“高級スタバ”にはどんな客がやって来るのか?

ビジネス

 

女性がホワイトデーにもらって嬉しいものの中に、上位ではないものの「スターバックスカード(プリペイド)」があった。それだけ女性にとって、スタバの存在が大きいことを意味している。お洒落でセンスが良く、利用することはステータスでもある。その空間にいることが、至福の刻なのである。

 

そんなスタバが、東京・中目黒に“高級旗艦店”と位置づける「スターバックスリザーブロースタリー東京」をオープンさせた。木材とガラスを組み合わせた現代的なデザインの外観は、建築家・隈研吾氏によるもの。店内は、折り紙や桜など、日本的なモチーフをあしらい、木材を多く使った明るい空間となっている。

 

4階建ての店内には、大きな吹き抜けがあり、高さ17メートルのコーヒー豆の貯蔵タンクが建っている。その横では巨大な焙煎機が稼動し、建物内に張り巡らされたパイプの中を焙煎された豆が流れている。この場所は「焙煎所」でもあり、コーヒー豆の焙煎から袋詰めされるまでの工程を見ることができる体験型施設でもある。1階は焙煎所兼カフェペース。2階は中国茶や紅茶をアレンジしたドリンク中心のフロア。3階ではコーヒーを使ったカクテルなどのアルコールが楽しめる。4階は、コーヒーにまつわるワークショプやイベント用のコミュニケーションスペースとなっている。

 

 

■コーヒー1杯1200円超の意味

 

既存のスタバと大きく違うのは、“高級”である点。従来のスタバも充分に高級なのだが、さらに上を行くハイスペックである。建物や内装も高級なのだが、もっとも驚くのは価格。バーボンウイスキーの樽で熟成させたコーヒー豆から抽出した「バレルエイジドコールドブリュー」は、1杯1200円(税抜)。ムースフォームとコーヒーが2層になり、シナモンをアクセントにした「アイスマキアートコンクレマ」は、1杯850円(税抜)。他のドリンク類もあるが、主な価格帯はほぼ900円以上と、もはやカフェというより高級ホテル。

 

なぜ、ここまで高価格の高級店を出店したのか。その目的は、有名建築家を起用し、ホテルライクな空間を創り、そこで挽きたてのコーヒーを楽しませることで、ブランドの価値を高めようとしているのである。現在、日本におけるコーヒー専門店の市場規模でスタバは第1位だが、第2位にドトール、第3位にはタリーズコーヒーが迫る。客層の違いはあるものの、今後、いつ逆転するかわからない。第1位を確固たるものとするためには、スタバの価値をさらに高めることが重要なのである。

 

価格を大きく上げることは、マーケティング戦略としても、ある意味正解なのである。平均的な価格より少し高い程度では、ただ「高いなぁ?」となるが、コーヒー1杯1200円と言われれば、驚きとともに「どんな味だろう?」「どれだけ違うのか?」のほうに興味を持ってしまう。興味を持たせることができれば、マーケティング的には第1段階をクリアできたことになる。まずは知らせること、知ってもらうことが重要なのである。“新しいスタバができた”というだけのニュースより、“コーヒー1杯1200円”の方が強烈なインパクトがある。人を惹きつけるのである。これが、新たなスタバの付加価値となる。

 

 

■高級スタバの固定客とは?

 

では、“高級スタバ”にはどんな客がやって来るのか。スタバと言えば、コーヒーのプロ「バリスタ」が1杯1杯丁寧に淹れてくれて、スマートな接客で贅沢なひとときを過ごすことができる。ハイチェアやソファなど好みの椅子に座り、本を読んだり、もの思いにふける。そんな時間を求めてやって来るのは、ほとんどが「スターバックスマニア」という存在。本当にスタバを愛する人たちである。

 

だが、時にスタバのステータスに酔いしれるためだけに来る客もいる。「私ってお洒落でしょ!」「僕ってイケてるでしょ!」という意識の人たち。「スタバかぶれ」と言っても良い。「窓際の席に座り、MacBookを開いている、意識高い系」と揶揄される人々だ。

 

こういう人たちは目立つのでスタバの象徴であるかのように言われるが、そんな人たちを生理的に嫌う人も多い。これが原因で、店の良し悪しに関係なく、「スタバ嫌い」になってしまうのである。では“新しい”客層はどうか。オープン当初は話題性も手伝って「スタバマニア」や「スタバかぶれ」以外の人が押し寄せる。コーヒーのテーマパークであるかのようなエンターテインメント性は、観光地にも似た集客力を持つ。問題は、注目度が落ち着いてからである。その時点で残る客層はいかに。

 

挽きたて・淹れたてのコーヒーが飲めるのは、マニアならずとも魅力的ではある。だが、継続性は期待できない高価格。お洒落ではあるが落ち着いた雰囲気とも言い難い店内。例えマニアでも日常的に利用する店にはなり得ない。結局、“いつものスタバ”に行くのだろう。

 

よって、高級スタバを継続して利用するのは、「スタバかぶれ」ではないかと推測する。見栄を張るため、インスタ映えのためには、多少の出費はいとわない。その空間に存在する自身に酔うことに幸せを感じる。そんな“かぶれた人たち”だけが固定客になる可能性は高い。

 

観光地化した今は集客できているとしても、近い将来を見据えて“本物の客”に来てもらえるよう軌道修正する必要があるのではないか。ブランド価値を高めることを目的としながら、逆に価値を下げることにならなければ良いのだが……。

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コンサルタント

佐藤きよあき

1961年兵庫県生まれ。広告デザイン会社にコピーライターとして勤務の後、プランナー・コピーライターとしてフリーランスに。モノづくりへの興味から、仕事を継続したまま、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手...

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