電車のドア妨害おじさんを「老害とは言いきれない」と、介護経験者が思うワケ

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愛知県名古屋市の地下鉄東山線で発生した、高齢男性の“妨害行為”を撮影した動画のツイートが話題になった。

 

白い袋の荷物をもった高齢の男性は、電車のドアが閉まろうとすると手に持った白い袋を出して電車の出発を2度さえぎった。3度目は駅員が飛んできて高齢の男性の白い袋をドアの中に入れようとしドアが閉まりかけたが、また袋を出してドアが開いた。駅員が「中に入ってください」と言う注意に対し、高齢の男性は意味不明な発言をしたが、なんとかドアは閉められた。

 

この動画をみてSNS上では「老害にキレそうになる」、「老害、電車遅らせるな」、「一般人でも逮捕できればこういう事案は減る」などと高齢の男性に批判が殺到しているが、必ずしも老害とは言いきれない。なぜなら、認知症祖母の在宅介護を6年間週4日1人で経験した筆者は、今回の高齢の男性と似たような体験をしたからだ。

 

 

■高齢男性は認知症による「徘徊」、「幻視」の可能性も

 

動画の高齢男性が身内がいない、もしくは身内から放置されている場合、徘徊の可能性も考えられる。

 

祖母の徘徊は、「今日は富山(祖母の故郷)へ旅行に行くの」、「仕事先へ向かうから離して」などと言って突然はじまっていた。私が「ばあちゃん、また今度にしよ」、「明日一緒に行こう」などと言っても一切聞く耳を持たず、私以外の他人の言うことも一切聞かず、ひたすら自分の目的を果たそうとするのだ。

 

あるいは、幻視の可能性も否定できない。

 

「虫がウロウロしてるから退治してよ」と、祖母が時折テレビを叩いていたのだが、私が「ばあちゃんこれテレビやで、虫なんかいないで」と何度か言って聞かせるとようやく納得する、といった具合だ。

 

これらの体験を踏まえると、高齢男性が駅員の言う事を聞かずドアを閉めようとすると白い袋を出すのは、何らかの目的があるか、「幻視」の症状でドアの向こう側に何かみえないものが見えていた可能性も考えられなくもない。

 

 

■動画の高齢男性のような人が減る4つの対策

 

とはいえ、今回の高齢男性の件で多くの人たちが迷惑を被るのもまた事実。そこで、こうしたケースを少しでも減らすための「4つの対策」を考えてみた。

 

  • 動画の高齢男性のような人の存在を認識し、責任をもって在宅介護をするなり施設へ預けるなり対処を講じる
  • 独身で身内がいない場合は、「ボケてきたかも」と少しでも感じたら病院を受診し、介護サービスの利用や役所への相談など早めの対処を心がける
  • 普段から近所の人たちと適度なコミュニケーションをとる
  • 政府や厚生労働省は「徘徊や幻視など認知症と診断もしくは疑われる場合、公共機関の利用を家族の付き添いもしくは病院の許可がおりた人のみとする」などガイドラインを

 

今後も動画の高齢男性のような人は高齢化と共に増えるだろう。だが、老害と揶揄する前に「もし認知症を発症していて徘徊や幻視などがあるのかも」と一歩立ち止まる人たちが増える世の中になってほしい。

 

「何か困られた事がありましたか?」と優しく声をかけて困り事や悩み事を聞いてあげるだけで、落ち着きを取り戻してくれる場合も少なくないのだから。

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奥村シンゴ

フリーライター・コラムニスト

奥村シンゴ

放送・通信業請負コールセンターを経て、2012年から2018年まで認知症祖母在宅介護6年経験。現在は精神病院に入院する祖母の緊急対応兼フリーランスライター、コラムニストとして執筆中。介護中心にエンタメ、時事ま...

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