ジュースをかけて恫喝、止まらないおしゃべり、上映中のLINE… 今なぜ、映画館マナーが悪化しているのか?

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■映画館でジュースをかけられる異常事態

 

最近、“しょこたん”ことタレントの中川翔子さんが映画館で遭遇したというトラブルについてのツイートが反響を呼びました。他の観客から座席を蹴ったと誤解され、怒鳴られてジュースをかけられる被害に遭ったというのです。

 

しょこたんの例は極端ですが、最近、映画館のトラブルが増えています。後ろから座席を蹴りあげる、上映中もおしゃべりが止まらない、携帯の電源を切らずLINEの送受信を続ける……映画館でのマナーが悪くなってきているとの話題があちこちで取り沙汰されています。

 

もちろん映画の盗撮や痴漢、スリなど、明らかな犯罪行為は言語道断ですが、こうした「マナー違反している人」に遭遇した時に、波風を立てることなくトラブル回避できる方法はあるのでしょうか? 実際は、明確なルールがないこともあり、泣き寝入りせざるを得ないケースが多いようです。

 

 

■映画館でのトラブルが増えているワケ

 

かつては、一日中映画館に入り浸る人も少なくありませんでした。それが入れ替え制になり、さらに座席指定が一般的になってきたことで被害が拡大してきたとも言えます。自由席だった時代は、隣にちょっと“ヤバそうな”人が座ったら、サッと別の席に移動することも可能だったのですから。

 

劇場で上映前に流れるマナーCMを振り返ってみると、「携帯電話の電源はOFFに」「前の座席を蹴らない」「おしゃべりは映画が終わってから」「上映中に飲食する際は周りの人にご配慮を」といった内容を、ユーモラスなアニメーションや寸劇形式で注意喚起しています。ですが、そもそも携帯電話がなかった頃には、「携帯の電源を切る」なんていうルールも当然なかったわけです。

 

ところで、なぜ最近になって映画館のマナーが問題化しているのでしょう? 私は携帯電話の普及が一因だと考えます。電話を持ち歩ける時代に入って以降、プライベートな空間が自宅や電話ボックスなどの密室から公共の場へ拡張されてきたことも、マナー違反が目立つようになってきた理由のひとつに挙げられるのではないでしょうか。

 

また、電車の中でメイクする女性やボックス席以外でも構うことなく飲食する人の増加も、こうした“プライベート空間のポータブル化”で、人々の感覚が外側ではなく、内側に向かったまま空間移動するようになったことと無関係ではないのでは?

 

 

■マナー違反の「被害」に遭ったらどうする?

 

しょこたんのように、相手側の一方的な勘違いで理不尽な目に遭ってしまった時は別として、一般的なマナー違反に遭遇した際の対処法について考えてみましょう。

 

劇場関係者によれば、基本的には「お客様同士のトラブルは、本人同士で解決してほしい」というのが本音のようです。

 

前の人の座席を蹴ってしまうのも、足の長い人が“たまたま”ぶつかってしまったケースもあるでしょう。そんな時、すぐさま振り向いて「キーッ」と睨みをきかせたり、「チッ」と舌打ちしたりすると、売り言葉に買い言葉のような一触即発の事態に陥る可能性も否めませんよね。

 

そんな時は、あくまで「個人のお願い」として相手に伝えてみてはいかがでしょう。

 

「私はこういった理由でいま困っているので、恐れ入りますが、ちょっとばかり○○してくれませんか?」とへりくだって言うだけでも、相手の心証は変わってくるはずです。

 

 

■判断しづらい、迷惑か否かの境界線

 

基本的には、料金を払えば誰もが平等に映画を観る権利があるわけですが、周りに迷惑をかけているかどうかの基準は非常に難しいところがあります。

 

前に座っている人の頭でスクリーンが遮られて困った経験がある人も少なくないでしょう。でも逆に、座高が高いから自発的に後ろの席に座わるようにしている、という声が多かったり、アフロのようなボリュームのある髪型の人はタイトにまとめたり……といったように、周りの人への気遣いをされている場合がほとんどだったりもします。

 

夏場は特に汗や体臭が気になる季節ですが、ニオイについては自覚していなかったり、周りが指摘しにくい傾向もあります。自分ではよい香りだと思っていても、香水や柔軟剤の匂いが苦手な人だっている。心に余裕がある時は、「きっとデートで気合を入れすぎちゃったのかな」と思えても、むしゃくしゃしている時なら思わずイラっとしてしまうこともあるでしょう。

 

上映中のLINEチェックについては、本人が自覚している以上にスマホの光量は大きく、周りの人にとってとんでもなく目障りであることは、もはや周知の事実。とはいえ、エンドロールが流れている最中に電源を入れることも許されないのか……という声もあります。完全に映画館を出てから電源を入れるのが一番確実ではありますが、もしも入場時にスマホを受付に預けるシステムが導入されたならば、息苦しく感じる人も少なくないはずです。

 

要は、本人が自覚している場合としていない場合によって周囲の対応も変わってくるわけですが、わざわざトラブルを引き起こすのも避けたいところ。

 

映画に集中できなさそうな異変を察知したら、被害に遭う前に移動するというイレギュラーも自衛のひとつです。座席にゆとりがある時は、上映前なら劇場スタッフに事情を説明して座席を変更してもらう手もあります。本編上映開始の直前に入ってくる人もいるので自己判断で移動するのはオススメできませんけれど……。

 

最悪の場合は、「負けるが勝ち」の精神で自ら去ることも、不快な思いをしないという点では有効だったりもします。その際、劇場スタッフに言いつけるのではなく、一言、「こういう状況がありました」と伝えるだけでも少しは気持ちが晴れるかもしれませんね。

 

忙しい時間やお金をやりくりしてわざわざ足を運んだ映画館では、誰だってトラブルを回避したいもの。自衛できるところは自衛して、それぞれがちょっとずつ譲り合い、「お互い様」の精神を大切にしながら、心穏やかに映画を楽しみたいものですね。
 

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映画ライター

渡邊玲子

映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍するクリエイターや起業家のインタビューやコラムを、WEB、雑誌、パンフレットなどで執筆するほか、書家として...

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