わずか50人の住民のために切手を発行──「世界最小の郵政機関」はなぜ生まれたのか?

ライフスタイル

板橋祐己

 

世界中にはたったの50人の住民のために、独自の切手を発行している郵政組織があります。それがイギリス海外領土のピトケアン諸島で、郵趣家や切手収集家たちのあいだでは「世界最小の郵政機関」としてしばしば話題になります。

 

ピトケアン諸島はポリネシア東部に浮かぶ5平方kmほどの島で空港もなく、大型船舶の寄港も不可能な断崖に囲まれています。最盛期の島民は233人を数えましたが、出稼ぎなどで流出していき、50人ほどとなりました。島名のピトケアンとは、1767年に発見したイギリス軍人の名前によります。

 

タヒチ島から西インド諸島へ向かう途中のイギリス船バウンディ号内で1789年4月に反乱が起こります。イギリスに逮捕されれば、反乱者たちは死罪となることが予想されました。そこで彼らは古い航海図から無人島のピトケアン島に針路をとり、1790年1月に上陸したのです。現在の島民は「バウンディ号の反乱」を起こしたイギリス水兵と、誘拐されて連れてこられたタヒチの人々の子孫がほとんどです。1808年に有人島であることが知られるようになり、1838年にイギリスの属領となりました。

 

ピトケアン諸島の郵便は1921年頃からイギリスやニュージーランドによる郵便が行われ、1927年にはニュージーランドの切手が委託販売されるようになりました。その後、島内の行政を改善するために、1940年10月から独自の郵便局で、独自の切手を発行するようになります。切手上に表示された額面はニュージーランドドル建てとなっています。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

板橋祐己

1978年東京都生まれ。公益財団法人日本郵趣協会主催の全国切手展やトピカル切手展で審査員を務める。郵趣研究ワーキンググループ所属。郵便史研究会理事。第28回住野正顕賞受賞。東京外国語大学在学中から切手収集全...

板橋祐己のプロフィール&記事一覧
ページトップ