なぜ新型スープラは「トヨタGRスープラ」と名乗るのか?

車・交通

 

1月のデトロイトモーターショーで16年ぶりの復活を果たしたトヨタ「スープラ」。日本仕様はスペックが発表されただけで価格などは不明だが、筆者は昨年末にサーキットで行われたプロトタイプ試乗会に参加しているので、概要とドライブフィールは記憶している。それを踏まえて言えば、まずスタイリングはもう少し大人っぽくしてほしかった。

 

新型スープラはBMWの2人乗りオープンスポーツカーZ4と共同開発され、オーストリアで生産される。今のトヨタのラインナップにはない直列6気筒エンジンを前に積み、後輪を駆動するという初代以来のパッケージを踏襲したいという気持ちが、BMWとの共同開発に行き着いたそうだ。

 

たぶん開発費削減は見込めるだろう。でもプレミアムブランドとメカを共通しヨーロッパで生産するというプロセスは、コスト面では有利とは言えない。基本構造を共有するBMWに近い価格になる可能性もある。それを頭に入れると、ボディ各部にダクトやルーバーを開け放ち、前後のフェンダーを大胆に盛り上げた造形は、車格にふさわしい落ち着きが感じられなかった。

 

 

その思いをさらに強くしたのが1月末、某誌の取材でフェラーリ812スーパーファストに乗ったときだった。

 

価格は4000万円、エンジンは6.5リッターV型12気筒で800psだから、新型スープラとは立ち位置が違いすぎる。でもダクトやルーバーは極力目立たせず、エアロパーツやフェンダーの張り出しは控えめで、FRスポーツカーとしての美をシンプルに研ぎ澄ませた姿からは、車格を超えたスポーツカーの機能美を感じた。トヨタがスープラを本格的なスポーツカーとして育てていくつもりなら、こうした作例も参考にすべきではないかと思った。

 

 

Z4と設計を共用化した結果、キャビンは歴代スープラで初めてリアシートがない2人乗りになった。コンセプトがピュアになったと歓迎する人も多いようだ。ただ直列6気筒と同じように、リアシートを備えてきたこともスープラの伝統である。個人的には使い勝手を左右するこの面は継承してほしかった。

 

エンジンは3リッター直列6気筒ターボのほか、日本では2リッター直列4気筒ターボも用意されることになった。スープラ初の4気筒ということになるけれど、かつては直列6気筒にこだわりを見せたBMWも今では4気筒がスタンダードになっているし、時代の流れかもしれない。

 

サーキットで乗ったプロトタイプは6気筒で、スタートボタンを押すと低い唸りのアイドリングを聞かせ、コースへ出てアクセルペダルを踏み込むと、長くてバランスの取れた直列6気筒のクランクシャフトが生み出す滑らかな吹け上がり、重厚なサウンドとともに、力強く息の長い加速が堪能できる。

 

コーナーへの進入では、長い直列6気筒エンジンを積んでいるとは思えないほど軽快に向きを変える。ただ立ち上がりでは、雨の中での試乗だったこともあって、後輪が唐突に滑りがちだった。市販型では改善される可能性があるけれど、トヨタのスポーツカーとしては辛口のチューニングだと思った。

 

 

そういえば新型スープラ、ル・マン24時間レース優勝や世界ラリー選手権タイトルを獲得したTOYOTA GAZOO Racingが2017年に立ち上げたスポーツカーブランド「GR」のグローバル展開車第一弾とアナウンスされており、正式車名はトヨタGRスープラになるという。

 

ただGRブランドの中で、トヨタの次にGRの文字が入るのはスープラだけで、昨年発表されたそれ以外の車種については86GR、ヴィッツGRのようになっている。またGRブランドには最高峰としてGRMN(MNはマイスター・オブ・ニュルブルクリンクの略)があり、ヴィッツとマークXに設定している。

 

とにかく新型スープラは、これまでのトヨタやスープラの常識に当てはまらない部分がいくつもある。ただそう思うのは、自分が昔を知っているからかもしれない。昔にこだわらない人のほうが、このスポーツカーにスッと入り込めそうな気もする。いろんな意味で変わりつつある今のトヨタを反映したスポーツカーと言えるかもしれない。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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