「カレー=茶色」「カレー=男子」はもう古い!? 青文字系モデルもハマった“2019年カレーブーム”の正体

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日本テレビの情報番組「バゲット」(月~木曜日 朝10時25分~11時30分放送)では毎週水曜日に「水曜日はカレーの日」というコーナーを展開。“2019年版カレーブーム”を紹介している。左から、日本テレビ・中野謙吾アナウンサー、上重聡アナウンサー、モデルの村田倫子氏

 

この数年、スパイス&ハーブ関連のブームが毎年のように起きています。2016年にはパクチーの存在感が注目を集め、2017年には「大阪スパイスカレー」がブレイク。そして2018年に訪れた何度めかの激辛ブームでは、山椒のしびれの「麻」という新たな要素が加わりました。そして2019年、日本におけるスパイス&ハーブは生活に根ざし、文化へと成熟しつつあります。


日本におけるスパイス&ハーブは、カレーなしには語れません。それではこの約100年、カレーはどういう歴史をたどってきたのでしょうか。駆け足ではありますが、振り返ってみたいと思います。

 

 

■戦前、ハイカラな食べ物の象徴だったカレー

 

明治維新とほぼ同時に日本に入ってきたカレーはそれから50年が経過した大正時代中頃――つまりいまから100年ほど前には、飲食店のメニューとしても定着しつつありました。その頃は専門店などほとんどありません。


現在、スマトラカレーの名店として知られる1924年創業の「共栄堂」(神保町)の初代店主は『南洋年鑑』を記した伊藤友次郎に教えを乞い、カレーを洋食のメニューに加えたと言います。またパンの中村屋は、1927年に喫茶部を創設し、「新宿中村屋」(新宿)としてカレーの提供を始めました。

 

出典:自由軒HP


その頃、大阪では1926年に「明治軒」、1933年の「山守屋」といった洋食店が開業。いずれの店も現在でもカレーを提供しています。そもそも大阪のカレーと言えば、1910年創業の「自由軒」も欠かせませんし、昭和の初頭には大阪・阪急百貨店の食堂でライスカレーが爆発的な人気を博した歴史もあります。明治~戦前は洋食店などでハイカラな食べ物としてカレーが提供されていたのです。

 

 

■戦後、カレーはインドに立ち返る

 


戦後になるとカレーは洋食店からインド料理店へと川の流れを遡上します。大阪ではインド人から味を学んだという「インデアンカレー」が1947年に創業、東京では1949年の「ナイルレストラン」(銀座)や1951年「ムルギー」(渋谷)といったインド料理店がオープン。インドカレーが人気を博しました。

 

 

■外食元年前夜。大手のカレー専業店立ち上げ


1960年代にはより大きな規模の企業がカレー事業に参画します。1968年には東京の京王電鉄が「カレーショップC&C」を創業。はからずも同年北海道の藤森商会もカレー専門店の「インデアン」を開店させています。C&Cは東京・新宿を中心としたビジネスマンのランチの強い味方に。十勝のインデアンはいまも夕食や催事の前には鍋で持ち帰る人もいるほど地域に愛されています。

高度成長期に立ち上げられた両チェーンは、いまもローカルチェーンとして地域の人に愛されているのは不思議な符合。ちなみにカレー店としては店舗数世界一のカレーハウスCoCo壱番屋の1号店がオープンしたのは1978年のことでした。

 

 

■昭和後期、次代を担うカレー店続々

 


1973年「ボンディ」(神保町)、1975年「夢民」(高田馬場)、1978年「まめ蔵」(吉祥寺)、1983年「メーヤウ」(信濃町)、1988年「エチオピア」(神田小川町)など、後に名店と謳われるカレー店が昭和後期に続々オープン。この頃から「欧風カレー」「タイカレー」などカレーのバリエーションが増えてきます。一方、平成に入ると「藤(ふじ)」(早稲田)のように地域で愛された名店の閉店も見かけるように。

 

 

■カレーの香りが花開いた21世紀

 

出典:古奈屋HP


世紀をまたいだ2001年に横浜カレーミュージアムがオープン。前述したような昭和後期から平成初頭にオープンした店舗に注目が集まります。和の素材を取り入れた「たんどーる」(沼袋※現・初台)のように独自路線を進む店の人気が高まり、カレーうどんの「古奈屋」(巣鴨)、スープカレーの「マジックスパイス」(札幌)など「カレー」とひとくくりにはできないほどさまざまなカレーがたくさんの人の口に届くようになりました。日本のカレーに多様な香りと味わいが花開いたのは意外と最近のことなのかも。

 

 

■ルーツ深掘りから高次元融合まで、現代カレー天国

 

カレー好きで知られるモデルの村田倫子氏。バゲットの「水曜日はカレーの日」に出演。citrusの姉妹サイト「チルテレ」で「村田倫子のカレー研究所」も連載中

そして現代では、南インドやスリランカなど、さらに現地の奥深くに分け入ったような本場系カレーや独特の進化を遂げた発展形カレーにそこかしこで巡り会えるようになりました。

 

いまや超人気店となった東京・大久保の「SPICY CURRY 魯珈」。カレーと魯肉飯(ルーローハン)のあいがけ「ろかプレート」が名物。写真右は店長の齊藤絵里さん

もはや「カレー=茶色」「カレー=男子」とは限りません。このところ朝の情報番組「バゲット」にカレー好きで知られる青文字系モデルの村田倫子さんがコーナーを持って、人気のカレーを紹介されています。絶品スリランカ料理で旋風を巻き起こしている「バンダラランカ」(四谷三丁目)のカレーを美しく盛る技やら、もはや都内を代表する行列店となった「SPICY CURRY 魯珈」(大久保)のカレーと魯肉飯(ルーローハン)のあいがけの「ろかプレート」、さらには天才的にやさしいスパイス使いの「サンラサー」(東新宿)などスパイス&ハーブのすそ野の広がりが感じられるセレクトでお昼前の胃袋を刺激してくれました。
 

 

四谷三丁目の「バンダラランカ」。本場のスリランカ料理が楽しめる専門店として話題

東新宿の「サンラサー」はやさしいスパイス使いが評判

ブームやトレンドは繰り返されることで日常に定着します。そこから周辺や彼方に伝播し、継承されたものが上書きされる。そうして花が開き、また新たな種が蒔かれます。2019年は新たな元号がスタートする年。日本のカレーが成熟を迎える2019年は、スパイス&ハーブ文化元年になるのかもしれません。
 

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フードアクティビスト

松浦達也

フードアクティビスト/編集者&ライター 『dancyu』などの食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオでの食トレンド...

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