ゲイカップルのドラマ『きのう何食べた?』が素晴らしすぎる理由

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出典:「ドラマ24 きのう何食べた?」公式サイトより

「ヒットがみえるエンタテインメントビジネス誌」を謳う『コンフィデンス』のネット版によると、『テレ東ドラマ24』の最新作『きのう何食べた?』が同誌の4月期ドラマ期待度調査で、深夜枠ながら6位をマークするなど、早くも話題になっている……らしい。

 

『モーニング』(講談社)で好評連載中の同名漫画(作画/よしながふみ)を原作に、弁護士と美容師の中年男性カップルの二人暮らしを、日々の食卓の風景を通して丁寧に描かれた作品で、セクシャルマイノリティをテーマとするデリケイトな内容ゆえ、「品を崩さないことはとても重要だと考えています」と、『コンフィデンス』のインタビューに応じた同ドラマのプロデューサーである松本拓さんも語っており、少なくとも第一回目のオンエアを観るかぎり、その意志意向は十分に反映された仕上がりとなっている……印象を受けた。

 

私は、この『きのう何食べた?』に関しては、モーニングで連載がはじまったころからの大ファンで、単行本は全巻揃えている。ゲイカップルの平凡な日常を、“自炊”シーンをメインとし、淡々と描写するだけで10数ページもの一話完結の物語をコンスタントに成立させ、しかもモーニングという専門誌ではない一般誌の大半を占めるであろう“ノンケ”男性読者にもギリギリのラインで違和感なく一気に読ませるそのズバ抜けた構成力と画力は、一応、漫画原作の経験もある“同業者”(←私)の目線からしても、並大抵ではない──漫画に携わる一人として「教則本」とすら呼べる名作なのである。

 

あと、単純に私をも含む、けっこうな頻度で自宅で料理をつくる者にとって、毎回秀逸なレシピが登場するのもありがたい。それも食材や道具に金を惜しまない独りよがりな男料理とは一線を画す、1ヶ月の食費を2万5000円に抑えた「おうちご飯」。煮干しや鰹節とかからガッツリとダシを取ったりするのではなく、スーパーの店頭で安売りされているダシ醤油を躊躇なくどんどん使用するのもいい。私もレシピを真似て、何品かにチャレンジしてきたが、特殊なテクニックを要する料理はほぼ皆無なので、現時点で“大失敗”は一度もない。

 

いずれはどこかの地上波がドラマ化するに違いないとは前々から予測はしていたものの、ドラマ化や映画化において、漫画や小説の原作を見る影もないほどズタズタに改ざんしてしまい、“まったく別物の新しい作品”へとつくり替えてしまうケースが多いなか、本ドラマはかなり原作に忠実だ……と思う。下手にいじくって原作の繊細なテイストを台無しにする“最悪の事態”を避けるには賢明な方針だと言える。

 

もちろんのこと、もっとも重要なのは主人公であるカップルのキャスティングで、弁護士のシロさん役の西島秀俊(48)は、同漫画のコアなファンからは賛否両論あるみたいだが、私はそれなりに適役なのでは……と評価している(※個人的には長谷川博己がベストキャストなんだが?)……が、にも増して、美容師のケンジ役の内野聖陽(50)が、とにもかくにも素晴らしい。ドラマ『臨場』シリーズでもお馴染みな、あの暑苦しいほどに男臭いイメージの内野を、(原作では)一見ナヨナヨとしたネコ風(だが、じつはタチ)に持ってくるとは……そのプロデューサーの審美眼と手腕、またそれを演じきる内野の役者としての才能には、ただただ目を見張るしかない。

 

私は、このドラマ『きのう何食べた?』を男女問わない広い意味でのパートナー同士、たとえば、いささか関係がマンネリ気味となりつつある夫婦や同棲カップルに、是非とも定期的な視聴をおすすめしたい。そして、週に一回、同ドラマで紹介された料理を実際つくってみてはいかがだろう? こうしたルーティンをミニイベントとして二人の生活に差し込むことによって、おたがいの愛情も……ささやかながら再確認できるのではなかろうか。願わくば、ドラマの最後にレシピをキチンと表記していただければありがたい。最近引っ越ししちゃったから、漫画のほうがまだ封を開けていないダンボールに詰め込まれたまんまなんですよ……ボク。

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ネットニュースパトローラー

山田ゴメス

1962年大阪府生まれ B型。 ネットニュースパトローラー(※citrus限定肩書き。たまにスポーツ新聞や週刊誌も。略して「NNP」)。 関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッショ...

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