たった1週間の海外留学って意味あるの? 全学部「海外留学必修化」で千葉大がやりたいこと

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千葉大学が2020年度入学者から、全学部・大学院生の海外留学を原則として必修化すると発表。国立大学としては初めての試みに、様々な反応が出ているようです。

 

海外で活躍できるグローバル人材の育成に大学全体で取り組む姿勢を明確にし、少子化で競争が激化している学生の確保を狙う。医学部や園芸学部など幅広い学部を持つ国立の総合大学では初めての取り組みとみられる(日本経済新聞)

 

千葉大は、発信力や自己表現力・コミュニケーション力を備え、世界で活躍する「グローバル人材」の育成を進めたいとしている(朝日新聞)

などの報道に対して、

 

「学生時代に短期間でも海外に出ることはその後の人生を大きく変える可能性がある」、「日本を客観視できる良いきっかけになると思う」

 

といった好意的なリアクションがある一方、

 

「1週間から2か月程度ではただの海外旅行」

「貧乏学生の足切り施策になってしまう」

 

などの懐疑的意見も寄せられています。

 

 

■なぜ留学は重要か

 

そんな賛否両論ある千葉大学の新制度ですが、個人的には「留学は若いうちに是非ともしておくべき」という思想の持主なので、概ね賛成です。というのも、ヨーロッパに住んでいて常々痛感するのが、こちらでは思考回路が180度異なる国々が肩を寄せ合っており、異文化間コミュニケーションや異文化摩擦は日常茶飯事であるということ。

 

例えば私の移住先のオーストリアは7か国と国境を接しており、中欧というロケーションがら、東~南方面からは元共産圏の出稼ぎ労働者や難民などが、南西方面からはレストランやアイスサロン経営に精を出す陽気で大雑把なイタリア系、西~北方面からは同じドイツ語圏のオーストリアでの就学・就職を目的とした四角四面なゲルマン系等と、実に多様な文化的背景を持つ人々が活発に行き交っています。

 

この状況はその他の欧州諸国においても大同小異で、子供の頃より自分とは異なるバックグラウンドを持つ人々と日々触れながら、自己のアイデンティティを再認識する行為が自然とできており、国際コミュニケーション力も必然的に高められる環境が形成されています。

 

翻って、良くも悪くも島国育ちの日本人は自発的に外に出ていかない限り、井の中の蛙と化しやすく、国際レベルで見た場合には、どうしても異文化に対する免疫力や、国際的な場での発言力・競争力が弱くなってしまいがちなのは非常に残念なところ。学生時代に多少の無理をしてでも留学し、背負っているハンディを少しでも軽減させていくのは肝要かと思われます。

 

 

■国際教養学部以外の生徒にも留学は必要?

 

千葉大学が2016年より国際教養学部で先行して取り入れていた留学の必修化ですが、これを同大学の医学部を含む全学部にまで適用したことは英断と言えるでしょう。

 

というのも、国際教養を学びたい生徒は元々海外に興味があることがほぼ前提ですが、海外や語学とは関係のなさそうな学部の生徒ほど、後々国際的な場で頭を打つことがあるからです。

 

例えば医学関連の学会にしても、「日本人は興味深そうな研究テーマを発表しているが、発表者の英語が理解できない」という外国人の意見はよく聞かれるもの。私自身も、学会の質疑応答の場で、質問者の英語が聞き取れない、もしくは英語で回答できない日本人医師が右往左往するという、なんとも居心地の悪い場面に遭遇したことがあります。

 

また医学に限らず、最先端の技術や学術論文などは英語で提供されるケースがほとんどと聞きますし、あらゆる分野で英語は欠かせないコミュニケーションツールとなっているのが実情。学部や専攻に関わらず、視野を広げたり、語学力を養ったり、国際的なネットワーキング力を付けさせておくのは賢明な判断と言えるのではないでしょうか。

 

 

■短すぎる留学の意義と遅れをとる日本の留学制度

 

「留学」と一言にいっても、言語習得を掲げた「語学留学」、高校卒業や大学の単位取得を目的とした「アカデミック留学」、異文化に触れる「交換留学」など様々な種類があります。今回の千葉大学の制度は1週間から2か月とかなり短期間ですので、恐らくは異文化交流も含めた語学留学の系統ではないかと思われますが、この短期間で「グローバル人材の育成を図る」とするのに少々無理があるのは誰しも感じるところでしょう。

 

しかし重要なのはその後で、この経験が起爆剤となって生徒たちが異文化に興味を持ったり、海外視点を育んでいく可能性を考えれば、十分前向きな試みと捉えることができます。

 

ちなみに私のオーストリア人の夫は、15歳のときに学校の学年全体でマルタ共和国(英語圏)に数週間の交換留学をしていました。現地では午前中に英語の授業、午後は現地校の生徒たちと遺跡・博物館見学やスポーツなどのアクティビティをともにする時間が設けられており、英語で異文化交流せざるを得ない環境が作り出されていたそうです。

 

また時期をずらして、今度はマルタの生徒たちがウィーンにある夫の学校を訪問し、同じことをドイツ語で行っていました。これがオーストリアとマルタでは数十年前に普通に行われていたのですから、同様のことを現在になってもまだ大学レベルで導入開始しているようでは、日本が他国の後塵を拝しているのは明らかです。

 

とはいえ、日本でもようやくグローバル人材を育成し、国際競争力を高めるべく、国立大学までもが留学推進に舵を取り始めたのは、大変な進歩であると言えます。

 

一個人としては、大学からと言わず、多感な思春期以前の留学を必須とするような国公立高校がもっと出て欲しいですし、その布石のためにも来年度から取り組まれる千葉大学の学生たちには是非とも頑張って成果を出していっていただきたいと願います。

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ライジンガー 真樹

All About「オーストリア」ガイド、ダイアモンド社 地球の歩き方「ウィーン特派員」。 ウィーン移住をきっかけに、オーストリアの歴史・文化・グルメなどの魅力を日本の人々にも伝えたいと願い、CA乗務の傍ら旅行...

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