被災した方の気持ちを楽にするのは「100の言葉」ではない

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■長引く地震により、緊張と警戒が続いた状態に

 

先月14日から活発な地震活動が続いている「熊本地震」。家屋・施設の倒壊や土砂災害、交通機関の不通など、甚大な被害が続いています。

 

震災に遭遇し、避難生活を送る方々は長引く余震や突然生活の場を奪われたショック、不便な避難生活などにより、緊張状態が続いているものと思われます。今はまだ、多くの方が毎日を興奮のなかで過ごしていることかと思います。

 

特定非営利活動法人 埼玉カウンセリングセンター「災害危機に対する独居高齢者・障がい者支援事業」報告書(2008)によると、被災者のこころの状態は急性期、反応期、修復期の順で次のように変化していくとされています。

 

 

■被災者のこころの回復までのプロセスとは?

 

災害発生直後から数日間は、震災の衝撃に圧倒される「急性期」です。心拍数や血圧が高くなり、呼吸が速まり、発汗が発生します。ものごとを合理的に考えにくくなり、集中して考えることが難しくなります。情緒も不安定になります。毎日地震活動が続いている現状では、この急性期の心理状態が続いている方が多いものと考えられます。

 

災害が落ち着き、1週間から1ヶ月半くらいの間には、抑えられていた感情が湧き出してくる「反応期」です。つらい出来事がよみがえり、悪夢を見たり、抑うつ的になることもあります。また、身近に被害によって亡くなった方がいる場合、助けられなかったことに対する罪悪感である「サバイバーズ・ギルト」を感じることがあります。

 

この混乱した感情が修復されるまでには、半年くらいの時間がかかります。この時期は「修復期」と呼ばれます。つらい出来事を考えると苦しくなりますが、少しずつ日常に向けて目を向けていくようになります。一方で、突然震災の記憶がよみがえったり、震災の記憶につながるものを避けるようになることもあります。

 

 

■100の言葉より、1つの思いやりが大切

 

このように、被災した方々のこころは、震災の状況や時間の経過と共に変化していきます。大切なのは、その気持ちを理解し、寄り添うことです。今はまだ、長引く地震により心が張り詰めた状態が続いていると思われますが、地震活動が落ち着いた頃に、悲しみや喪失感が押し寄せてくることがあります。そうしたときに、誰かに気持ちを支えてもらえることで、張り詰めた気持ちは楽になるでしょう。

 

周りの人は、「何か言葉をかけなければ」と考えすぎる必要はありません。100の言葉より、1つの思いやりが大切です。相手の気持ちに寄り添って話を聞いていくことが、その人の力になります。そして、つらい感情を思い起こさせるような質問をするのは、絶対に禁物です。

 

被害に遭われた方は、避難生活の中で健康面でも生活面でも我慢を強いられがちです。今感じているつらさや痛みがあれば、ぜひ1人で我慢をせず、周りの人にお話し、相談していただければと思います。

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メンタルケア・コンサルタント

大美賀直子

メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持ち、カウンセラー、研修講師としても活動する。現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。ストレス...

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