 

 

■展示資格を剥奪された女性用グッズ

 

しかし先ごろ、世界最大規模のエレクトロニクス製品展示会「CES」に出品された女性用グッズが受賞した賞を取り消され、展示資格まで剥奪されるという騒動がありました。近年はウィメンズヘルス関連、育児関連、美容関連のガジェットが出品されるケースも少なくなかった展示会だけに、このセンシティブな反応は驚きをもって報じられました。

 

対象となった「Ose」はいわゆるバイブレーターですが、記事に「根元の膨らんだ部分にはマイクロボット技術が使われており、これがオーラルセックスと同じようにクリトリスを刺激する」とあり、高度な技術が注ぎ込まれた最新鋭のグッズだとわかります。

 

この判断は女性の性そのものをタブー視する傾向がまだ根強いことを示している、と記事は訴えます。

 

そう思わせたひとつに、「Ose」の形状があるのかもしれません。記事には「灰色でペニスのような形をしている」とあります、が……これ、ペニスっぽいですかね? かつては世界中で“ペニスのような”どころか“まんまペニス”なバイブレーターが幅を利かせていましたが、この10年はあまり見かけなくなりました。女性のニーズに応えた結果だと思われます。

 

もしかすると、棒状であるだけでペニスっぽいと見ているでしょうか。女性の膣は身体でもっとも伸縮する器官といわれていますが、基本は筒状ですから、挿入をするとしたら棒状のもの以外ありえません。棒状=ペニスと見なす人たちは、たとえばサイリウムやうまい棒を見てもペニスのようだと怒るのでしょうか。

 

 

■医療現場から女性グッズが誕生する米国

 

さて、著名な展示会からアダルトグッズが排除されたというと、日本でも同様の騒動がありました。2006年のグッドデザイン賞で、展示が予定されていた「TENGA」の商品が事前に撤去されたのです。TENGAは世界的に有名な、男性用のオナカップブランドです。

 

当時、このニュースを知った筆者は、さもあらんと思いました。TENGAは従来のマスターベーショングッズのイメージを大きく覆す画期的な存在でしたが、それが性に関わる商品だというだけで、受け入れられるのはきっと大変むずかしい。日本の社会はまだそこまで成熟していないだろう、と。男性用のグッズでさえこうなのだから、女性用グッズが認められるのはいつになることやら、と気が遠くもなりました。

 

それに対してアメリカは、もっと先進的なのだと思っていました。近年は医療現場からも女性用グッズが誕生しています。性生活から長く遠ざかっていた女性や、性機能に障害がある女性が健全な性生活、性感を取り戻すことを目的に作られたもので、その効果は実験によって立証されています。

 

健全な性生活は心身の健康にいい影響を及ぼすだけでなく、パートナーとの関係にもプラスに働く。そんな考えをもとに、医療機器メーカーと医師が協同して開発したそうで、“Personal Care Device”と銘打たれています。

 

 

■女性用グッズが評価されない理由

 

こうした商品が提案され、受け入れられるぐらい社会が成熟しているのだとうらやましく感じていただけに、CESにおけるこのニュースを残念な気持ちで受け止めました。

 

しかもCESでは性にまつわるものがなんでもかんでもNGというわけではなく、過去にセックスロボットやVRを使ったポルノの展示があったそうです。こちらは主に男性の欲望を受け止めるものです。加えて、心身にハンデを持った男性が性的満足のある生活を送るために大きく寄与するものと思われます。それを実現するテクノロジーは“意義がある”ということなのでしょう。

 

それなのに、女性が性を愉しむための商品はなぜ評価されないのか。

 

男性の性に関連する製品には広く門戸が開かれていることから考えても、CESを運営する側には男性が多いと想像できます。そして一部の男性にとって女性用グッズ、特にバイブレーターは不都合な存在です。なぜなら、それがあることで女性は“男性抜きで”性的満足を得ることができるから、です。

 

「俺の出番がないこと」への恐れが、女性用グッズに対する正当な評価の妨げとなっているというのは決して穿った見方ではありません。『クリトリス革命』(大田出版)では、クリトリスオーガズムと膣オーガズムでは、前者は男性器の出番がなくとも実現可能なので男性にとって都合が悪く、常に“格下”と見なされてきたと解説されています。

 

バイブレーターは膣オーガズムをもたらしますが、男性器いらずという点では同じく男性にとって面白くないもの。展示資格剥奪の裏には、そんな“男心”もあるのではないでしょうか。

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三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~...

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