【今週のアッパレ】ピエール瀧とのツーショットをあえて公開した石野卓球の愛と気概

人間関係

トホホなニュースが多い世の中ですが、怒っていても疲れるだけ。攻撃より称賛を。イラッとよりニコッとを。ニュースで見つけた「アッパレ!」なフレーズにスポットを当て、そのまぶしい照り返しを堪能し、明るく楽しい気持ちになってしまいましょう。

 


第4回
私刑を娯楽にしている世間を挑発


「一カ月半ぶりに瀧くんと会ったよ。汗だくになるほど笑った!」by石野卓球


3つのアッパレポイント
・批判は承知の上でむしろ批判を楽しんでいる
・何があっても支えるという強い思いを示した
・「世間の常識」の胡散臭さをあぶり出している


人と人は理解し合えないというのが大前提ですけど、ひときわ理解できないのが、SNSで誰かを罵倒している人の心理です。何が楽しいのでしょう。なぜ当事者でもないのに、そんなにいきり立っているのでしょう。それって、気持ちいいんでしょうか。並々ならぬエネルギーはどっから湧いてくるのでしょうか。


ツイッターの場合、「なんだこいつ」と感じるツイートをしている人のプロフィールを見ると、作ったばかりでフォロワー0のアカウントであることが多々あります。罵倒のためのアカウントをわざわざ作ってまで……と思うと、呆れるを通り越して哀れになってきます。大きなお世話ですが、人生にはもっと楽しいことがあるのではないでしょうか。


そんな残念な人たちを相手に、このところ電気グルーヴの石野卓球さんが、極めてカッコいい戦いを繰り広げています。その勇敢な姿勢や鮮やかな返し、ビシッと筋が通った姿勢には、拍手と喝采を送らずにはいられません。電気グルーヴにおける石野さんの長年の相方はピエール瀧さん。説明するのも何ですが、コカインを摂取したとして麻薬取締法違反で起訴され、4月4日に保釈された人物です。


4月25日夜、石野卓球さんはツイッターとインスタグラムに、瀧さんとのツーショット写真をアップ。ツイッターでは、笑顔で肩を組んでいる写真に「一カ月半ぶりに瀧くんと会ったよ。汗だくになるほど笑った!」というコメントが付けられていました。さらに続けて、同じ場面で卓球さんがピースサインを出しているバージョンも。そちらの写真には、ただ一言「電気グルーヴ」と書かれていました。


2枚の写真と、そして写真をSNSにアップしたことから伝わってくるのは、ふたりの深い結びつきと、卓球さんの「何があっても自分はピエール瀧の味方だ」という強い決意。それと、ふたりの顔の大きさがぜんぜん違うということです。ベタな言葉をあらためてつかうのは気が引けますけど、友情とはこういうことかもしれません。


写真がアップされると、たちまち賛否両論たくさんの意見が殺到しました。「さすが卓球さん」「ふたりの関係が伝わってくる素晴らしい写真」「愛を感じます」といった肯定的な声もあれば、「笑顔の写真をアップするなんて不謹慎だ」「迷惑をかけた人の気持ちを考えろ」「反省しているように見えない」といった否定的な声も。もちろん卓球さんも、批判を受けるのは百も承知だったでしょう。


瀧さんの逮捕以来、卓球さんはSNSで戦い続けてきました。「電」の文字を丸で囲んだタトゥーを入れたことを報告したり、相方の卓球さんが公の場で謝罪しないのはどうなのかと批判したワイドショーについて、「さてと、バイキングでもからかってプロモーションの手伝いしてもらおうかな。」「卓球の発言取り上げる、バイキングアンチが番組チェックする。これぞ卓球とバイキングのwin winの関係。」と呟いたりなど、徹底して「世間の常識」を茶化し、それにぶら下がっている人たちを挑発しています。


あくまでまだ「容疑者」の段階ですが、ピエール瀧さんは法によってきっちり裁かれ、きっちり罪を償う必要があります。しかし、それは裁判所なり警察なりの仕事で、当事者でもない私たちが石を投げつける必要はありません。長くコンビを組んできた卓球さんがツーショット写真をアップして、支えていく決意を示していることにケチをつけるのも、大きなお世話です。しかし、常に攻撃する相手や理由を探している「世間様」は、薄っぺらい「正義」を振り回す快感に酔いしれながらの私刑に精を出さずにはいられません。


ワイドショーがふたりを叩くのも、そんな「世間様」のニーズを察知して期待に応えるためです。卓球さんも言っていますが、ワイドショーの出演者たちは自分の仕事に励んでいるだけ。この問題に限らず次々に「悪者」を見つけては、視聴者に「ケシカラン!」という感情を抱かせています。そして、一部のヒマはあるけどプライドには不自由しているタイプの人が、ネット上で罵倒に精を出し……。ああ、じつにどうでもいい構図です。


いや、すいません。誰がどんな意見を持とうが勝手ですよね。最初からわかり合えないことがわかっている人たちに、そして、その時々の「悪者」を叩くいじましさを自覚する気もない人たちに、ブチブチと文句を言って自分の側の「正義」を叫んで小さな満足を得ようとしているのも、しょせんは同じ穴の狢ですね。そもそも「アッパレ」なフレーズの恩恵を受けて、明るく楽しい気持になろうというのがこの連載の趣旨でした。しまったしまった。


卓球さんはツイッターでの戦いを通じて、あらためて「世間の常識」の胡散臭さをあぶり出し、ツーショット写真でおっさん同士の友情っていいなとあたたかい気持ちにさせてくれました。ありがたいことです。そして、ネットニュースのコメント欄などでふたりに罵声を浴びせている人たちのおかげで、自分の正義を振り回すみっともなさも、あらためて実感させてもらいました。それはそれで、たぶんありがたいことです。


【今週の教訓】
ピントがずれた批判はむしろその対象の味方を増やすことになる

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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