医者が教える「ダメ医者」を見抜く方法

コラム

医師 富永喜代

 

 

痛みで苦しまない人生を医学で導く痛み改善ドクター、富永喜代です。富永ペインクリニックには、長年痛みで悩んでいたり、あの病院、あの治療を受けても痛みがとれなかったと訴え、来院される患者さんが多くいらっしゃいます。

 

 

そのような方には初診時に、「今までどのような治療を受けてきましたか?」と伺うのですが、私が問診していて、当院を受診する前に受けていた治療成績が見事なほどに悪い患者さんたちに共通することがあります。

 

 

それは、「大丈夫、私が絶対治してあげるから」と発言する医者にかかっていたということです。

 

 

 

患者さん達は医者にこう言われ続けてきたのに、一向に治らないから当院を受診されているわけですが、「なぜ、治らないのに、長年、通い続けたのですか?」と質問すると、多くの患者さんはこう答えます。「だって、先生が絶対治るから、絶対治してあげるから、とおっしゃっていたから。それを信じて」と。

 

 

その言葉を聞くたびに、私はう~ん、と頭を抱え込みます。なぜ、一向に症状が改善しないのに、この方は通院を続けたのだろうか?と。

 

 

 

ある方など、痛みを訴えて診療所を受診したにもかかわらず、「痛かったら、この薬をその都度飲むように」と渡されたお薬は、アレルギー性鼻炎の薬だけでした。それでもその患者さんはちょっとおかしいなと思いつつ、10年通い続けていたそうです。一向に治らない頭痛を訴え続け、処方された薬がアレルギー薬の頓服だったなんて、にわかには信じられないような話ですが、当院では時々聞いてしまうお話です。

 

 

その患者さんは、医者を信じこんでしまったのでしょうか? 田舎過ぎて、他に医者がいなかったのでしょうか? しかし、その方は50代で判断力は高い方です。また、それほど超田舎の僻地に住んでいらっしゃる方でもないようです。

 

 

 

では、なぜ効かない薬を飲み続け、他の治療方法を模索しなかったのでしょうか?

 

 

私は、この患者さんは、痛い、辛いという症状に悩んでいるので、この症状を治せると言い切る医者が欲しかったのではないか、と考えています。

 

 

「この薬や手術はこんな副作用も出る場合もありますが、あなたの症状ならガイドラインでこの治療方法が推奨されていますので、成功率は〇%の治療を進めます」

 

 

このように、本来、インフォームドコンセントといって、医療従事者側と患者さん側、双方の同意を得て医療は治療を進めるのです。

 

 

 

しかし、患者さんが欲しいのは、「私の症状が治るのか、治らないのか?」。その情報、ただその一点です。

 

 

医者が絶対治す、と言っているのだから、いつかは治るに違いない、と妄信してしまい、一番大切な症状改善度の評価が甘くなっていたのでしょう。

 

 

絶対治りたい、と思うのは人情です。しかし、この患者さんは“情”で動いた結果、「絶対治る」という甘い言葉に誘惑されたことに気づかず、治療を長引かせ、大切な時間をロスさせてしまいました。

 

 

 

医学は科学です。

 

 

一方で、症状や治療成績は個人差や医療側の力量に左右され、将来のことである治療結果は確率論でしかいえないこともあります。

 

 

しかも早期がんを早期に見つけ、適切に手術したとしても、100%の人が生き残るわけではありません。反対に、もうこれは手の施しようがない末期のガンだ、と宣告を受けたにもかかわらず、10年以上生き延びている人を私は2名知っています。

 

 

患者さんは、医者に「あなたは絶対に治る」と言ってほしいのです。そして、そう答えることが名医だと考えられた時代もありました。しかし、医学における治療は侵襲性を伴う以上、患者さんの同意なくして成立しないものです。

 

 

そして、患者さんはその治療に同意するということは、治療に医者と一緒に参加して、その治療選択に責任を負う、という意味でもあります。治療方法の医者への丸投げは、患者さん自身の病気に対する責任放棄と一緒です。医学知識を知らなかった、では済まされないのです。

 

 

自分の病気は自分で治す。

 

 

長寿社会といわれる日本。健康で健やかに自分らしく生きる健康寿命を延ばすのは、あなた自身の決断である時代が来ています。

 

 

※情報は2019年3月14日現在のものです

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