子どもアニメも深夜アニメも関係ない! 「大人が楽しめるアニメ」がTV局の救世主に

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『TVアニメ「3月のライオン」公式サイト』より

テレビアニメが急増中だ。一般社団法人日本動画協会の調べによれば、2015年のテレビアニメ放送タイトル数は過去最高の328本。2016年はこれをさらに上回る勢いで、秋にはショートアニメシリーズも含めると70本以上の新作が放送をスタートした。全てを観るには毎日10タイトルが必要で、普通の人にはとても不可能だ。一体、どうしてテレビアニメはこんなに増えているのか?

 

 

■史上空前、2016年秋期 新作テレビアニメが70本超えの謎


謎を解く鍵のひとつは、アニメの越境にある。近頃どうやらアニメファンが拡大しているらしい。少しマニアな深夜アニメと呼ばれる作品が、ごく普通に観られるようになった。『ラブライブ!』『ガールズ&パンツァー』といった女子高生の活躍するテレビアニメの劇場版が、いずれも興行収入20億円超え、ハリウッド映画並みの大ヒットになるほどだ。

 

一方で、子ども向けアニメが大人にもアピールする。劇場版『名探偵コナン』に20代が足を運び、『妖怪ウォッチ』や『タイムボカン24』には、20年、30年前のネタがパロディになって登場する。

 

昔からアニメ関係者の間では、アニメにはふたつの全く異なるビジネスがあると言われてきた。ひとつは、玩具やキャラクターグッズの展開で利益を得るキッズアニメ。もうひとつは、ハイクオリティな映像でアピールしBlu-rayやDVDを販売する深夜アニメである。

 

ところがこのどちらにも属さない大人の男子、女子が普通にアニメを楽しむようになっている。さらに“誰もが楽しめる”がキーワードになり、アニメは視聴率獲得や放送外収入を求める放送局の救世主となりそうな気配だ。

 

 

■子どもアニメが“ちょーマニアック”のなぜ?


子どもたちに大人気の『妖怪ウォッチ』。これを観てクスリとしてしまった大人は少なくないはずだ。「USA横断ウルトラクイズ」、『パタリロ!』のクックロビン音頭(らしき)、「東村山音頭」(らしき)……、懐かしのネタが数々パロディとなって登場するのだ。

 

しかし、ちょっと待て! これって子どもに分かるの?

 

ケーブルテレビ、衛星テレビ、動画配信と番組の視聴方法が多様化するなかで、地上波放送局は、視聴率獲得のために、これまで以上にマスマーケットに訴求しなければいけなくなっている。個性の強い番組は専門チャンネルに勝てないし、そもそも専門であるがゆえにニッチで視聴率が稼げない。

 

そこでアニメだ。人気アニメのキャラクターは子どもから大人まで知っている。気軽に楽しめて、誰にでも受け入れられ地上波向きだ。とはいえ、子ども人口が減っているのは周知の事実、親世代も引き込むギミックが必要だ。それが『妖怪ウォッチ』のパロディとなる。同じ仕掛けは『タイムボカン24』や『銀魂』などでも見られる。

 

男児がターゲットの特撮番組では、かなり前から主人公に若手のイケメン俳優を起用して、お母さん世代の支持を獲得している。女児向けアニメのマーケティング資料に、メインターゲット「女児」、サブターゲットに「青年男子」と書かれるのもよくある話だ。こうした仕掛けは最近はじまったことではないが、昨今ますます加速化しているようだ。

 

 

■深夜アニメは深夜に観られていない

 

子どもアニメが大人化する一方で、深夜アニメでも変化が起きている。深夜アニメが、夜中に観られていないのだ。これまではコアなファンが夜更かしをして、あるいはビデオレコーダーに録画して、アクティブに視聴していた。

 

しかし動画配信やスマホなどでの定額見放題が普及すると、誰でも気軽に深夜アニメをいつでも、どこでも観られるようになった。「これは!」と決めるより、時間のある時にたくさんあるタイトルから気に入ったものを探す感じだ。そうした人たちが大量に現れて、アニメの裾野を広げている。そんなトレンドを受けて、これまでであれば朝や夕方に放送されたような『ハイキュー!!』や『暗殺教室』といった「少年ジャンプ」連載作品も、いまでは深夜放送になっている。

 

逆に“深夜アニメの一般化”のトレンドを捕まえて、大人向け作品をもっと目立つ時間に持ってくる大胆な挑戦をするのがNHKだ。10月から総合テレビ毎週土曜日23時という絶好の時間帯を『3月のライオン』のために用意した。人気マンガ家・羽海野チカの原作は、棋士を目指す若者を描く青春ドラマである。

 

NHKは近年、視聴者の高年齢化が大きな課題になっている。民放とは異なるかたちで、広い世代に受けるアニメを必要としているのだ。

 

筆者が考える、誰でも楽しめる深夜アニメの今期のお薦めは、2016年の秋期№1との呼び声が高い『ユーリ!!! on ICE』。フィギュアスケートを舞台にした青少年たちのストーリーは、一見はコアな女性ファン向けと思いきや、男性ファンも引き込まれる骨太さ。フィギュアスケートの題材も一般受けしやすく、全方位という点でまさに今日的な作品だ。
 

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数土直志

数土直志

ジャーナリスト。国内外のアニメーション関する取材・報道・執筆を行う。また国内のアニメーションビジネスの調査・研究をする。「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など...

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