【今週のアッパレ】笠松競馬場の公式アカが内定者にtwitter上で教育的指導

人間関係

 

トホホなニュースが多い世の中ですが、怒っていても疲れるだけ。攻撃より称賛を。イラッとよりニコッとを。ニュースで見つけた「アッパレ!」なフレーズにスポットを当て、そのまぶしい照り返しを堪能し、明るく楽しい気持ちになってしまいましょう。

 

 

第2回
これをパワハラと非難する側の愚

 

「研修担当です。現時点で、すでに『下手なこと』をやってしまっていることに気が付いてください」by笠松競馬場twitter公式アカウント

 

【3つのアッパレポイント】
・心得違いを諭し反省のチャンスを与えている
・公の場で対応することで第三者も安心させた
・覚悟の上で先輩として言うべきことを言った

 

ご承知のとおりtwitterというツールは、人間のマヌケさや世の中の歪みをあぶり出してしまいます。いっぽうで、人間の素晴らしさや世の中の救いのようなものを感じさせてくれることもあります。笠松競馬場の内定者のちょっと残念なtweetと、ビシッと諫めた研修担当者のtweet、そしてそれをめぐる騒動は、そのすべてを見せてくれました。

 

今回の件で、全力で着目し全力で称賛したいのは、勇敢な投稿をした笠松競馬場の研修担当の人のtweetです。たぶん批判や処分は覚悟の上で、これを放置しておくわけにはいかないとあえて書き込んだのでしょう。うっかりなtweetをした側については、笠松競馬場関係者ではない私たちとしては、まあ苦笑いで済ませれば十分です。

 

発端は、内定者と思われるユーザーが3月23日に「(笠松競馬場に)運良く引っ掛かりましたので、色々とチャレンジしてみたいと思います!」とtweetしたこと。それに対して笠松競馬場の公式アカウント( @kasamatsukeiba )が25日に「研修担当です。当方は、あたなたを『引っ掛けた』つもりはありません。その表現は、あなたに期待して採用する側としては、いかがなものかと考えます」と、諫めるリプライを送りました。

 

また、同じユーザーによる「半年は仮採用なので下手なことは出来ないんですが、本採用になったら、はっちゃけたいと思ってます」という投稿に対しては、こう返します。

 

「研修担当です。現時点で、すでに『下手なこと』をやってしまっていることに気が付いてください。頑張る気持ちは受け入れますが、半年後に『はっちゃけ』の予告をされると、当方には警戒しかありません。4月1日に『はっちゃけ』とは何かを聞かせてくいださい」(原文ママ)

ほかのリプライでも「あなたは私の研修で何を聞いていましたか?ツイッターの個人アカウント上で公営競技に携わる公務員であることを世界に発信するリスクを、どよのうに考えているのですか?」などと、内定者に苦言を呈しています。

 

 

■ちゃんと言ってあげるのは親切でやさしい対応

 

どうやらちょっと調子に乗り過ぎている内定者に、何がいけないのかを指摘して反省を促す――。黙って見逃してもそれで済む話ですが、わざわざ言ってあげているのは、かなり親切な対応と言えるでしょう。そして、水面下で内定を取り消すという選択肢もありそうですけど、反省するチャンスを与えているのは、かなりやさしい対応と言えるでしょう。

 

公けの場で注意したことを批判する声もありますが、この段階では個人を特定できなかったので、tweetへのリプライで指摘したとか。また、内定者の一連のtweetは、それを見た競馬ファンに「笠松競馬場って、大丈夫?」という不安を与える内容でした。悪い人が見たら「こいつ、利用できそうだ」と思ったかもしれません。公式アカウントでビシッと言ったことで、公営ギャンブルの運営というデリケートな役割を担っている笠松競馬場への信頼を守った節もあります。

 

その後の報道によると、笠松競馬場は個別に本人に伝えるべきだったと釈明し、tweetした研修担当者の処分も検討しているとか。ただ、投稿内容については「常識的な範囲」と認識しているようです。騒ぎになったから、いちおう「処分も検討している」と言っているだけと信じたいところ。もし実際に重い処分を下したとしたら、けっこうガッカリです。

 

そして諫められた内定者も、間違っても内定を辞退したりせず、4月1日からはちゃんとがんばって働いてもらいたいものです。信頼を取り戻すのはかなりたいへんでしょうが、こんなやさしい先輩がいるんですから、きっと大丈夫。なぜ注意されたかしっかり理解していることを示せば、むしろ周囲に認めてもらいやすい恵まれた状況とも言えます。

 

 

■これが「パワハラ」と非難される残念な光景

 

この騒動でもっとも残念だったのが、笠松競馬場のtweetに対して「パワハラだ」という非難がたくさんあったこと。たしかに明確な苦言ですが、これをパワハラと言いたい人は、自分が何かミスをしたときに、ちゃんと注意してもらうことを望んでいないのでしょうか。上司や先輩としては何も言わずに見捨てるほうが楽ですが、そうやって反省のチャンスや成長のきっかけを与えてもらえない人生を送りたいのでしょうか。

 

まあ、これを「パワハラ呼ばわり」しているのは、きっと働くということがよくわかっていない学生さんがほとんどでしょう(そうであってほしいです)。いや、べつに「社会は厳しいんだ」と言いたいわけではありません。仕事を通じて成長する喜びを感じたことがないから、猫なで声や悪いことを悪いと指摘しない対応こそが「やさしさ」だと思ってしまうんだなと、ご同情申し上げる次第です。この先、その甘ったれた了見がいかに恥ずかしくていかに自分にとって損か、お気づきになる日が来ることをお祈りいたします。

 

パワハラにせよセクハラにせよ、どんな「ハラスメント」もあってはならない非難すべき行為であることは言うまでもありません。いっぽうで、何でもかんでも「ハラスメントだ!」とレッテルを貼るのは、とっても簡単に「正しい側」になれる、とっても気持ちいい、それだけにとっても危険な行為です。笠松競馬場のtweetに対する反応に「パワハラ」という言葉がたくさん使われていたのは、しみじみ残念な光景でした。

 

とはいえ、残念なだけはありません。「パワハラ呼ばわり」をする人以上に、「おいおい、これのどこがパワハラだ」と反論する人もたくさんいたことは、まだまだ世の中は大丈夫と希望を持たせてくれる明るく光景でした。そう思わせてもらえたのも、「パワハラ呼ばわり」してくれた人たちのおかげ。もしかしたら「パワハラ呼ばわり」していた人たちも、ある意味アッパレと言えるかも……と、無理にホメてみました。

 


【今週の教訓】
安易なハラスメント呼ばわりの広がりは本当のハラスメントに苦しむ人にとっては迷惑

 

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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