女の敵は、女だった…? 生理休暇をめぐる「温度差」で女の闘いが勃発
「はぁ? また生理休暇とかって、ワケわかんないんですけど…」
育児のために時差出勤している時短ママN美(36歳)が、待ち構えていたかのように定時出社した私のもとに駆け寄り、怒りに震える声で訴えた。
今月は今日で2日目か……、彼女がキレるのもわからないでもない。
普段は天真爛漫な元気キャラのR香(28歳)だが、生理痛が重い体質らしく最低でも月に1日は生理休暇を取る(もちろん有給休暇も惜しみなく)。R香と2人体制で経理事務をまわすN美にしてみれば、毎月の恒例行事とはいえ、今月のように月末に休まれてしまうとたまったものじゃない。保育園のお迎え時間に間に合わせるために誰よりも早く出社して繁忙期を乗り切ってくれる彼女に「R香の分まで残業お願いね!」とは、上司の私は口が裂けても言えない……。
生理痛が辛い女性の苦しみを認めないわけではないけれど、こうも度重なると本当だろうかと訝しんでしまう。「あの子はただ、サボりたいだけなのでは…?」と。
■想像以上に低い? 1%にも満たない生理休暇の取得率
R香のように、生理休暇をしっかり(ちゃっかり?)活用して職場の空気を凍らせるケースの一方で、その取得率は1%にも満たないのが実情。
女性労働者がいる事業所のうち、平成26年4月1日~平成27年3月31日までの間に生理休暇の請求者がいた事業所の割合はたったの2.2%。今から10年前(平成19年度)が5.4%だったことからも、生理休暇の取得率は年々下降の一途(※1)をたどっていることがわかります。
取得しない(できない)理由としては、人手不足のなか生理休暇を取る罪悪感、生理であることを知られたくない・恥ずかしい、サボっていると思われそう、男性が多い職場では理解してもらえないのでは…など“心理的ハードルの高さ”がうかがえる回答が目立つのは、想像通りの結果といえそう。
結局……、「痛み止めを飲んでやり過ごす」とか、途中下車を繰り返しながらの電車通勤を強いられるなど努力や根性で乗り越えるほかないのでしょうか?
■毎月の生理でツラくならないためにできること
そもそも、生理をタブー視する傾向が強い日本で「生理休暇」なんて直接的なネーミングで浸透するとは到底思えませんが、驚くことに生理痛(や、それに伴う不調)による経済的損失は約4911億円/年(※3)とも……。その点、生理のみならず女性特有の不調や普通の有給休暇もすべてひっくるめて「エフ(= female)休」と呼び名を変えて、ちゃんと“使える制度”にチューニングしたサイバーエージェントの取り組みは、女性に寄り添ってくれている感じがして好感が持てます。
こうした企業側の努力が求められる一方で、「働く女性ひとりひとりの心がけや工夫も大切」と語るのは、医師の山本佳奈さん。
女性にとって当たり前のものだからこそ、日常生活が困難なほどの生理痛に見舞われ続けても、耐え続けているケースは少なくありません。
辛い症状が実は、生理に伴うものではなく子宮内膜症など治療を要する病気のサインである場合もありますし、日本人にとっては「避妊」目的のイメージが強いピルも、月経前困難症の改善に効果的です。「辛い」と感じたら、まずは婦人科を受診して相談してみることをおすすめします。
それでも体調不良で出勤がままならない時もあるでしょうから、日ごろから同僚とのコミュニケーションや助け合い精神で気持ちよくフォローしあえる関係性をつくることも大切です。
毎月のことだから……、恥ずかしいから……、と我慢している自分に気づいたら、まずは自分のカラダを見つめ直してみてはいかがでしょうか。
※情報は2019年4月2日現在のものです
※1 厚労省平成 27 年度雇用均等基本調査」の結果概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-27-07.pdf
※2全労連女性労働者の健康・労働実態及び雇用における男女平等に関する各項目
http://www.zenroren.gr.jp/jp/jyosei/2008/data/tyousa/01-02_03.pdf
※3健康経営における女性の健康の取り組みについて平成30年7月経済産業省ヘルスケア産業課
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf