性転換で解決しないことも… 簡単にはいかない「性自認」【昏いものを抱えた人たち】

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ノンフィクションライター亀山早苗は、多くの「昏(くら)いものを抱えた人」に出会ってきた。自分では如何ともしがたい力に抗うため、世の中に折り合いをつけていくため彼らが選んだ行動とは……。性自認、そして恋愛対象者の性別に関して複雑な思いを抱えている人は少なからずいる。そういう人が実際に性転換をすると思わぬ落とし穴があるという。

 

 

■身体は女だけど心は男

 

マナミさん(40歳)は、肉体的には女性だが中学生のころから自分は男だと感じていた。長じてから男性と恋愛もしてみたが、何かがしっくりこない。かといって女性が好きなわけでもない。

 

「その結果、わかったんです。私は男になって男と恋愛したいのだ、と。同性愛なんだから女として女を好きになればいいというわけではない。それ以前に、自分の性自認が男なのですから」

 

なるほど、と思ったが、彼女にとって二重に大変な苦労がありそうだ。まずは自分の性別を変え、そこから同性愛者として恋愛をしなければならないのだから。

 

「でもこれに気づいたのはよかったと思っています。そうでなければ私は私として生きていけないわけだから」

 

今、彼女は男性になるべく、少しずつ男性ホルモンの投与を受けている。うっすらとヒゲが生え、少し筋肉もたくましくなってきた。

 

 

■あとから認識が違っていたと気づく人も

 

性同一性障害による性転換手術は、本人の性自認をはっきりさせ、その人らしく生きていくために必要なものではある。だが、あとからいろいろなことに気づいて「失敗した」と思っている人も実際にいる。

 

「女性として生きたかった。そして女性として男性を愛したかった。ずっとそう思ってきたんです」

 

アユミさん(43歳)はそう言う。女装していた時期も長い。なかなか決断がつかなかったが、長年悩んだ末、38歳のときに手術を受けた。

 

「女として男性を愛することができる。それは心からうれしかった。でも実際にそうなってみたら、今度はそこに違和感を覚えるようになったんです」

 

自分でも戸惑った。あれほど女性になりたかったのに、そして女性の肉体を手に入れたとき、あれほどうれしかったのに。

 

「そこで気づいたんです。私は女性になりたかったけれど、女性の肉体を手に入れたいわけではなかったのかもしれない、と。女装して男性と恋しているときは楽しかった。でも私の場合、簡単に言うと同性愛者だっただけで、女になりたかったというのは心のバグというか、自分の気持ちを自分が誤解していたんです」

 

結果、違和感のある人生を送らなければならなくなった。アユミさんは、性自認と恋愛対象になる性については、どんなに考えても考えすぎることはないと忠告する。友人知人をはじめ、専門家ともきちんと話し合った上で決断しないと、取り替えしのつかないことにもなり得るのだ。

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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